「羽鳥書店まつり」を支える地縁と人の縁



(一日早く書いてます)明日11日(木・祝)〜14日(日)までの4日間、駒込大観音光源寺境内にて「羽鳥書店まつり」が開催されます。会場には、2009年に千駄木で創業した出版社「羽鳥書店」の社長である羽鳥和芳氏のおよそ20年分の蔵書約1万冊を大放出。とにかく本を減らしたいという羽鳥氏と家族の切なる希望を受けて、ほとんどの本を、100円、500円、1,000円均一で販売します。ぼくは値付けの現場に立ち会いましたが、感触では、古本屋で買った場合の3分の1は安いかなという印象です。均一にできない貴重な本は屋内の通称「サロン」にて販売の予定です。


また、羽鳥書店から刊行されている全7点、および羽鳥氏が東京大学出版会時代に手がけられたなかから約30点の新刊を厳選して、陳列、販売。地域雑誌「谷根千」の販売(94号では、羽鳥書店も記事になっています)もあります。毎日、先着100名様には、羽鳥書店ロゴマーク入りの金太郎飴をプレゼント! さらに、古本・新刊をお買い上げのお客様には甘酒をサービスいたします!


このイベントの主催は古書ほうろうなのだが、年末にこの企画を聞いたときには、大丈夫かなあと思った。2月の寒い時期に野外で、しかも一人の蔵書だけの販売イベントにどれだけヒトが来てくれるだろうか。年が明けてから、ほうろうの宮地さんが、羽鳥社長の自宅に行って本を見せてもらったり、チラシを配布しはじめてからも、「酔狂なことするよなあ」と思っていた。まあ、ぼくが企画するイベントについても、ほうろうのメンバーは「また物好きなコトを……」と思っているに違いないので、お互いさまなのだが。大量の本を処分するということに絞れば、古書組合に属していれば、店内に持ち込まなくても、市場に出して売るという方法がとれる。ほうろうは組合に加入してないので、1万冊を一気に処分するやり方として、野外イベントをやるのだろうと思っていた。


しかし、準備が進むにつれ、これはたんに、大量の本を処分するためのイベントではないのだ、と気付いた。まず、2009年4月に千駄木にできた新しい版元である羽鳥書店を歓迎するお祭りである。そして、古書店であるほうろうが、版元である羽鳥書店と協力してすすめるとともに、会場で販売する新刊については往来堂書店が担当するという、業種の枠を超えたコラボレーションを実現させているわけだ。それが、谷根千で実現できたのには、この地域の文化的な雰囲気とともに、やはり5年にわたる「不忍ブックストリート」の活動の蓄積があったからという気もする。


さらに、場所を提供してくださった大観音は、これまで地元の人たちに向けてこの場所を提供してきた。毎年5月には水族館劇場の公演、7月にはさまざまな出店が集まる「ほおずき千成り市」が開催されている。また、ほうろうがイベントを行なうときには、いつもこのお寺からアンプをお借りしている。今回の羽鳥書店まつりでも、先週金曜日に羽鳥家からココの蓮華堂に300もの段ボール箱を運びこみ、数日間場所を完全に占領したうえで、本の仕分けや値付けを行なっている。その値付けにも、ほうろうのメンバーだけでなく、近所に住む不忍ブックストリートのメンバーが手伝いに来ているし、今日のテント設営にも何人かが集まった。この地域の出来事を記録しているブログ「谷根千ウロウロ」(http://yanesen-urouro.bakyung.com/)のやまださんは、設営をしながら、同時に写真も撮るという器用なところを見せていた。


同業者も協力してくれる。早稲田・古書現世の向井さんは、大量のお客が一気に押しかける古書市に慣れていないほうろうを心配して、レジの配置や客の捌きかたをアドバイスしてくれたうえで、「わめぞ」の主要メンバーを店番の手伝いとして派遣してくれるという。初日には「外市」の司令塔である岡島書店の岡島さんが来てくれるというから、百人力である。


昨夜、値付けを手伝いに行ったとき、疲れきって会話も少なくなった頃に、ミカコさんが、「こういうイベントって、ほかにないよね? 珍しいよね?」と念押しするように訊いてきた。そのとき、うまく答えられなかったけど、いまなら云える。今回の羽鳥書店まつりは、古本と新刊を融合させ、地縁と人の縁が最大限に生かされた、画期的な古本イベントなのだと。


明日は小雨模様ですが、幸い雪は降らないようです。11時から16時までやってますので、ぜひおいでください。ぼくも朝から14時ごろまで手伝い、そのあとも会場をウロウロしてます。見かけたら声をかけてください(例によって、こちらからだと顔が判らないかもしれないのでね)。では明日、大観音でお会いしましょう!
http://d.hatena.ne.jp/koshohoro/20100210


東京新聞2月10日夕刊に、「本の魅力語らう場に 広がるフリマ『一箱古本市』」という記事が掲載されました。先日、「高円寺純情出版界」でお話ししたことに、電話でのコメント取材を合わせた記事になっています。同じ面に、佐々木譲さんの「直木賞選考会の夜」というエッセイが載っています。よき編集者、よきライバルに感謝するという内容。並んで載せてもらって、なんとなくうれしい。