雑誌の影響力の強さ

朝8時起き。石巻で買った鮭の缶詰と味噌汁とご飯。昨夜からiPhoneの充電が不安定で、ケーブルを挿しても反応しないときがある。10時過ぎに西日暮里駅前の携帯ショップに行くが、ここでは売るだけらしく、まともに対応してもらえない。日暮里まで行き、銀行で家賃を振り込んでから、角のカフェでコーヒー飲む。

向田邦子『眠る盃』(講談社文庫)読了。この本のなかに、続篇のある文章が2本ある。ひとつは子どもの頃、高松で飲んだ「ツルチック」という飲み物のことで、そのことを書いた『文藝春秋』の発売日からひっきりなしにツルチックについて教える電話が著者にかかる。そして、最後に紹介される手紙の筆者は意外な人だったという落ちだ。もうひとつは、「中野のライオン」。中央線の窓から見たアパートに、男とライオンがいたというのだ。そのことを書いた『別冊小説新潮』が出ると、中野でライオンを飼っていたという男から電話がかかる。その男性は、詩人の草野心平が営んでいた新宿のバー〈学校〉の常連だったという。向田邦子がすでに有名人であり、メジャーな雑誌に載ったことを考慮しても、当時の雑誌の影響力の強さに、なんだかため息が出る。

11時前に日暮里駅前のauショップに並ぶ。ここは成田への京成線があるせいか、各国の利用者が集まってくる。私の相手をした店員はおそらく中国人だ。確認してもらうが、本体にも充電ケーブルにも問題ないと云われる。しかし、家に帰ってコンセントに挿してみると、あいかわらず不安定なのだ。どうもよく判らぬ。

昼は開成学園前のおにぎり屋のおにぎりとラーメン。今日も連絡もろもろと書類のまとめで時間が過ぎていく。4時に〈千駄木マド〉で取材。築100年の一軒家で、今年春から建築家のアトリエやレンタルサロンとして使われている。風情のある外観で、中はさほど広くないが小さなイベントに使うと良さそう。

肉のハナマサ〉で買い物して帰る。晩飯はカレー。ハナマサオリジナルのカレールーが安かったので買ってみたが、けっこううまい。つくりながらCD聴く。根津甚八『火男』、何度聴いても不思議なアルバム。根津の歌と云うと、山田太一脚本の『男たちの旅路』の「墓場の島」の歌手役を思い出すが、あれと同じようにつぶやきと歌の中間ぐらいで、それがまた不思議な歌詞(泉谷しげる作詞「野良犬PART2」の「妖しげな女学生」とか)や演奏に合っている。仙台〈ヴォリュームワン〉でかかっていた高田渡「ブラザー軒」(菅原克己の詩で仙台の店が舞台)の女性歌手のカバーが気になっていたら、小泉やよい『reflection』(2014)だと音源を渡された。シンプルな演奏をバックに歌う声がいい。「My Funny Valentine」やボサノヴァのカバーもいい。

〈学校〉つながりで、金井真紀『酒場 學校の日々』(皓星社)読む。新宿で閉店したあと、そこで働いていた女性がゴールデン街で再開して以降の話が中心なので、残念ながら、ライオンは出てこなかった。でも、筑摩書房の古田晃が出てきたりで、けっこう面白い。昔の常連にキンちゃんことデザイナーの高橋錦吉がいるが、ゴールデン街で有名な流しに「マレンコフ」と命名したのは高橋だったという。

中途半端に眠って目覚め、なんとなくYouTubeで、RYUTisitが先週の土日にやっていた27時間ユーストリームのグランドフィナーレの部分を見る。出てくる人たちが濃すぎてよく判らないところも多いが、新潟の各分野で活動する人たちがこのアイドルを支えてきたことが判った。明日発売のサードアルバム『柳都芸妓』は、これまでアルバムでは表に出さなかった新潟・古町の地名や情景を織り込んだ曲がたくさん入っているようなので、期待している。