『少年少女乱歩手帳』の次に来るもの

先日、「名張人外境」(http://www.e-net.or.jp/user/stako/)の中相作さんから『少年少女乱歩手帳』(名張ロータリークラブ)というフリーペーパーを送っていただいた。A3判両面・カラーで、折ると手帳サイズになる。名張で生まれた乱歩について、その略歴、作品、ふるさと名張との関わりなどを判りやすく解説。少年少女向けなのでルビがついているが、乱歩の随筆「ふるさと発見記」を注釈付きで再録するなど、レベルの高い内容になっている。執筆者名はないが、明らかに中さんの仕事だ。乱歩ファンなら必携でしょう、コレは。数十部いただいたので、とりあえず、乱歩にゆかりの深い千駄木〈古書ほうろう〉に10部ほど置いてあります。近々、もうひとつのゆかりの地・池袋の〈古書往来座〉にも持っていく予定。また、11月の「ブックオカ」でのフリーペーパー展にも急遽ご参加いただくことになりました。


その中さんに『積んでは崩し』をお送りしたところ、サイトでご紹介いただいた(「人外境主人伝言」の8月20日の項)。

けものみち文庫の創刊を飾る『積んでは崩し』は南陀楼綾繁さんが十年ぶりに手がけられたミニコミとのことで、なんとなくわかるような気がします。何がわかるのか。おそらく虫が疼いたということではないのかな、ということがわかります。退屈の虫が疼くのは旗本退屈男ですけれど、活字というか出版というか編集というか、そういった方面の虫、あるいはミニコミの虫といいましょうか、とにかくそういった虫というのもまたたしかにこの地上に、というかこの地上に生きているある種の人間の心のなかに棲息していて、それが何かのきっかけで疼き始めてしまった結果がけものみち文庫なのではないかと推測される次第です。


その文に続けて、「どうやら私の心のなかにもそういう虫が一匹いるようで、もうずいぶん長いことじっと静かにしていてくれたのですが、この『積んでは崩し』を眼にしたとたん、不意にずきずきうずうずきりきりと疼き始めたのだとお思いください」とある。中さんは最近、長年嘱託として関わってきた名張市図書館から離れたそうだ(さぞ無念だったろうと拝察する)が、次にナニをおやりになるか、注目しているヒトは多い。その中さんの「虫」をうずかせるのに、ぼくのミニコミが一役買ったとしたらウレシイ。


今日も雨。4時前に出て、千代田線で表参道。〈ビリケンギャラリー〉でタイガー立石展を見る。絵本『とらのゆめ』がビリケン出版から復刻されたので、虎の鉛筆画やペン画を展示している。名前に使うだけあって、ホントに虎が好きだったらしい。『虎の巻』というタイトルの本を2冊も出しているし。ガラスケースには、単行本や展覧会のパンフなどが収められている。オーナーの三原さんのコレクション。「南陀楼さんも集めてるんでしょ?」と云われるが、かないっこありませんよ! 展覧会に合わせて、タイガー立石の虎スタンプがつくられており、買った本やハガキに押すコトができる。31日(日)までなので、ぜひ行ってみて下さい。なお、埼玉県立近代美術館でも、10月19日まで、「立石大河亞のワンダーランド」という展示が行なわれている。


ビリケンでは、9月20日〜17日に「あがた森魚 惑星漂流60周年展」(あがたに捧げる作品を展示、ライブもあり)、10月4日〜15日に「茂田井武展」、11月14日〜26日に「上野茂都展」、11月28日〜12月12日に「うらたじゅん展」を楽しみな企画が続く。
http://www.billiken-shokai.co.jp/


渋谷へ。コレで4日連続。こんなに来てるのは初めてだ。センター街の奥に〈ブックオフ〉のでかい看板が。〈クアトロ〉のビルにブックオフが入るというのは、かつての西武文化を知っている身には隔世の感がある。単行本や文庫は2階。広く見えるが、それほどスペースはないのかも。武藤さんか退屈君に「南陀楼さんと向井さんがすれ違えない通路」と云われた単行本の105円コーナーは、たしかに通路が狭い。セドリ屋を滞留させないようにさせるためか?


吉上恭太・智子夫妻とココで落ち合い、上の〈クアトロ〉へ。ブックオフからエスカレーターでクアトロ、というのは、イメージ上の落差が激しい。6時前に着いたが、客の姿はまったく見えない。入場も一番だった。ナカに入ると、フロアの後ろに大きなミキサー卓が置かれていたが、さほど変わったという印象はない。今日のライブはそのリニューアルにともなって空いた時期に組まれたものらしく、客がはなはだしく少ない。われわれは一番前の中央のテーブルに陣取る。クアトロでテーブルが出ているのを見たのは初めて。それでも開演の7時にはそこそこ客が集まる。


今日のライブは「Glamorous Voices」というもので、芳垣安洋(ds)が中心になって、3つのセッションを行なった。まず、芳垣、高良久美子(vib)、曽我大穂(harm, etc)が長いインプロビゼーションを。次に、おおはた雄一(vo,g)と高田漣(g, vo)が中心となってのセッション(ベースに鈴木正人)。そして、ふちがみとふなとのセッション。最後に、高田漣のセッション。他のメンバーは出たり入ったり。芳垣の力まずに、軽く叩くドラムが気持ちいい。船戸博史さんのベースも、いい音でブンブン鳴っていた(後半、なんか音の調子がヘンだったみたいだが)。高田漣のギターは初めて聴いたが、緻密な感じでいい。歌はボーカルというよりはリーディングみたいだった。アンコールに応えて全員出てきたが、まったく打ち合わせがなく、その場でおおはたの曲に決めてやったが、すごいノリだった。「音楽ができあがる現場」を目の当たりにしたかのようだ。渕上さんがコーラスのふりして「池田さん」を歌っていたのが笑えた。


終わると10時だったが、長すぎる感じはなかった。セットチェンジが素早かったこともあるだろうが、出演者の組み合わせや順序がうまくいっていたからだろう。芳垣安洋の企画者としての力はスゴイと思った。


山手線に乗ってから、なんとなくラーメンが食べたくなり、日暮里で降りる。〈馬賊〉に入るとほぼ満員。ギョーザとラーメン。この麺の太さがときどき恋しくなるのだ。日暮里駅を越えて、谷中墓地を通り、三崎坂から団子坂へと歩いて、ウチまで。夜の谷中はじつに静かだ。帰ってテレビを見たら、アフガニスタンNGOペシャワール会」のメンバーが誘拐されたというニュースが。生存情報が錯綜しているらしい。ペシャワール会の事務局長は石風社の福元満治さん。さぞ心配だろう。【8月27日追記】さっき、ネットのニュースで、遺体で発見されたことを知る。合掌。


明日は8時から、千駄木ブーザンゴ〉で恒例「不忍ブックストリートの茶話会」です。今回のお話は、〈アフリカ市場タムタム〉佐久間さんの〈谷根千飲み屋事情〉です。11時ぐらい前やっているので、お気軽にご参加ください。遠方からのお客さんもいらっしゃいます。