「ケチ、アイス、光クラブ」

8時起き。《つばさ》を観てから、仕事場へ。『本当にあった禁断愛』の原稿を書く。そのあと、一箱古本市に出す本の値付けなど。エエ市に戻る旬公を見送って、神保町へ。〈書泉グランデ〉で、倉阪鬼一郎『遠い旋律、草原の光』(早川書房)、北原尚彦『古本買いまくり漫遊記』(本の雑誌社)、鈴木鱸生『向島墨提夜話 ヨミガエル明治大正ノ下町』(栞文庫)、『ハヤカワミステリマガジン』を買う。久しぶりに『HMM』を買ったのは、ドナルド・E・ウェストレイク追悼特集ともうひとつ読みたい記事があったから。


ディスクユニオン〉で、鈴木博文[metrotro-on-line 2009 february]を買う。サイトとライブ会場での限定発売だが、ココに入っていた。〈高岡書店〉を覗くが、めぼしい新刊はなにもなく、〈すずらん堂〉に回ると、唐沢なをき『まんが極道』第3巻(エンターブレイン)と松本正彦『劇画バカたち!!』(青林工藝舎)が見つかる。最近の高岡は、秋葉原あたりに客をとられたせいか、明らかにパワーダウンしており、すずらん堂のほうが活気がある。


東京堂書店〉で『キネマ旬報』(クリント・イーストウッドグラン・トリノ》特集)と、塩山芳明『出版奈落の断末魔』の書評が載っている『週刊読書人』を買い、〈神保町シアター〉へ。待ち時間に『週刊読書人』の堀切直人さんによる書評を読む。意図的なのか、サブタイトルの「エロ漫画の黄金時代」がタイトルとして採られている。この本の反権威的な部分を大いに評価しているも、末尾で、左翼の尻尾がついていることや福田和也にヘイコラしてる点を批判。でも、塩山さんは「自分に利益をもたらす者には目に見えるようにヘイコラし、しかるのち別の機会にぶったたく」という点では分け隔てなく公平なお方であるのだった。


今日の映画は、川島雄三監督《明日は月給日》(1952)。前に一度観ている。川島には珍しく正義感にあふれた明朗な作品。とはいえ、桂小金治の落語のシーンがやたらと長かったりする特徴はある。父親役の日守新一の深刻になり過ぎない演技が素晴らしい。息子の高橋貞二が弟に借金を断られ、「ケチ、アイス、光クラブ」と叫ぶシーンがある。「光クラブ」は、この数年前に東大生の山崎晃嗣が金貸し業を始めて多額の資金を集めるが失敗し、自殺した事件を指す。「アイス」は高利貸し=氷菓子という意味で、『隠語大事典』(皓星社)によれば、1917年に初出があり、1920〜30年代に普及しているようだ。戦後でもよく使ったのか、それとも、古めかして云ったセリフなのか。


西日暮里に戻り、原稿を1本読んでからウチへ帰る。晩飯は高菜チャーハン。テレビで録画していた映画《宇宙戦争》を、原稿を読みながら眺めるが、あんまりオモシロくない。リアルな死体を出せばイイってもんじゃないよ。