初めての田端

朝8時起き。しょぼしょぼと雨が降っている。歩いて西日暮里へ。「ウィーワセ」に出す前にと、片野ゆか『ダイエットがやめられない 日本人のカラダを追跡する』(新潮社)を読む。マネキンの体型が時代によって変化してきたことなどが、丹念な取材に基づいて書かれている。ただ、ぼくが知りたかった、「いつから太っていることが罪悪になったのか」という疑問への答えは明確ではなかった。


雨が止んだので、取材で田端を回るという旬公に付き合って出かける。〈がらんす〉でハンバーグシチューを食べ、何カ所か回る。前は何度も通っていたが入りづらかった、地図専門古書店の〈忠敬堂〉に初めて。ご主人から反町茂雄のハナシを聞く。産経新聞社会部編『東京風土図』全4巻(現代教養文庫)を1500円で買う。1962年の時点での、東京地誌。ぞんざいなイラストマップに味が。あと、〈田端文士村記念館〉にも初めて入る。近所に住んでいても、こういう機会がないとナカナカ来ない。田端商店街の一部が更地になって、大掛かりな工事をやっている。


旬公と別れて、本駒込図書館へ。資料を探した後、閲覧席で、持参した戸板康二『街の背番号』(青蛙房、1958)を読む。『ちょっといい話』のモノ版とでもいうべき小コラム集。コラムごとに番号が振られていて(それで「街の背番号」というわけ)、単行本ではジャンル別に分類されている。東京新聞が発行していた『週刊東京』で連載。戸板の新しもの好き・珍しいもの好きな性格がよく生かされている。「減食療法」というコラムには、「きいてみると、最近ふとって苦しいので、減食法を試みているというのだ。ダイエットと称するシステムで、二週間のあいだ、与えられた処方に従って食事を制限する」とある。先の片野著では「ダイエット」という言葉が使われだしたのは1970年代半ば以降で、それ以前は「痩身術」とか「節食法」と云われていたとあった。


もうひとつ。「変わつた店名」には、「池袋にシネマセレサ、シネマロサという映画館がある。去年一世を風靡した『セレサ・ローサ』の名残りだろうが、段々何故こういう名前をつけたか分らなくなるだろう」とある。どちらの映画館も学生のときに通ったが、もちろん意味は知らなかった。「セレサ・ローサ」をネット検索すると、「マンボの王様」ことペレス・プラードのヒット曲だった。なるほど。『街の背番号』は、岡村不二装丁。所蔵本は函が少し壊れている。この本も「ウィーワセ」に明日追加します。


図書館を出ると雨。喫茶店で雨宿りしてから、〈ときわ食堂〉でチューハイを飲んでウチに帰る。赤井三尋『翳りゆく夏』(講談社文庫)読了。地味だけどしっかり書かれている。近年の江戸川乱歩受賞作のナカではおもしろい方だろう。晩飯はトマトソースのパスタ。