「名誉市民」の提灯がステキ

朝7時に旬公の目覚ましで起こされる。しかたなく早めに起きたのだが、布団を片付けた直後に旬公がまた寝入ってしまって、ややムカつく。《ウェルかめ》を観てから、仕事場へ。「早稲田古本村通信」の原稿を書く。


堀内恭さんから『入谷コピー文庫図書目録2009』が届く。これまで出した本の解説目録。たとえ15部しか発行しない本でも、こうやってリストに残せば、いつか誰かが見つけてくれるかもしれない。それにしても5年間で36点は立派。目録のほか、岡崎満義、大川渉、ぼくが一文を寄せている。


10時半に出て、神保町へ。〈神保町シアター〉でチケットを買うために並んでいたら、後ろから塩山芳明さんに声をかけられる。最終回の分を買いに来たと。「さっき、そこんところに坂崎(重盛)さんが学生連れていたの見た?」と訊かれる。どこかの大学の課外授業だろうか? 塩山さんと〈ドトール〉でコーヒー。さっそく光文社新書のタイトルが悪いと嬉しそうにけなされる。なんだよ、自分の本のときは最後まで編集者に本心を押し隠してたくせに。しかし、先日ぼくが言葉足らずなケナしかたをしてしまった《幽霊列車》を、「あれは、小国英雄の脚本はいろいろ詰め込んでいるのに、無能な監督が処理しきれなかったんだよ。助監督で付いている加藤泰が撮ればよかったのに」と指摘するあたりは、さすがに鋭い。


神保町シアター〉に戻り、瀬川昌治監督《喜劇 急行列車》(1967)。入りはほぼ半分。渥美清主演で、寝台急行の中で起こりうるすべての事件を詰め込んだ、幕の内弁当みたいなコメディ。売り子の大原麗子がまだ初々しくてカワイイ。終わると、一緒に観ていた瀬川監督が立ちあがり、挨拶を。寝台急行に新幹線が追い付くシーンなど、その時代ならではの工夫と苦労を語る。まだまだお元気そうだったが、20分以上話されたのに椅子なしで立ったままというのはお気の毒だった。


東京堂書店〉で、坂崎重盛『神保町「二階世界」巡り及ビ其ノ他』(平凡社)、中川六平『ほびっと 戦争をとめた喫茶店 べ平連1970-1975 in イワクニ』(講談社)、三浦衛『出版は風まかせ おとぼけ社長奮戦記』(春風社)を買う。坂崎本の装丁は間村俊一さん、中川本は平野甲賀さん、三浦本のイラストはしりあがり寿。坂崎本には『路上派遊書日記』の書評が入っていて嬉しい。


仕事場に戻ると、10月15日の「中国新聞」が届いている。1ページで、11月7、8日開催の「ひろしまぶっくでいず」(http://www.bookrainbow.com/okonomi/)を特集している。イベント紹介、トークをされる作家の湊かなえさん(尾道市生)の寄稿など。ぼくも一箱古本市の魅力についてコラムを書いたが、春に広島に行ったときに撮られた写真に赤面。いつもなら顔だけだが、今回はなぜか全身。そういうときに限って、小汚いカッコをしてるんだよな〜。袋町の一箱古本市は、まだ店主受付中のようです。その他トークも予約してください。


2時間ほど仕事して、〈映画保存協会〉へ。谷根千工房主宰の「D坂シネマ」。今回のテーマは「仕事の結果」で、今日は二日目。カナダの積み木アニメ(恐るべき手間だろう、これは)から始まって、谷中墓地周辺に暮らす人々を描いた《あき・らんだむ》、工事シーンが8割を占める《あすをひらく東西線》など。最後に観た《彫る 棟方志功の世界》(1974)がサイコーに面白い。彫りながらいろんな理屈を述べるのだが、訛りと早口でほとんどナニを云ってるのか聞き取れない。乗ってくるといろんな歌をうたう。青森市の名誉市民第一号になるのだが、ねぶた祭りに「名誉市民」と書かれた提灯を持って参加。などなど、型破りというか、型を意識していない行動がいちいち素晴らしい。あの「名誉市民」の提灯、ちょっと欲しいな。


会場で配布していたチラシの中に、『月刊トドロキ・ユキコ』創刊特別号が。発行者は山口博哉。6ページのコピーだが、「日本で唯一の轟夕起子専門研究誌」だけあって、出演映画完全リストとその調査の方法などが詳しい。最終ページには大阪にある〈阪急学園・池田文庫〉を「私の大学」として紹介。ぼくもいちど行ったことがあるが、豊富な蔵書といい、データベースの使いやすさといい、素晴らしかった。とくに芸能史を研究する人にとっては、早稲田大学演劇博物館と並んで、天国みたいなトコロだろう。この『月刊トドロキ・ユキコ』創刊特別号は昨年1月発行だが、その後、発行されていれば読みたいものだ。


帰って、晩飯を食べながら、《不毛地帯》を観るが、役者がみんな、まさに型にはまった演技しかできないでいる。とくに、柳葉敏郎はヒドイな。セルフイメージをなぞらないとナニもできないのだろうと思うと、なんか哀れな感じさえする。


新刊に合わせてのイベント、版元の宣伝部の方とのミーティングをするより先に、ぼくが話をしやすい店からどんどん決まっています。ありがたいです。ただ、今回は新刊書店での販促もやりたいと思ってますので、何か話させてみようとか、ワクが余ってるからやらせてやるなどのご意向があれば、ご連絡ください。フェアの選書なんかもやりますよ。あと、これからブックイベントをやりたいと考えている人たちに向けて、この本をテキストにした講座を開くのもアリかと思います。コレに出席すれば翌日にはスタートに向けて動ける、とか。札幌とか金沢とか、呼んでくんないかなあ……。