私だけのふちがみとふなと

朝8時前に目が覚める。新人賞の下読みを続行。テーブルでやっていると飽きるので、ときどき寝転がって読むが、A4の紙束を持ってめくっていくのは疲れる。2時に神保町へ。久しぶりに〈スヰートポーヅ〉で中皿ライスを食べ、〈東京堂書店〉。『spin』7号にサインを入れる。同誌は毎号執筆者の全員サインというのをやっているのだが、120冊もある上に、先に書いた人が一冊ごとに違う位置に書いているので、ドコに書くか悩んでしまい、はかどらない。みずのわ出版のねこしゃちょーのサインが芸能人みたいで、いちばん目立っているというのもねえ。


ふくろう店で、柘植文野田ともうします。』第2巻(講談社)、見ル野栄司『工場虫』(中経出版)、福満しげゆき『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』(フィルムアート社)を買う。半蔵門線で九段下で東西線に乗り換え、飯田橋。神楽坂通りにある財津正人さんの事務所へ。ある版元に机を置かせてもらってるそうだ。今年11月6日(土)、7日(日)開催の「ブックスひろしま」について、あれこれ。そのあと、加井さんに会い、路地裏の喫茶店へ。彼女に「出版者ワークショップ」の連絡役になってもらうことになったので、その相談を。ちょっと時間が余ったので、〈クラシコ書店〉に案内する。3冊500円の棚で、えのきどいちろうのコラム集2冊と『日本短篇文学全集』(筑摩書房)の漱石寺田寅彦鈴木三重吉・内田百ケンの巻を買う。青柳瑞穂の解説が読みたくて。


〈シアターイワト〉の前には行列ができている。前の方に吉上さん夫妻、後ろには岡崎武志さん、退屈男くんたちが。前から2列目に坐る。あとから吉井さんと岩井さんがやってくる。そのほか、谷根千工房のサトちゃん、アルテス・パブリシングのSさん、仲俣さん、新潮社のMさん、石丸澄子さんなど、知り合い率が高い。チャイでまんじゅうを食べるうちに、ふちがみとふなと登場。


休憩をはさんで、2時間以上やってくれたかな。定番の曲に新曲やカバーが混ざり、常連客にも毎回発見がある。ましてや、今日がふちふな初体験の加井さんや岩井さんはすっかりヤラレてしまったようだ。石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」の珍妙なカバーや、越路吹雪の「オー・パパ」というコミックソングは初めて聞いた。今回いちばんグッときたのは、「池田さん」。これまで普通に聴いていたのだが、今日は、子どものころに特有の記憶の作用をうたった歌詞に、ものすごく深いものを感じ取ってしまい、不覚にも泣きそうになった。


ふちがみとふなとは、聴く人によって、好みの曲が分かれると思うが、いつそれを聴いたか、どんな状態で聴いたかにも左右されるようだ。それぞれに、「私だけのふちがみとふなと」があるのではないか。


アンコールは一度で終わらず、二度目にでたとき、主催の〈ムギマル2〉の早苗さんが、「『歌う人』、やって!」とリクエスト。ぼくは別の曲名を叫ぼうと思っていたのだが、この曲が最後でよかった。誰も聴いてくれないかもしれないけれど、歌うことしかできないという心情が、ほかのコトにも通じるような気がして、しみじみと聴いた。


終わって、ラストオーダーまで15分という〈鮒忠〉で、酒を2杯いっしょに頼み、ガーッと飲んで食べて話して、11時に解散。途中まで岩井さんと帰る。