こんな日を待っていたんだ

副都心線東新宿駅ビレッジプレスの五十嵐さんと待ち合わせて、〈レッドクロス〉というライブハウスへ。小さめのフロアにはすでにかなりの客が入っている。立ち見はつらいが、マガズロのライブで椅子が出ていたことはない。端っこのテーブルのある辺りに位置を占める。


今日のライブは特別なものだということは聞いていた。ボーカルの平井正也さんが首都圏からの住まいを(とりあえず)熊本に移すことになり、バンドでの活動がしばらくできなくなるからだ。配られたチラシには「マーガレットズロース結成十五周年記念ワンマン」とある。ぼくがこのバンドのライブを始めて見たのは2006年9月、秋葉原〈グッドマン〉で、このときも五十嵐さんが一緒だった。たかだか5年ほどのファン歴でしかないが、その間に7、8回ライブを見ている。そして、マーガレットズロースは自分にとって最も大切なバンドの一つになっていた。


8時過ぎにライブスタート。MCも少なめに、何曲か続けてやる。「今日はこれまで出してきた全部のアルバムからやります」ということで、『雲遊天下』最新号の平井さんのエッセイで引用されていた「おやじ」という曲など、ライブでは初めて聴く曲もあった。途中、東京を離れて地方に住むこと、バンドをやめるわけではないことなどが話される。休憩なしに突っ走り、二度のアンコールを経て終演。2時間以上やったのではないか。これまでの集大成に立ち会ったような、熱のこもったじつにいいライブだった。立ちっぱなしなので、途中横腹が痛くなったが。


ギタリストが加わった4人編成でのライブは、昨年も一度見ている。鋭角になってガンガン攻めまくるのが心地いいが、3人でやるときにかもしだしていた、ひとつの円が転がっていくような感じを愛していたので、少しなじめなかった。今回はもうこなれて、一体になっているように思えたが、それでも、昔につくった曲をやるときは、ひとつ音が余計に感じてしまうのは偏見だろうか。


今日も多くの名曲が歌われたが、ぼくにとってのザ・ベスト・オブ・マーガレットズロースである「斜陽」は絶唱とでも書きたくなる素晴らしさだった。「こんな日を待っていたんだ」というフレーズには、さまざまな意味を汲み取ってしまい、涙が出た。この一曲を聴けただけでも出かけていった甲斐があった。


今後も平井さんはソロでの活動を全国的に展開するようだし、タイミングが合えば、マーガレットズロースとしてのライブも再開するかもしれない。次に会うときまで、今日のライブの音を身体のどこかに引っかけておきたい。