20人で浴びる10人の音

夕方、西荻窪へ。女子大通りの中華料理屋で上海焼きそばと野菜スープのセットを食べてから、〈アケタの店〉へ。『ぐるり』の五十嵐さんが先に来ていた。久しぶりに聴く渋谷毅オーケストラ。松本治(tb)、松風鑛一(as)、津上研太(as)、林栄一(as)、峰厚介(ts)、石渡明広(g)、上村勝正(b)、古澤良治郎(ds)というフルメンバー。前半では、ジャコ・パストリアスの曲がとくにイイ。


後半の冒頭では、古澤さんに代わり外山明がドラムに入る。相変わらず、定型パターンというのがない叩き方で、前半と一気に雰囲気が変わる。ほかのメンバーも、笑いながら外山のドラムを見ていた。3曲目からは古澤に戻るが、外山はそのまま残って、ドラムセットの外から空いているシンバルやタムをたたく。親が仕事しているとちょっかいを出す子どものようで、楽しい。いつもと違って10人ということもあったのか、終わりの数曲での盛り上がりは凄まじかった。今日の曲はぜんぶライブで聴いたことがあるのだが、それでも毎回新鮮に聴こえるのが、渋谷オーケストラのスゴイところだ。この店としては満員だったが、それでもたった20人だけでこの日のこの10人の音を浴びるのは、モッタイナイという気がした。


終わって、渋谷さんとちょっと話す。もうひとつの素晴らしいグループである「エッセンシャル・エリントン」のサードアルバムが、10月に発売されるという。今回は全曲、清水秀子さんのボーカル入りだそうで、聴くのが楽しみだ。


西日暮里に戻ると11時半。ちょうどレイトショーで映画を観てきた旬公と、マンションの入り口で一緒になった。千駄木に戻り、洗濯しながら、テレビ東京で録画した映画《悪女の構図》(1989・米)を観る。なんと、《ミスト》のフランク・ダラボンの初監督作品(テレビ映画だが)だった。途中から先の展開が読めてしまうので、どうも盛り上がらず。


先日の茶話会で、東京国際ブックフェアについての私見を話したのだが、『未来』8月号で西谷能英社長もブックフェアについての「釈然としない思い」を述べている。興味深いのは、「最近の読者は図書目録のたぐいをあまり欲しがらない感じがする」ということ。版元単位でブースを出しているのにもかかわらず、参加者は目の前に並んでいる本を割引で買うことにしか気が行っていないようなのだ。ネットで調べれば済むので、図書目録の必要性があまり感じられなくなっているのもたしかだ。