徳島高義『ささやかな証言』を読む

先週木〜日曜日に行なわれた「羽鳥書店まつり」、無事終わりました。いや、無事じゃないな。4日のうち3日が悪天候だったにもかかわらず、お客さんがひっきりなしに詰めかけてくれました。そして最終日は晴れで締めることができました。


今回の企画は〈古書ほうろう〉で、ぼくたち不忍ブックストリートのメンバーがそれを応援するかたちだったのですが、一箱古本市とは違うイベントにとまどいながらも、学ぶところが大きかったです。自分たちでできない部分は、例によって、多くの人たちに助けてもらいました。初日の混雑を早くから予想して、何人も手伝いに来てくれた「わめぞ」。本の並べ方などアドバイスしてくれた西秋学さん、大観音のイベントにはこのヒトがいないと撤収できないというジョージ・ルーカスこと岩本さん、準備から撤収まで毎日付き合ってくれた谷根千ウロウロさん。緊急募集に駆けつけてくれた近所の人たち。山口晃さんほか羽鳥書店の著者の方もいらして、サイン本をつくってくださいました。目に見えるところで、自分の得意なことを生かしての分業が自然に成り立っていました。ありがとうございました。


で、昨日から通常の仕事に戻ったのだが、立ちっぱなしだったおかげで、腰が痛い。昨日は早めに切り上げて、一週間録画を溜めていた《ウェルかめ》を観る。ゾメキトキメキ出版の危機、カメ子に持ちかけられた転職話など、零細出版社にいた経験者としては胸が痛い。


徳島高義『ささやかな証言 忘れえぬ作家たち』(紅書房、本体2500円)が届く。徳島さんは元講談社の編集者で、『群像』編集部を経て翻訳部門、文芸部で多くの本をつくった。なかでも、吉行淳之介が編者となった『酔っぱらい読本』全7巻はベストセラーとなり、田舎の図書館でそれを読んだぼくに、アンソロジーの楽しさを教えてくれた。一昨年、「トーク十番勝負」をはじめるときに、徳島さんにご出演いただき、吉行から「大僧正」(大躁状)と名付けられた編集狂時代を回想していただいた(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20081104)。本書は、徳島さんの故郷の銚子でNPO法人が出していた『月刊シーズ・ファン』で連載されていたものをまとめている。一人の作家についての分量は短く、あくまで徳島さんが接した一面について描かれているが、いずれも印象ぶかい。先の『酔っぱらい読本』について『面白半分』の吉行特集号に書いた「躁の一年」が収録されているのも嬉しい。作家の写真も、公式というよりは、くつろいだ姿勢のものが多い。


今日届いてすぐに読みはじめ、外出先の喫茶店や電車の中でも読み進んで、さきほど読了した。「記憶力の悪さ」をしきりに強調されているが、作家の印象深い一言を書きとめていて、ささやかだけど貴重な証言となっている。


紅書房は、高島さんの先輩である『群像』編集長・大久保房男の文壇ものを何冊も出している版元だが、ウェブサイトが見つからず、またいまのところアマゾンにも本書のデータが載ってない。近く、〈東京堂書店〉あたりには並ぶはずだが、その前に書肆紅屋さんを真似て、目次を載せておこう。

佐藤春夫・三態
三島由紀夫の持ち込み
吉行淳之介とM・M(『暗室』の頃、躁の一年、陣中見舞)
佐多稲子の長崎
戦後を見据えた阿部昭
村上春樹と長寿猫または福猫
江藤淳と私
瀬戸内寂聴師との仏縁
埴谷雄高の黒い本
丸谷才一忠臣蔵
遠藤周作と最後の書き下ろし長篇『深い河(ディープ・リバー)』
1994年の大江健三郎
円地文子平林たい子の百年祭
武田泰淳「花火を見るまで」ができるまで
庄野潤三静物』と『絵合せ』へ通う道(庄野さんからの請け売り)
深沢七郎「風流夢譚」の後に
小島信夫抱擁家族』の誕生まで
阿川弘之と汽車ポッポ
晩年の堀口大學
井上靖・落第担当者の記

編集者としての大久保房男(面白くて為になる――『終戦後文壇見聞記』、「鬼」の優しさ――『終戦後文壇見聞記』、四十年の結晶――『文士と編集者』)

あとがき
初出一覧


さて、明日17日は、今年初めての茶話会です。
場所はいつもの<ブーザンゴ>です。
いつも通り、気軽に参加して、自由におしゃべりしてください。


21時ごろから30分ぐらい、根津教会客員の島啓一さんがお話してくださいます。
テーマは、「サンフランシスコとシアトルの古本屋とブローディガン」です。
ご興味のある方はぜひ。
みなさまお誘い合わせのうえ、お越しください。
春の一箱古本市についての情報・意見交換もおこないます。


日時 2010年2月17日(水)20:00〜23:00頃(出入り自由)
場所 ブックス&カフェ・ブーザンゴ
〒113-0022 東京都文京区千駄木2-33-2
TEL & FAX: 03-3823-5501
http://www.bousingot.com/


参加費 各自オーダーのみ
問い合わせ 不忍ブックストリート実行委員会
shinobazu@yanesen.org