怒涛の仙台・1日目




朝6時半起き。荷物を持って上野へ。構内のさぬきうどん屋で朝飯。やまびこの2階席で出発。大宮過ぎてからぐっすり眠り、気が付いたら終点の仙台だった。駅を出ると、雨の予報だったが、かろうじて降っていない。サンモール一番町まで歩く。もうだいぶ慣れたけど、駅からはけっこう距離がある。


アーケードに入ると、店主さんがすでに準備に入っている。ドンベーブックスさんが東京から来ている。青葉通り側には「わめぞ」のブースや、ブロカント・ギャルリーに出ていた雑貨屋さんなどのブースがあって、楽しそう。今回は一般参加の一箱古本市+プロによる出品を合わせて、「Sendai Book Market」と総称している。


受付に顔を出し、自分の箱の場所を教えてもらう。青葉通りとは反対側の出口の近くで、人通りがさびしそう。京都から届いた一箱古本箱を開ける。〈ガケ書房〉さんに発送を頼んだのだが、大きめの段ボールに入れてくれた。箱そのものを紙で包んでもいいけど、外箱へのダメージを考えるとやはりこのほうがいい。


箱の蓋部分が看板になるのだが、支えがないと倒れてしまうので、近くでビニールテープとカッターを買ってくる。それでいろいろやってるうちに、人が通りかかったのでよそ見した瞬間、カッターで薬指の腹をズバッと切ってしまう。見事な切り口から血がどくどく出る。ジーンズや空き箱に血が落ちてしまう。焦ってハンカチをかぶせるが、一向に血が止まる気配がなく、アーケード内のドラッグストアで傷薬とカットバンを買ってくる。何度か薬を塗ってるうちに落ち着いたので、ホッとする。そんなこんなで準備が遅れ、気が付いたら11時すぎていた。


ほかの土地に比べると、仙台のお客さんは恥ずかしがり屋さんなのか、前を歩いていて箱に眼をとめても、近づいたり本を手に取ったりするまでにはなかなか至らない。昨年などは、わざわざ後ろを通っていく人たちもいた。今回も最初のうちはそうだったが、だんだん立ちどまってくれる人が出てきた。箱同士の間隔が前より近いので、一箱みるとついでに隣の箱も見てくれる。知り合いで最初に来てくれたのは、木村衣有子さん。盛岡で写真展をやることになり、それに合わせてリトルプレスを出すとのこと。


しばらくは動きがなく、スタッフさんに店番を頼んで、他の箱を見てまわる。他県からの参加が多く、とくに福島勢が目についた。10月30、31日には福島市で「本博」というイベントがあるそうで、そのスタッフも来ていた。不忍でおなじみ「もす文庫」さんも福島から参加。不忍の助っ人さんが「小人BOX」という屋号で参加しているが、行ってみるとMさんだった。熱心だなあ。


40店参加のうち、ぼくが気に入ったのは、「本の路地裏」(福島)、「ばったりたおれ屋」(一関)、「archipelago books」(東京)、「贅六屋」(仙台)の4つ。最後のは、かなり年季の入った古本好きだとお見受けした。宇野浩二『文藝夜話』(金星堂、大正11)800円、南川泰三『浪花の女ハスラー 玉撞き屋の千代さん』(集英社)300円、を買う。プロコーナーに 移動すると、こちらはスゴイ人だかり。青葉通りからの人を呼び込むのには効果があるが、ここで人が止まって、一箱のコーナーまで流れていない気もする。盛岡の『てくり』、秋田の〈まど枠〉で挨拶。会津の『oraho』を買う。この辺の方々は、明日のブックイベント講座にも出てくれる。受付のカフェコーナーで、コーヒーを買って戻ると、いがらしみきおさんが登場。カヒロックのCDを2枚買ってくれる。そのあたりから、ときどき売れはじめ、まとめ買いしてくれる人も出てくる。


