国会図書館、向島、表参道、黄金町

なんか、今日の日記は長くなりそうな予感が……。朝8時起き。《ウェルかめ》を観てから、仕事場へ。荷物を置いてから、国会図書館へ。一行だけ書いたことの確認を取るために、1980年代の『野性時代』を閲覧。間違いなかったことが判り、ホッとする。改めてこの時期の『野性時代』を眺めたが、当時「ゲラ雑誌」と呼ばれたにもかかわらず、意外に雑誌っぽいバラエティがあるのに驚いた。面白いのは広告で、他社広告は目次周りにしかなく、本文に大量に入っている広告はすべて自社広告なのだ。それもイラストあり、写真ありと、明らかにこの雑誌だけのオリジナル版下で、サイズがB5ということもあるし、ほかの雑誌への流用はあまりしていないと思われる。恐らくアートディレクションのK2(黒田征太郎長友啓典)の意向だろうが、多くのクリエイターの米びつ(資金源)になっていたのではないだろうか? 1980〜83年頃の『野性時代』がまとめて出たら欲しいけど、なにしろ厚いから置く場所がナイだろう。


永田町から半蔵門線で押上、東上線に乗り換えて曳舟へ。そこから大体の目星をつけて、15分ぐらい歩く。方向が判らなくなりつつあった頃に、向島百花園の入口に到着。隣接した児童遊園で、「すみだ向島百花園古本市」が開催中。第一回なので、小さなテント二つほどで小ぢんまりとやっている。ただ、出ている本は江戸・東京や芸能、植物に関する本など、会場に合わせて選ばれていた。〈ほんのたまご〉の出した、内田保広編『文学史こぼれ話』(大和書房)600円、を買う。『海』の無署名コラムをまとめたものだが、編者以外は単行本でも名前があかされず、略歴が書かれているのみ。これから著者を推測できる人は、相当な文壇通だろう。あとがきには「このコラムの担当であった村松さん」への感謝が。当然、村松友視だろう。今回の企画者の〈古書一路〉さんに挨拶。


せっかくココまで来たので、百花園の中まで入ってみる。秋なので花は咲いてないが、広い園内にはかなりの人がいた。吟行で来てる人が多いのかな。とにかく高齢者ばかりで、間違いなくぼくが最年少だった。ひとめぐりして出る。近くのバス停から、亀戸発、日暮里駅行きの都バスに乗る。「里22」というルート。白髭橋を渡り、山谷のど真ん中を通って、三ノ輪、荒川区役所、三河島、そして日暮里。このルートをたどれば、自転車でも向島までわりと近いコトを知る。昼時で混雑している〈又一順〉で、ランチ(ハムと卵炒り定食)を食べ、仕事場に戻る。ちょっとメールしてから、ヨコになって一時間ほど眠る。以前はこういった休憩がなくても、一日中動けてたんだけどねえ。


3時半に起きて、千代田線で表参道。新しい場所でオープンした〈古書日月堂〉へ。同じビルの同じフロアだが、かなり広くなったか。中央には紙モノを収める木製ケースが三つ、ドンと置かれており、その中に戦後現代美術のパンフレット類が並べられている。久しぶりに佐藤真砂さんと話し、リニューアルまでの経緯を聴く。相変わらずパワフルで、思い切ったことのできる人だ。一時、『彷書月刊』にいたSさんも来ていた。開店祝いにナニか買いたかったが、手が出ず、坊主で店を出る。


半蔵門線で渋谷、東横線に乗り換えて横浜。さらに京急線日ノ出町。駅を出ると、小雨が降りだしている。速足で歩き、6時15分に〈試聴室〉に着いたら、客は二人しかいなかった。なんか珍しく加藤和彦のCDをかけていると思ったら、あとで自殺したというニュースを知り驚く。今日のライブは、田中亜矢とぱぱぼっくす。一見かなり違うタイプだが、10年来の知り合いらしい。田中亜矢はいつもの曲を、いつものように弾き語る。どれもいい曲なので、すっかり夢心地に。「図書館」とソロでは、けっこう歌い方が違うんだなと思った。次にぱぱぼっくす。ドラムが活動休止中とかで、二人で登場。フォークの王道を行く歌と、ぼやき夫婦漫才的なMCとのギャップは相変わらず。もっと東京でライブをしてほしい。曲を用意できなかったというので、アンコールはなし。9時すぎには終わってしまう。帰ろうとしたら、折田烈さんに声をかけられる。久しぶり。


日ノ出町で夕飯をと、裏通りを歩いていると、一軒の中に本棚が見える。ふらふら寄っていくと、古本屋のようだ。なかに若い男女がおり、「どうぞ」と誘われる。タイ古式マッサージと古本・貸本の〈猫企画〉(http://ameblo.jp/neco-kikaku)という店で、まだオープンして6日目だという。狭い間口で分かる通り、ココはいわゆる「ちょんの間」、つまり売春宿だった建物。その1階にカウンターと古本の書棚、2階をマッサージルームとしているのだ。2階も見せてもらったが、なるほどなあ、こんなトコロだったのか……と思う。男性は東京や京都の新刊書店で働いていたそうで、マッサージをやりたいという奥さんに便乗するカタチで、古本屋をはじめたそうだ。一部は貸本もやっているそうだが、その区別はあんまり判らなかった。本はもろサブカルで、ぼくが読んだり買ってきた本がずらりと並んでいた。あまりに趣味がかぶり過ぎていて、買えなかったが。話し好きの若夫婦だったので、ぼくにしては珍しく初対面で話し込んでしまった。古本の品揃えはまだコレからだけど、立地だけでネタになる古本屋はそうないので、皆さん、足を運んでください。とくに「古本屋ツアー・イン・ジャパン」さんには、ぜひ突撃レポートをお願いしたい。


日ノ出町まで戻り、いつもの〈第一亭〉で、子袋炒めと角煮ラーメンを食べる。ココに来ると、いろいろ頼みたくなるのだが、一人だとあまり食べられなくてもったいない気がする。こんどは4、5人で来たい。京急で横浜に出て、JRに乗り換えて、西日暮里に戻る。今日は久しぶりによく動いたなあ。仕事場に旬公がいたので、加藤和彦のハナシなど。


到着物。入谷コピー文庫の新刊『あたご劇場 高知市名画座ものがたり』と、赤穂貴志『ツッコミ邦画劇場』が同時に。後者で同文庫は36冊目。近々、これまでの書目を載せた出版目録を出す予定で、ぼくも一文寄せている。朝日新聞出版から、岡崎武志編『古本検定』(2000円+税)。自身も古本好きである真田幸治さんのデザインが、いい感じ。ぼくはいちおう「編集協力」となっているが、最初だけで、途中経過はほとんど知らされていなかった。取材・執筆の北條一浩さんの努力の賜物でしょう。新潮社のAさんからは、10月30日に、津野海太郎『したくないことはしない 植草甚一の青春』(2200円+税)が出るというお知らせ。装丁はもちろん平野甲賀さん。『COMIC Mate』、今回の書評は小沢信男『東京骨灰紀行』(筑摩書房)を。


やっぱり書くのに時間がかかり、1時まで。旬公とウチに帰り、即、布団を敷いて眠る。