たまには映画を3本

朝8時起き。《つばさ》を観てから、仕事場へ。一箱古本市の後処理のメールをいろいろ。10時に出て、渋谷へ。〈シネマヴェーラ渋谷〉で緑魔子特集。関川秀雄監督《かも》(1965)は、梅宮辰夫が女を転がして儲ける銀座のクラブのマネージャーをクールに演じる。天真爛漫な緑魔子をアパートに連れ込み、腹を殴って失神させるというストレートさが凄い。もうちょっとソフトなやり方あったんじゃ……。緑魔子は、潮健児に川原で強姦され性病を移されるなど、さんざんな扱われ方だが、どんどん強くなっていく。若いホステス役の大原麗子がすごくコケティッシュ(でもバカそう)。ラストで、梅宮が「数寄屋橋の裏の小学校の屋上」に呼び出される(梅宮が「オレ、あそこの出身」というのが笑わせる)が、本当に泰明小学校の屋上でロケしたのではなくても、下の高速道路の位置から、数寄屋橋近くのビルであることが判る。こういうところに意外と手を抜いていない、いい映画だった。もう一本、谷口千吉監督《カモとねぎ》(1968)は、集団詐欺もの。森雅之のボス、肉体労働専門の高島忠夫、メカに強い砂塚秀夫、そこに紛れ込んだ緑魔子というチーム。砂塚の大仰な演技が楽しい。


館を出ると、雨が降っている。コートのフードをかぶって、地下鉄の駅まで。半蔵門線で神保町。すずらん通りに出ると、晩鮭亭さんにばったり会う。これからNEGIさんのところでの岡崎ビデオ上映会に向かうとのコト。〈神保町シアター〉でチケットを買い、〈キッチンジロー〉でハヤシライスを食べてから、〈三省堂書店〉で『ユリイカ』のクリント・イーストウッド特集。神保町シアターは、今日もほぼ満席。野村芳太郎監督《モダン道中 その恋待ったなし》(1958)。始まって佐田啓二が映った瞬間、一度観ていることに気づく。どこで観たんだっけ? この映画はロードムービーでありながら、映画の「お約束」を徹底的に茶化している。云ってみれば、テレビドラマの《33分探偵》を50年先取りしているワケだ。あちこちに現われる桂小金治がイイ。


観終わって外に出ると、雨が激しくなっている。〈座・高円寺〉のイベントの終わりだけ覗くつもりだったが、諦める。外に出るも激しく濡れてしまい、先のコンビにで傘を買う。〈ブーザンゴ〉に寄ると、客席は満員。今夜、フリーペーパー展の撤収予定だったが、この雨なので延期することにして、箱詰めを羽毛田さんにお願いする。配布用のフリーペーパーはかなり少なくなったが、残ったのはしばらくブーザンゴに置いてもらうことになった。夜は、芸人どっきり番組を観つつ、一箱古本市2日目の日記を書く。やたら時間がかかってしまった。


新潮社から『松本清張傑作選』が二冊届く(各1600円)。浅田次郎セレクションは「悪党たちの懺悔録」、海堂尊セレクションは「暗闇に嗤うドクター」。そのあとは、原武史佐藤優宮部みゆき桐野夏生が選者となる。どの巻も選者の個性を生かしたセレクトになっているようで、楽しみ。清張の短篇はほかの短篇と組み合わせて読むと、かなり印象が変わるので、アンソロジーに向いていると思う。