2時過ぎにまたスタッフさんにお願いして、正面の〈泰陽楼〉へ。ビルの地下にある中華料理屋で、かなり広いスペース。客は一人だけ。どれもウマそうだったが、シューマイとラーメンを頼む。蒸し暑いので、当然ビールも飲む。シューマイは肉厚、ラーメンはあっさり味でおいしい。また戻って、店番しているうちに4時前になる。予定が押して、その頃に店主の表彰式がある。ヤマハ前に呼ばれ、プレゼンターが選んだ箱を表彰する。司会の武田こうじさんが先に箱の名前を云っちゃうのが珍。それはプレゼンターに云わせるべきじゃないの? ぼくは「ばったりたおれ屋」さんを選ぶ。写真集やデザイン系の本の並べ方が良かったこともあるが、この屋号が気に入ったので。あとで訊いたら、『チェブラーシカ』を日本語に訳すとこうなるのだという。お客さんで、それを指摘した人がいたそうだ。そういうことが起こるのが一箱の面白いところ。お客さんってほんと、あなどれない。


そうこうしてるうちに4時になったが、そのまま20分ぐらいゆるく販売が続いていた。売り上げはなんとか2万円超えた程度。「古本けものみち」の売れ線はCDとミニコミであることを改めて認識。片付けに入り、ドンベーさんと一緒に台車で近くの佐川に荷物を持ち込む。今夜東京に帰るというわめぞ勢と別れて、タクシーでホテルへ。近くにある五橋駅で、五っ葉文庫の古沢くんと待ち合わせ。イツツバシでイツツバだ。出口が複数あるので会うのに手間取る。仙台では必ず寄る〈S〉に行くと、本棚がアクリルのケースに変わっている。「お客さんからもらったんです。このケースも売りますよ」と店主。『ローリングストーン』1979年3月号、500円、加能作次郎『世の中へ・乳の匂い』(講談社文芸文庫)500円、田中小実昌作品集2『やさしい男にご用心』(現代教養文庫)800円、キネマ旬報臨時増刊『天晴れ!時代劇』800円と、相変わらずイイ本が安く見つかる。とくにキネ旬の増刊は、明日の〈右岸の羊座〉でのトークにぴったりの内容だ。こんな独特の雰囲気のなかでも臆せず喋りまくる(うるさい)五っ葉に、店主も苦笑していた。


近くにある〈萬葉堂書店〉はどうも事務所になったようで開いていない。地下鉄で勾当台駅へ。歩いて〈せんだいメディアテーク〉。7階のラウンジで、「いがらしみきおマンガ工場」を見る。原画が本になるまでの過程を、ゲラや色校などを並べて見せる。マンガ編集者のチェックの厳しさを知る。いがらしさんのインタビュー映像も流していた。3階の図書館では仕事場を再現(ご本人の机を運んで来たとか)しているが、この時間は閉まっていて見られず。〈マゼラン〉に行き、高熊さんと喋る。たけうま書房さんに連絡して、メディアテークで待ち合わせ、3人でサンモールまで戻る。二の腕さん(たけうま妻)も合流。地下にある居酒屋で打ち上げ。後ろの巨大モニターでサッカーの試合をやっているなか、挨拶があり、なんだか聞き取れないままに乾杯。隣にさっき賞を上げた「ばったりたおれ屋」さんがいたのに、すでに顔を見忘れていた。いつものことだが。今日のイベントの仕切り役だった〈ストック〉の吉岡さんのはじけっぷりが微笑ましい。そうそう、終わると反動で、こうなるんだよなあ。10人ほどが残り、近くの〈和民〉で二次会。スタッフで図書館に勤めている女性らと話す。


お開きになったのは1時ごろだったか? 方向を教えてもらい、歩いてホテルへ。蒸し暑いので、すぐに風呂に入り、しばらく本を読んでから眠る。


なお、会場の写真は『風の時』の佐藤さんがたくさん撮っています。ぼくも何枚か映ってます。
http://d.hatena.ne.jp/kaze_no_toki/