『編集者 国木田独歩の時代』を読むとヨコジュンを読み返したくなる

朝9時起き。10時に新宿の京王百貨店の古本市へ。久しぶりに見る大会場での古書展で、ぜんぶ見るのにえらく時間がかかった。〈オヨヨ書林〉の棚で、けっこう珍しい新書や雑誌を200〜500円で買えたのが収穫。中央線に乗って、三鷹へ。〈ハルピン〉で、いつものごとく店主と店員が中国語でもめている(としか思えない激烈なやり取り)のを聞きつつ、鮭餃子セットを食べる。〈上々堂〉で2月分の売り上げを受け取り、何冊か買う。次に西荻窪へ。〈音羽館〉でも数冊。荷物が重くなり、歩いているだけで腰が痛くなってきた。荻窪の〈ささま書店〉に寄るつもりだったが、断念して西日暮里に帰る。古本屋めぐりには体力が必要と痛感する。


新書館から『ウィングス』最新号と、くつきかずや『ネタも休み休み言え!』が届く。後者は昨日買ってしまった。そういえば『ウンポコ』も同日発売のはず。近所の書店にはないので、綾瀬まで足を伸ばして、駅前の書店で買う。久世番子「番線」に、一箱古本市が取り上げられているのだ。久世さんが自身で店主を体験したことから、面白いエピソードが多数あり。一箱関係者は必読ですぞ。南陀楼も旬公も登場させてもらっている。嬉しいなあ。番子さん、ありがとうございます。ちなみに、この回で「番線」は連載終了。来年4月には単行本が刊行予定だ。


夜、黒岩比佐子『編集者 国木田独歩の時代』(角川選書)を読了。以前、『風俗画報』のCD-ROM版を編集したときに、同時代のグラフ雑誌のことを少しだけ調べたことがあり、独歩が『近時画報』を編集・発行していたことは知っていた。しかし、編集者としての独歩がこんなに才能があったとは。野口男三郎『獄中の告白』は原本を読んだこともあるが、それが独歩社から刊行されていたとは気づかなかった。また、独歩の周りに集まる人たちも、画家の小杉未醒をはじめ、窪田空穂、坂本紅蓮洞、武林夢想庵など、一癖も二癖もある連中ばかり。読んでいくうちにさまざまな連想が働き、本書の参考文献やそこに挙がってない本を引っ張り出したくなってくる。とくに、押川春浪中沢臨川吉岡信敬(野次将軍)ら「天狗倶楽部」に関する部分では、横田順彌の春浪の評伝や明治SF小説を読み返したくなってしまった。いま手元にないのだが、横田さんの小説のどれかに、近時画報社の編集部が出てくる場面があったような気が……。6章では謎の人物の解明も行なわれており、黒岩さんが古書展に精勤して集めてきた資料を最大限に活用されている様子が伺われる。買うだけ買って必要なときには出てこないことの繰り返しの、己の古本買いを省みて忸怩たる思いがした。