大雨の京都、一箱古本市列車は行く

朝9時すぎに起きる。荷物をまとめてチェックアウト。地下鉄で今出川へ。雨が強くなってきたので、ビニール傘を買う。同志社大を通り過ぎて、〈ほんやら洞〉の前に出るが、まだ開いてない。しばらく先にレストラン兼喫茶店が見つかる。「やきめしなら、もうできるよ」と云うので、それを頼み、コーヒー。昨日から読んでいる、宇野浩二芥川龍之介』上巻(中公文庫)の続きを。面白くて、たちまち半分以上読んだ。


11時すぎに出町柳へ。まだ時間があるので、駅前の〈柳月堂〉へ。1階がパン屋、2階が名曲喫茶になっている。2階はいかにもリスニング・ルームといった感じ。音がいい。客はひとりしかいない。紅茶を飲みながら、宇野本の続きを。会計したらレジのお姉さんに1000円超える値段を云われて、思わず訊き返す。飲み物代のほかに、席料500円を取るのだという(レシートを持参すれば、次回は席料なし)。それぐらいやらないと、この店は維持できないと考えれば、まあ納得。


改札口に行くと、出店者が集まっている。荻原魚雷さん、扉野良人さん(9か月の赤ちゃんを背負っている)も。そのうち改札横のドアが開き、ホームへ。2両編成の電車に乗り込む。前の車両ではライブ、後ろの車両で古本を販売する。ぼくの荷物は〈ガケ書房〉から持ってきてもらっていた。ハコバカさんデザインの「一箱専用箱」が京都デビューするのだが、スペースの都合上、座席の上に箱を置かざるを得ず、下の台や後ろの引き出しは使えない。でも、けっこう目立っていた。ほかの出店者も準備している。隣は昨日行った〈エンゲルス・ガール〉で、ご主人に頼まれたという女の子が店番。向かいは〈はんのき〉の中村さん(古書ダンデライオン)で、ぼくの嫌いな生物の写真集を面出しにしているので、「すまんが、見えないところにやってください」と頼む(ホントは、その隣の〈Hedgehog〉さんも同様の写真の本を並べており、困るのだが、初対面なので頼めず、そちらを見ないようにして過ごす)。〈はんのき〉は3人で運営している古本屋だが、中村さんは別の二人と〈トリペル〉(http://tripel.blog2.fc2.com/)なるマンガ・古本カフェを、6月15日から始めるそうだ。働き者だなあ。岡崎武志さん、山本善行さんも。


12時45分、改札口に並んでいた一般参加者が入ってくる。まだ停車中だが、売りはじめていいようだ。にとべさん、『Sanpo magazine』の西川さんなど知り合いの顔も。通路に人が充満してきた頃に、電車が動き出す。前の車両では風博士のライブをやってるはずだが、後ろにいるとまったく聴こえない。電車は15分ほどで八瀬に到着。ホームでは、『ぱんとたまねぎ』セレクトのパンやチャイ、コーヒーなどを売っているが、パンはすぐ売り切れて、コーヒーだけありつける。ココでの停車時間は1時間と長く、ちょっとダレる。それでも、『spin』や『積んでは崩し』、CDが売れたので、けっこうイイ気分。


ほかの箱をざっと見て回り、中古レコード屋〈100000t〉(じゅうまんとん)の箱から、阿部勘一ほか『ブラスバンドの社会史』(青弓社)を500円で買う。〈ガケ書房〉で古本の棚を持っているという「固有の鼻歌」さんでは、田中小実昌『ああ寝不足だ』(青樹社)が1000円であり、すぐさま買う。そのあと、男性が戻ってきて、「この『ポロポロ』はサイン入りです」というので見たら、たしかにそうだった。コレも1000円で買わせていただく。こんなの、よく残っていたな。


戻りの電車が出町柳に着いたのは、15時。ちょっと買い物に出かけたいと思っている間もなく、二回目のお客さんが入ってくる。一回目に比べると若い人が多いかな。同じコースをたどる。八瀬のホームでは到着してスグにパンを買いに走り、チャイを飲みながら食べる(じゃがいもパンがウマい)。この回から車内マイクが導入され、薄花葉っぱの下村よう子さんらのリーディングが聴ける。下村さんはぼくが貸した『ユリイカ』の鉄道特集を、独特の節回しで読んでいた。帰りには、風博士のライブも車内放送されて、盛り上がる。 ホームに電車が止まった瞬間に、最後の一音が終わるという上手さ。あとで、ニューアルバム[SOMETHING OF MUSIC]を買い、打ち上げでサインしてもらった。


持ってきた本がちょうど半分売れたので、一箱用の箱に在庫が収まる。これはこのまま、仙台に送る。売り上げも2万5000円と、思ったよりもよく売れた。今回は、ほとんど持ち出しで来ているので、ありがたい。ずっと雨だったのに、これだけの人(二往復で150人以上か)が集まれば、イベントとしても大成功だろう。【6月15日追記】ガケのうめのさんからのメールで、各回のお客さんは110人と教えてもらう。それはスゴイ。


昨日も来た〈かぜのね〉で打ち上げ。出店者のほか、岐阜から来た詩人の金子さんや、イベントを手伝った造形大の学生さんも参加。料理はどれも美味しいが、チキン南蛮がとくにうまい。たちまち8時になり、新幹線の時間が心配なので、一足先に失礼する。ガケのうめのさんがバス停まで送ってくれる。今回のイベントは彼の若さと行動力がなければ、実現できなかっただろう。ほわほわした兄ちゃんだけど、頼りになる。ぜひ次もやってねと握手して別れる。


京都駅で〈蓬莱551〉の豚まんを買いたかったが、もう閉店。9時25分の新幹線に乗る。車中で『芥川龍之介』上巻を読み終え、横浜まで眠る。帰ったら、もう12時前だった。