山崎豊子からカタリココへ

まず、告知。

今月も不忍ブックストリートの茶話会を開催します。場所はいつもの<ブーザンゴ>です。いつも通り、気軽に参加して、自由におしゃべりしてください。


21時ごろから30分ぐらい、翻訳家の吉上恭太さんがお話してくださいます。テーマは、「ギタリスト・伊勢昌之のこと」です。ご興味のある方はぜひ。みなさまお誘い合わせのうえ、お越しください。


日時 2009年10月28日(水)20:00〜23:00頃(出入り自由)
場所 ブックス&カフェ・ブーザンゴ
〒113-0022 東京都文京区千駄木2-33-2
TEL & FAX: 03-3823-5501
http://www.bousingot.com/


参加費 各自オーダーのみ
問い合わせ 不忍ブックストリート実行委員会
shinobazu@yanesen.org


朝8時起き。《ウェルかめ》を観てから、バスに乗って池袋へ。〈富士そば〉で肉そばを食べ、コンビニでパンを買ってから〈新文芸坐〉へ。たっぷり4時間いなければならないので、それなりの準備がいる。山崎豊子特集。まず、吉村公三郎監督《女の勲章》(1961)。洋裁学校の校長の京マチ子と、その弟子の若尾文子、叶順子、中村玉緒の4人を、事務局長の田宮二郎が手玉に取るという、同じ山崎原作の《女系家族》(三隅研次監督)とよく似た話。後者も田宮二郎ドンファン役だし。なかなかエグくて面白い。


しかし、もっと面白かったのが次の豊田四郎監督《花のれん》(1959)。遊び好き、寄席好きの夫(森繁久彌)があっさり死んだあと、淡島千景が女手一つで寄席経営を続ける。モデルは、吉本興業吉本せい。淡島を助ける番頭の花菱アチャコ、つかず離れずに見守る市会議員の佐分利信の二人の男がイイ。劇中、出雲から「安来節」を呼ぶエピソードがある。多くの東京人は「やすきぶし」と濁らないのだが、この映画では「やすぎぶし」と発音していた。2時間10分という長さがあまり気にならなかった。


池袋駅前からバスに乗って、団子坂下へ。不忍通りの〈ダージリン〉の隣におにぎり屋が開店していた。〈千駄木倶楽部〉で、光文社のKさんと会う。新書初校を戻す。章タイトルなど懸案もだいたい決まり、ホッとする。来週再校を戻せば、完全に手から離れる。ウチに戻り、ヨコになりながら、「小説検定」の資料読み。7時に早めの晩飯。おかずは、旬公がお送りした豚肉を坂東眞砂子さんが加工されたという、恐れおおきベーコン。よく塩が利いてました。


8時前に〈古書ほうろう〉へ。大竹昭子さんがホストのイベント「カタリココ」。ゲストは黒川創さん。お客は40人ほど。仲俣暁生さんや新潮社ツムツム、吉上夫妻など、知った顔が多い。大竹さんの最初の質問は、黒川さんがどんな子どもだったか、ということ。黒川さんの答えは決してスムースではなく、沈黙したり、うまく喋れなくて自分で笑ったりするのだが、一生懸命考えている様子が伝わってきて、とてもいい。そのあと、小説の話になるが、ひとつひとつ挙げられる例が納得のいくもので、さすがだなあと思う。大竹さんはわざと鈍重さを装って、直球の質問を投げ込み、黒川さんの重い口を開かせるのに成功していた。大竹さんの訊きかたがうまいというのは、人物ルポを読んでつねづね感じていたことである。


休憩のときに、黒川さんに挨拶。『季刊・本とコンピュータ』で座談会に出ていただいたことがあるのだ。覚えてくれていて、嬉しかった。後半は、いろんな方向に話が弾み、終わったら3時間経っていた。しかし、長すぎるという感じはなかった。「カタリココは朗読のイベント」というのが頭にあって、これまで行かずにいたが、黒川さんのぶっきらぼうで早口の朗読は、かえってその場面を頭に思い浮かべさせてくれ、文章を耳で聴くのもけっこうイイものだな、と思う。黒川さんは最近引っ越された鎌倉への終電を気にしながら、缶ビールで乾杯。とてもいい会だった。