太鼓たたきの血が騒ぐ

朝8時起き。《ウェルかめ》を観てから、仕事場へ。ちょっと作業してから、神保町へ。〈神保町シアター〉で、井上和男監督《喜劇 各駅停車》(1965)。引退を勧告されるベテラン機関士の森繁久彌と、万年機関助手の三木のり平との友情を軸に描く。岡田茉莉子は、飲み屋のおかみ役。ちょっと欲求不満な感じをよく出していた。終わってから、靖国通りの〈埼玉屋〉(だったかな)でつけ麺。大盛りでも500円なのはありがたい。


ディスクユニオン〉へ。1階がリニューアルして、日本インディーズの新作をあまり置かなくなったので困る。2階で、CD+DVD[BRILLIANT MOMENTS 栄光の山下洋輔トリオの軌跡]、森山威男パーカッション・アンサンブル[フル・ロード]、それとCD用のビニール袋を買う。〈高岡書店〉で、押切蓮介『猫背を伸ばして』(Bbmfマガジン)を。まだ『でろでろ』の連載をはじめた頃を描いたエッセイマンガ。どろどろと暗い。友人として、清野とおるが登場。〈三省堂書店〉2階で「小説検定」の資料を買う。


久しぶりに古書会館へ。今日は「新宿展」。奥成達宮澤賢治、ジャズに出会う』(白水社)、平出隆『猫の客』(河出書房新社)、森卓也『シネマ博物誌 エノケンからキートンまで』(平凡社)、塩澤実信『ベストセラー作家その運命を決めた一冊』(北辰堂出版)を買う。いずれも安い。西日暮里に帰り、資料を読んだり、ちょっと昼寝したり。


6時に出て、バスで池袋へ。豊島区役所の近くにある楽器屋の地下で、ドラムスティックを買う。ジョージ川口モデルで、1080円。昔はもっと高かったような気がするが……。先日突然結成されたu-senバンドのメンバーと、近々スタジオで音を出すときのため。セドローくんに「わめぞのバンド結成話はやるやる詐欺」と茶化されたが、少なくともぼくは本気だ。


そのままグリーン大通りに出ると、向こうから太鼓や鐘の鳴る音が。白い飾りの下がった高い山車みたいなのを引いた一団が、道路沿いにたくさんいた。なるほど、コレが「御会式(おえしき)」の万燈なのか。コンビニで酒を買い、たぶんこの方面だろうと思う方向に歩いて行くと、鬼子母神が見えてきた。境内の入口から屋台と人でぎっしりで、前に進むのもままならない。いったん外に出て、大回りして、鬼子母神商店街へ。ココのガレージで、わめぞ連の飲み会が開かれるのだ。屋台で買ってきた焼き鳥や、NEGIさんがつくってきたイモのはさみ揚げ(うまい)などを食べながら、ビールを飲むうち、通りが騒がしくなってくる。


向こうからドンツクドンツクという音が聞こえてくると、鐘の音がリズムキープするのに合わせて、たくさんの太鼓をたたきながら、揃いの服を着た人たちがやってくる。前の方にはまといを派手に振り回して歩く男がおり、後ろから万燈が引かれてくる。そこまでの一団がひとつの「講」であり、すぐ後ろには別の講がつづく。そして、太鼓の叩くリズムは基本的には同じだが、講によって少しずつリズムやテンポが違い、まるでテクノのDJを聴いているようだ。そう思うと、この行列がベルリンのラヴパレードに見えてくる(行ったことはナイが)。


両方に皮が貼ってある普通の太鼓ではなく、一枚皮の法華太鼓の音色がよく響き、自分でも叩いてみたいな〜と思ったところに、ある講の一員で旅猫雑貨店の金子さんが登場。太鼓を手渡されたので、そのまま叩きつつ、数十メートル一緒に進む。おおお、すごく気持ちイイ! そのあと、ガレージの隣の店が法華太鼓を貸してくれたので、それを握りしめて、来る講来る講の横で、ひたすら叩く。ときおり、講の人が行列からこっちにやってきて、お互いリズムを交換し合ったりして、もう、気分はジャムセッション


いちばん最後の行列を見送って、やれやれと思ったら、「境内ではまたリズムが変わるんですよ」とセドローくんに云われ、行ってみる。たしかに、お堂に向かって南妙法蓮華経に合わせて叩いていた。ガレージに戻って飲んでいるうちに、11時半になった。はしゃぎすぎて疲れたので、タクシーに乗って千駄木に帰る。太鼓たたきの血が騒いだ一日だった。もう少し書きたいことがあるが、「早稲田古本村通信」の連載に回します。