《風流温泉日記》の白浜

この2、3日の朝晩の冷え込みはひどい。ひょっとしたら、この冬は上京してから一番の寒さなのかもしれない。


昨日の午前中は、根津の〈珈琲館〉でデザイナーのHさんと会ったあと、本郷図書館で資料を読む。いもづる式に目を通しておきたい本が出てくる。


今日は書評の原稿を2本書く。『COMIC Mate』では鈴木智彦『ヤクザと原発』(文藝春秋)を紹介するが、その前に同じ著者の『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)を読んだら、これがめっぽう面白い。新宿歌舞伎町の「ヤクザマンション」を仕事場にしていたときのエピソードがすごかった。


夜は神保町へ。〈三省堂書店〉で、小沼丹『更紗の絵』(講談社文芸文庫)と唐沢なをき『まんが極道』第6巻(エンターブレイン)を買って、〈神保町シアター〉。入場するときに塩山芳明さんに声をかけられる。松林宗惠監督《風流温泉日記》(1958)を観る。一昨日にフィルムセンターで観た《風流交番日記》と同じく小林桂樹が警官約で出演しているが、べつにシリーズではない。紀州の白浜の温泉旅館に住みこんでいる女中たちをめぐるエピソードが同時並行で描かれる。脚本がしっかりしているし、団令子をはじめ俳優もみんなうまいので安心して観ていられる。上原謙中北千枝子のラブシーンという珍しいものもあった。三益愛子が里子に出した娘である司葉子が、宝田明と結婚して、この旅館にやってくるという設定があるが、司と宝田は汽車の中で予定を変えて白浜に立ち寄らなくなる。そのため、この二人が出てくるのは合計3分ぐらい。撮影スケジュールに何か問題あったのかと思える、不自然さだ。その代わりにやってくる新婚夫婦の妻が水野久美だとは、観終わってから気づいた。


終わってから、これから富岡に帰る塩山さんと途中まで一緒に。以前なら仕事場に泊まりこむ日は、映画を観たあと、ときどき一緒に飲んだものだが。