『東京骨灰紀行』から『新参者』へ

朝9時に起きるも、息がゼイゼイしており、ちょっとつらいので、ゴロゴロして本を読む。小沢信男『東京骨灰紀行』(筑摩書房)を一章ずつ、付された地図をときどき眺めながら舐めるように読む。よく知っている場所もあれば、そんなトコロがあったのかという場所もある。小沢さんから東京の街についての宿題をもらった気分だ。続いて、東野圭吾『新参者』(講談社)を読みはじめれば、偶然にも、小沢著に出てきた日本橋が舞台だった。加賀恭一郎ものの最新作だが、これまでの東野作品と大きく違うのは、固有名詞つきの東京の街を描いていることだろう。一瞬、宮部みゆき作品かと思わせるような作品だが、ラストも含め、この作家じゃないと書けなかったものだと思う。近年ではいちばん好きな作品かも。オビのコピーは、表も裏も秀逸。久しぶりに、編集者自身の手になるいいオビを見せてもらった。


夕方、〈千駄木文庫〉へ。店内のレイアウトが変わり、中央の大テーブルと奥の本棚が消えていた。店主に訊くと、席数をちょっと増やしたかったという。ただ、ゆったり座れるのはこれまで通り。客は少ないし、いても静かにしているので、読書には最適。コーヒーもケーキ(今日はバウムクーヘンのアイスクリーム添え)もウマい。


ウチに帰り、奥泉光『グランド・ミステリー』(角川書店)にとりかかる。いわゆる純文学(この場合は『新潮』『群像』などの純文学雑誌が主な発表の舞台という程度の意味)の作家としては、今年はじめて「発見」し、好きになった。長ければ長いほど、その世界にどっぷり浸かれる。まだ半分ぐらいだが、後半に大きな展開がありそう。