日比谷図書文化館に行く

先週は3日間かけて、雑誌特集の原稿をまとめる。6本のインタビューを合計で50枚以上でまとめたので疲れたけど、これぐらいの量を任せてもらえると全体像が把握できていい。


週末に神保町に行き、〈神保町シアター〉で中村登監督《三婆》(1974)を観る。原作は有吉佐和子。旦那がなくなった後の家に本妻(三益愛子)、妾(小暮実千代)、旦那の妹(田中絹代)が同居するハナシ。田中絹代が意地の悪くて利己的な老婆を好演。原作では、敷地内にそれぞれの建物をつくったため、じつにあやしい、グロテスクな屋敷になっているのだが、映画ではひとつの家での同居になっている。あと、時代も原作では戦時中から始まってるんじゃなかったかな。ともあれ、三人の女の意地の張り合いだけで十分楽しめた。


〈古本海ねこ〉さんより古書目録第4号をいただく。ヨーロッパへの買い出し旅行がそのまま目録につながっていて、読ませる。ベルギー在住のエリザベス・イワノフスキーの絵本、長新太が漫画やイラストを描いた『週刊東日』、堀内誠一が関わった『ロッコール』などが気になった。なお、2月3日(金)、4日(土)の2日間、古書会館で、海ねこさんと西秋書店さんによる「2階の古書市」が開かれるそうです。3日にはたむらしげるさんとトムズボックス土井章史さんのトークあり。また、2月17日(金)には千代田図書館で、「古書目録作りの最先端」というトークショーがあり、海ねこさん、日月堂さん、大屋書房さんが出演されるとのこと。


読了したもの。徳田一穂『秋聲と東京回顧』(日本古書通信社)、鈴木智彦『ヤクザと原発』(文藝春秋)、阿野冠『花丸リンネの推理』(角川書店)、森浩一『僕は考古学に鍛えられた』(ちくま文庫)など。『僕は考古学に鍛えられた』は少年期に出会った考古学を一生の仕事にした著者の、苦難が多くても幸福だった青春期の記録。これは名著。先月出ていたら、〈往来堂書店〉のD坂文庫で紹介したかった。


昨夜は夕方から雪が降り、朝起きるとけっこう積もっていた。午前中に1本原稿を書いてから外へ。コンビニでメール便で発送するものと、切手貼付済みでポストに投函するものとが1通ずつあったが、なんかボーっとしていたのか、郵便の方をメール便に出してしまう。それに気づかず、西日暮里駅の近くで昼飯食って、ポストに投函しようとしてはじめて気づき、コンビニまで戻ってシールを貼り替えてもらう。こちらが悪いんだが、店員も切手貼ってあるのに気付かなかったのか?


霞が関で降りて日比谷公園へ。入口のところで、タクシーに乗り込もうとする東京新聞のMさんとばったり。公園に入るとまだ雪が残っている。昨年11月に開館した日比谷図書文化館へ。以前は都立日比谷図書館だったが、千代田区の図書館になった。まず1階で特別展示室で「文化都市千代田」を見る。江戸から明治への変化を示す文書が展示されていたが、「文化都市」という視点があんまりなかったような気が。内田嘉吉文庫のところに展示されていた、息子の内田誠の著書『父へ』の外函のデザインが素晴らしかった。


そのあと、2階、3階の書棚を見て回る。蔵書数が少なくなった分、特集的なコーナーを増やしている。日比谷図書館の歴史の小展示が面白かった。昭和24年の『東京都立図書館要覧』に載っている都立図書館の開館時間の一覧があったが、他が朝から夕方までなのに、荒川図書館だけはなぜか14〜21時になっていた(本郷図書館は13〜20時)。この違いはナニに由来するのか? あと「閲覧料8円」とあるのにも驚く。この時期、区立ではなく都立だったことも知らなかった。2階には東京関係の本のコーナーがあり、落語だけを独立させたり、東京が舞台になった小説を並べたりと頑張っている。


ただ、図書フロアにはスペースごとに名前が付いていて、経済とか社会学とかは「まちづくりと情報・交流」となっているのだが、本の並べ方自体は10進分類法で、とくにまちづくりについての本が充実しているとも思えない。日比谷図書館時代に比べると、蔵書数が少ないので、読んでみたいと思う本も見つからなかった。近隣に通勤している人には便利かもしれないが、わざわざ足を運ぶ立場としては、正直、どういう用途で利用すればいいのか判らない。なんか中途半端な感じがした。結局、手持ちの文庫本を読み進める。閲覧席がほうぼうにあるので座りやすいのはいい。


丸ノ内線で銀座へ。マガジンハウスの近くにある〈共楽〉に久しぶりに入り、ラーメンを食べる。かつおだしであっさりしてて、チャーシューが柔らかい。大盛りで750円。京橋の〈フィルムセンター〉へ。特集「よみがえる日本映画 新東宝篇」に来るのは今日が初めて。松林宗惠監督《風流交番日記》(1955)は、新橋らしい駅前の交番に勤務する巡査の哀歓を描くもの。小林桂樹が主演だが、先輩巡査の志村喬がいい。冒頭に東京駅が出てくるし、新橋、銀座の風景がふんだんに出てくる。シーンごとにどこを撮ってるか分かったら、もっと面白く観られると思う。川本三郎『銀幕の銀座』(中公新書)あたりで取り上げてないかと思って、あとでめくってみたが載ってなかった。帰りに、閉店間際の〈八重洲ブックセンター〉に寄り、書評用の本を2冊買って帰る。


間が空いてしまうと、紹介したかった情報も、ちゃんと書きとめておこうと思ってたこともダイジェストになってしまうのでダメですね。少しずつでも更新するようにしないと。