秋のはじめの《サマーウォーズ》

朝8時起き。今朝も雨。明日には台風上陸と。《ウェルかめ》を観てから、仕事場へ。巻末の年表をまとめる。ブックイベントにあわせて、社会や出版の動きを入れたいと思っていたが、イベントを並べるだけで4ページになりそう。この3年ほどのイベントの数の多さは凄い、と改めて思う。とにかく並べてみて、協力者のお二人にメールで送る。そのあと、中国新聞から頼まれたコラムを書く。11月の広島の一箱古本市にからめて。


やっと一区切りついたので、一週間ぶりに電車に乗って出かける。新宿三丁目で降り、適当な中華料理屋で定食を食べて、〈バルト9〉へ。ウワサ通り、広くてきれいなシネコンだ。エスカレーターから甲州街道あたりの風景が見える。新宿高校なんか、教室の中まで見える。小沢信男さんが『東京骨灰紀行』で歩いたルートじゃないか。でまあ、雰囲気はいいのだが、困るのはロビーに椅子がほとんどないこと。上映階の11階なんか、ひとつもない。10階のカフェで金払って座れってコトか? 次からはネットで予約して、開場時間ちょうどに来ようかな。予告編前のこの映画館の説明CMが、蛙男商会によるコント仕立ての5分近くあるアニメで、周囲は引いていた。これ、次に来るときも見せられるのか……。


このあいだから何度も観ようとして、時間が合わなかった細田守監督《サマーウォーズ》(2009)をやっと。8月頭公開なのに、この時期までやってくれていて助かった。予告編は何度も見ていたが、それ以外にナニも情報を入れないようにしていたので、とても楽しんで観た。上田市の旧家の出来事と、OZ(オズ)というネット上のバーチャルワールド(グーグルがめざす最終形みたいなネットワーク)の事件が並行して進んでいく。デジタルのスピードを無視してバーチャルなネットワークに血縁や人の縁を対峙させたり、ひとつの家に関係者が何人も集まっているというご都合主義はあるけど、あんまりやりすぎてない。数学の天才であることを除けば、主人公があまりにフツーの少年すぎる気がする(劣等感が感じられない)が、いまどきはこのほうが共感できるんだろう(《オネアミスの翼》と比べてしまった)。音楽や音響もよく、この映画館で観てヨカッタ。時間をおいてもう一度観てみたい。なお、この感想が甘口過ぎると思う方は、「たけくまメモ」(http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-5e10.html#more)をご覧ください。ネタバレありです。これはこれで納得する意見ではある。


紀伊國屋書店〉で「小説検定」の資料を数冊買って、西日暮里へ。しばらく雑用してから、7時前に〈お茶とごはんや〉へ。上原隆さんが先着していた。そのあと、岡崎武志さん、黒岩比佐子さん、栗原裕一郎さんと集まる。ライターを仕事にしている人たちで一度集まろうという岡崎さんの提案で、会食をするコトになったのだ。全員、経験も立ち位置も違うのでお互いの話が興味深く、それでいて身につまされる話も多く出た。黒岩さんは仕事を始めてからの原稿料の記録と取材ノートをぜんぶ残しているというので、いつか見せていただきたいと思う。〈ブーザンゴ〉に場所を移して、10時半まで。解散してウチに帰った頃から、いったん止んでいた雨が激しくなりはじめる。明日は朝から大雨だろうか。


洗濯しながら、高林陽一監督《本陣殺人事件》(1975)を観る。角川映画より早い横溝正史作品の映画化だが、いかにもATGらしく、横溝の世界を「幻想とロマン」のみで描こうとして、見事に失敗している。退屈の極み。この作家にはもっとリアルで、かつモダンなセンスがあるのだ。そのコトを、少なくとも角川春樹市川崑はよく判っていたと思う。だいたい、中尾彬金田一耕助なんて。近所のトウのたった大学生にしか見えなかった。