佐藤正午さんの肉声

朝8時起き。味噌汁をつくり、ご飯と納豆。共同通信の書評を書く。畑違いの分野ではあるが、自分に引きつけて書くことができた。書き終えるとぐったり。今日は新潮社で作業の予定だったが、明日に変更させてもらう。

大阪の〈レトロ印刷JAM〉が10周年とのこと。もっと前からあるような気がするなあ。2009年に中津に新店舗出したときにトークに出演したことを日記に書いてました。この頃、一瞬だけ「ポメラ」を使ってたようだ。いまはどこにいったやら。http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/touch/20090621

午後は日記を書いたり本を読んだり。丹野未雪『あたらしい無職』(タバブックス)読了。無職→正社員→無職の約3年間の日記。前半の無職生活に前職から解放された爽やかさがあるのに、後半つまり現在は苦い。そして10歳上の似た立場の私はその苦さがますます深まることを知っている。でも、この人の立ち向かい方には共感します。タバブックスの「シリーズ3/4」はそれくらいの分量、サイズ、重さ、そしてそれくらいの身軽さ、ゆとりのある生き方をしたい人への本のシリーズ。『あたらしい無職』と同時刊行したのが、山下陽光『バイトやめる学校』。この人、以前うちの部屋で古本市やったときに来てくれたと思う。出版社をやっていると、こういう身軽なシリーズをやりたくなるみたい。新潮社の一時間文庫、メタローグのリテレール・ブックス、ミシマ社のコーヒーと一冊などが思い浮かぶ。でも、読者からするとわざわざシリーズ化しなくてもいいから、これぐらいの本がもっと増えてほしい。

18時、ニコニコ動画芥川賞直木賞発表の生中継を見る。これがはじまった最初の回に見て以来か。栗原裕一郎さんの情を交えないまとめは相変わらずうまいが、井上トシユキ、ペリー荻野の両人が、いくら専門家ではないとはいえ、もう何度もやっているのにあまりにも文学賞のことを知らなすぎて、栗原さんの負担が大きすぎる。顔出ししなくていいから、横に1人、文壇に詳しい人をつけてあげて。途中、有料会員に押し出されて、再ログインして見つづける。

1時間半ほど経って発表。芥川賞は沼田真佑『影裏』、直木賞佐藤正午『月の満ち欠け』に決定。佐藤さん、おめでとうございます。岩波書店の本が候補に挙がって賞を獲るのは初めて。しかし、ニコ動のペリー荻野の解説はデビュー作『永遠の1/2』で時が止まっていて、さすがにその後の作家の歩みを無視しすぎだろう。全作読めとは云わないけど。

佐藤さんの会見は、佐世保からの電話インタビュー。ネタバレ注意の作品ということもあり、記者もやりにくいだろうが、それにしても、もっと質問を工夫できなかったものか。私は前作『鳩の撃退法』(小学館)刊行時に『サンデー毎日』で電話インタビューしていて、そのときも緊張しまくったが、それでも訊いたことにはちゃんと答えてくださった。今回の会見の音声で、あのときの肉声が耳によみがえった。

本作をはじめ、岩波書店からの佐藤正午の本をほとんど(全部?)装丁している桂川潤さんにお祝いのメールを。先日、〈ふげん社〉でのトークに出ていただいたときにも話したが、山形県川西町で桂川さんと私が泊まった〈一楽荘〉という旅館が、隣でやってる割烹の名前が〈新喜楽〉だった。そこで朝食食べながら、「ここで芥川賞直木賞の選考会やったら面白いですね」と話したものが、やっぱり縁があったんだ(笑)。