この仕事をしていてよかった

もう2月だ。積み残しがさらに積み重なる1月であった。3日間、部屋にこもっての格闘の末、『yom yom』の「小説検定」、なんとか出来上がる。今回のテーマは、(自分から云い出したとはいえ)普段の読書からは縁遠いものだったので、本を集めるのに1ヶ月、積みあがった本を読むのに1ヶ月かかった。問題をつくり始めてからは、足りない部分が見えてきて、もう一度書店に行くことになる。


問題づくりを念頭において、本を読むのは全然楽しくない。積みあがっている本を目に入れないようにして、手近な本に逃げる日も多かった。読んだものを頭の中で解体・再構成してクイズをつくるのは、正直云って苦痛だ。なるべく多くの読者が挑戦できるようにするために、自分の好みは極力抑えないといけない(それでも難しい、マニアックという声が多いけど)。


だけど、普段読まない本を読んで、「この作家、こんなに上手かったのか」「食わず嫌いでバカにしていてスマン」と思わされることも多い。仕事で読んでいることを忘れて没頭するときもある。今回は全体の6割が初読の作品であり、その分、初めて読んで感心する作家が多かった。作品名は伏せるが、昨夜も上下巻の小説を、夜中までかかって一気に読んだ。それらの作家については、今後、ほかの作品も読むことになるだろう。こういう出会いがあると、この仕事を続けていてよかったと感じる。


困るのは、面白い小説=問題をつくりやすい小説ではないコトだ。せっかくイイ作品なのになあと思っても、どうしても設問をひねりだすことができず、捨ててしまったものが結構ある。ただ、ぼくはこの「小説検定」を「クイズの形式をしたブックガイド」のつもりでつくっているので、どうしても紹介したい作品については、ちょっとばかり無理筋の設問であっても、なるべく入れるようにしている。


というワケで、しばらく先ですが、2月末に『yom yom』第6号が出たら、手に取ってください。それにしても、もう6号かぁ。こないだ創刊したばかりのような気がするけど。


昨日、〈往来堂書店〉で買った、山上たつひこ能登の白クマうらみのはり手』(小学館クリエイティブ)を読む、江口寿史監修の「山上たつひこ撰集」(全5巻予定)の第1巻。編集はフリースタイルの吉田保さん。一時期、古本屋でこのヒトの短篇集を集めていたので、半分以上は読んでいた。解説で江口が書くように、「漫画の単行本が現在のように、装丁や構成を含めたパッケージングに気をつかい出したのはそう古いことではない」。『がきデカ』『喜劇新思想大系』など何度も復刊された作品を除けば、多くの山上たつひこ作品は「出しっぱなし。作品の重複はあたりまえの散乱状態」だった。それを踏まえたうえで、こういう選集が出るのはウレシイ。できれば、最終配本には山上たつひこの作品リストを入れてほしい。もう一冊は、磯谷友紀本屋の森のあかり』第2巻(講談社)。相変わらず、メルヘンな書店像です。この店の副店長は「一月に300冊読む」そうです。福田和也か。