タイガー立石『TRA』に狂喜

工作舎から、タイガー立石『TRA』(本体5000円)が送られてくる。タイガー立石(1941〜1998)については、このブログでも何度か書いているが、イラスト、マンガ、絵画を股にかけて活躍した前衛美術家である。絵本やマンガなど十数冊の単行本が出ているが、いまではほとんどが手に入らないはず(ビリケン出版で復刊された『とらのゆめ』ぐらいか)。今回の本は、これまでバラバラの単行本に入っていたものや未収録作品を集めた、タイガーマンガの集大成。タイガーの単行本はB5とかA4というイメージがあったが、本書はA5判で420ページだ。そのうちカラーは100ページもある。

TRA(トラ)

TRA(トラ)

造本・構成は祖父江慎。タイガーの奇想が乗り移ったかのように、やりたい放題にデザインしている。『遊』掲載の「帯漫画」は折込みだし、上下さかさまに入れているのもある。カバーにはバーコードのシールが貼られているが、このシールがヒョウタンみたいなカタチでしかもバーコードが斜めに印刷されている。これだと機械に通せないからと、某取次で突っ返されたという。マンガの間に、一枚モノのイラストが多く挿入されている。タイガーのマンガは読むというよりも眺めるのにふさわしいものだから、イラストとマンガは地続きの関係にある。こんな本が、『虎の巻』の版元のひとつ(思索社からも同じタイトルの別の内容の本が出ている)である工作舎から出たのは、当然の縁だろうし、よく出してくれたと思う。


1999年にO美術館で開催された「メタモルフォーゼ・タイガー 立石大河亞と迷宮を歩く」展の図録と、本書があれば、とりあえずタイガー立石を知るには足りるだろう(まだまだ未紹介の作品は多いにしても)。5000円は決して高くない。こんな本を出せる工作舎はスゴイ。ちなみに、工作舎のIさんは「ゾメキトキメキ出版みたいにならないように頑張ります」と抱負を語っています(笑)。工作舎タイガー立石祖父江慎という組み合わせにピンときたら、すぐさま買うべきでしょう。


夕方まで資料を読み、8時に〈ブーザンゴ〉へ。不忍ブックストリートの茶話会。20人で椅子が足りなくなるほどの盛況ぶり。今日は根津教会の島啓一さんが、サンフランシスコ・バークレー・シアトルで回った書店について話す。半年前に行ったのだが、「そのことを人に話したい気が溜っていた」ということで、一軒一軒の印象を息せくように話してくれた。ブローティガンの『愛のゆくえ』に出てくる図書館が実際にあって驚いたという話と、シアトルの書店が出している素晴らしいフリーペーパー(その店や市内で行なわれている著者のイベントを紹介したもの。デヴィッド・バーンも来ていた)がよかった。終わってから、来た人にタイガー立石『TRA』を見せびらかす。