仙台の路地でアングラ小芝居

まずは、この写真を見てください。ハナシはそれからです。


「仙台だと帰巣本能が働くんです〜」とほざきつつ、イイ気分で日本酒をがぶがぶ飲み、案の定すっかり酔っぱらってしまったジュンコちゃんが、その辺にあったゴミ箱に入ると、めぐたんも一緒に入り、そのあとコーフンして二人でじゃれあいつつ路地中を走り回る。それを止めるどころかけしかけるお母さんの前野久美子……。仙台の路地で、なんだかよく判らないアングラ小芝居が演じられたのでした。ここに至るまでの日記は、のちほど。


8時すぎ、塩山さんのいびきで目が覚める。着替えていると、塩山さんが目覚めて「おめーのいびきがうるさくて、朝方眠れなかったヨ」と。お互い、いびき攻撃をかけていたようだ。9時半に出て、一箱古本市の会場である「サンモール一番町商店街」に向かって歩く。今日も暑くなりそうだ。商店街の〈ドトール〉で、コーヒーとサンドイッチ。アーケードの中ほどに着くと、すでに段ボール箱が並んでいる。受付をして、自分の位置へ。天気がいいとアーケードを開くコトになっているが、陽がじかに差し込んできて厳しい。さすがにマズイということで、アーケードを閉めてくれたので、助かった。10時半には、出店者が箱を並べ終わったので、11時を待たずに代表の武田こうじさんが開会宣言を。


歩く人は多いが、なかなか立ち止まってくれない。しかも、後ろを通り過ぎていく人もいる。なかなか売れないな〜。見物に来たドンベー夫妻をつかまえて、店番をお願いし、他の箱を見て回る。その途中で、せんだいメディアテークのHさんと会い、いろは横丁にある喫茶店で、7月末に予定されているレクチャーの打ち合わせ。また店番に戻るが、相変わらず売れず、ジュンコちゃんに代わってもらって、箱を見てもらったり、大衆食堂で昼飯を食べたり。どうも女性に店番を頼む方が、売れるようだ。しばらく店番すると、西日がまっすぐ照りつけてくるので、場所を移動。そのあたりから、熱射病にかかったように、頭がふらふらする。また店番を頼んで、昨日行けなかったジャズ喫茶〈カウント〉へ。いまどき少なくなった「お聴かせ専門」のジャズ喫茶。デカい音でコルトレーンホレス・シルバーを聴くうちに、少し眠ってしまう。


4時に会場に戻ると、プレゼンターによる表彰がはじまる。受付のテーブルに、受賞者を呼び、その場で賞を授与という、てっとり早いやりかた。南陀楼賞は、女子優勢のなかで男性一人で頑張った「式部堂」さんに差し上げる。この箱で、竹岡和田男『映画の中の北海道』(北海道新聞社)という素敵な本を300円で買った。その後、トンブリンの松本さんにも店番してもらって、5時に終了。塩山さんは売り上げが2万円超えたと、ホクホク顔で帰って行った。ぼくは、後半で何冊か知り合いに売りつけたりして盛り返したが、1万2000円ほどで終わる。あとで、モンガ堂さんが「仙台の気質なのか、こういう一箱古本市に慣れていないのか、眺める人はいるが本を手に取って開けて見る人は極端に少ない」と書いていたのは、的確な感想だと思う。財津さんと一緒に、近くのコンビニで荷物を出し、一段落。


打ち上げまで時間があるので、たけうまさん、ドンベー夫妻、トンブリン1号2号と一緒に、五橋の古本屋〈S〉まで。前回は閉まっていたので、今回は電話をかけて行く。店主は昼間、一箱に来ていたそうで、買った本を見せてくれる。同行者は一冊手に取るたびに、店主がいいタイミングで声をかけるので、つい買ってしまっていた。ぼくも、文庫しか持っていない田中小実昌『イザベラね』(中央公論社)1000円と、石川活『晴のち曇、所により大雨 回想の石川淳』(筑摩書房)400円、を買う。なんだか上機嫌な店主に焼酎を少し飲まされ、店を出る。〈萬葉堂書店〉の支店はもう閉まっていたので、また歩いて戻る。


サンモールからヨコに入った路地の奥にある〈赤白屋〉(だったっけ?)の2階で打ち上げ。スタッフやボランティア、東京勢も含めて、30人近くが座敷にぎっしり。串焼きのウマい店だったが、ここも空調がなく、空気がよどむ。手前の部屋が風が入ってくるので、そっちに移動して飲む。武田さんが今日の一箱を実現するための手続きについて、この秋広島で一箱を開催する財津さんにレクチャーしている。こういう光景を見ていると、一箱古本市の輪が確実につながっていっていることを実感した。


11時ごろにお開きになるが、7、8人が残る。ぼくはややグロッキー気味なので、一足先に店を出ると、路地でジュンコちゃんとめぐたんがはしゃいでいた。若いって(幼いって)スバラシイ……。〈マゼラン〉の高熊さんに前野家の近くまで送ってもらう。シャワーを浴びていると、久美子さんと酔っぱらった居残り組が帰ってきた。居間に5人+めぐたんが川の字で眠り、ぼくは奥の座敷に一人で寝させてもらう(いびき対策だったのかも……)。村上春樹1Q84』下巻を二章ほど読んでから、眠りにつく。