世界が100人の旬公だけの村だったら大ヒット間違いなしの映画

8時起き。寒いので、布団から出るのがツライ。仕事場に置いてある本棚を、高野ひろしさんが引き取りに来る。そのあと、急いで『SPA!』の原稿を書く。昼飯はラーメンをつくって食べる


2時過ぎに出て、山手線で東京駅へ。地下街の〈八重洲古書館〉に寄ろうとしたが、今年夏に地下街の中で移転していたのだった。〈八重洲ブックセンター〉と徒歩1分の近さなのがヨカッタのにぃ。〈八重洲ブックセンター〉の1階で、田坂憲二『文学全集の黄金時代 河出書房の1960年代』(和泉書院)、黒岩比佐子『編集者 国木田独歩の時代』(角川選書)、同『食育のススメ』(文春新書)、『論座』1月号を買う。『論座』の2007年ベスト本アンケートで、木村衣有子さんが『世界屠畜紀行』と『苔と歩く』を挙げている。あ、清水良典氏も『世界屠畜紀行』を挙げてるなあ。それから5階の文庫売り場で、「小説検定」の資料を数冊買う。


京橋の「映画美学校」に行くのにちょうどいい時間だったのだが、いざ京橋に出ても場所が判らずしばらく迷う。やっとそのビルに着いて地下に降りるが、どう見ても試写室はありそうにない。1階に戻り、映画美学校の1階(別の映画の試写をやっている)で訊いたら、受付の姉ちゃんが「ビルを出て左の階段を下りろ」というのでその通りにしたら、元に戻ってしまった。ムカつきながらまた地上に出て、反対側にようやく地下試写室への入り口を発見。古い造りのビルなので、館内が迷路みたいに複雑なのだった。


今日観に来たのは、パールフィ・ジョルジュ監督《タクシデルミア ある剥製師の遺言》(2006・ハンガリー)。使用人としてこき使われる一兵士の祖父、大食い選手権に出場する父、剥製師になった子の3代の物語なのだが、全編グロテスクな描写のオンパレード。屠畜、獣姦、デブ、剥製という、旬公が大喜びしそうな要素が詰め込まれているが、彼女がもっとも嫌いなゲロも頻出する。ぼくが嫌いな生き物も1カット出てくる。人間の剥製をつくるハナシだと聞いて、勘違いしたゴスっ娘が観に来るかもしれないが、この監督は死体の美しさを描こうなんてしていない。共産主義社会の下層で本能のままに生きる人間をクールに描いているだけだ。前半の汚さはすごい(性交シーンのモザイクが露骨で笑えた)。ちっとも美しくはないが、相当笑えるのはたしか。民俗的な旋律とロックが融合した音楽もイイ。東京では2008年3月から〈イメージフォーラム〉で公開される。配給は《いのちの食べかた》の新日本映画社だ。世界が100人の旬公だけの村だったら、大ヒット間違いなしの映画なのだが……。