カナブンで古書店の資料に出会う

昨日は暑さのため、一日、ほとんどナニもできず。


今日は朝8時起き。いったん西日暮里に行き、旬公と出かける。東海道線で横浜、みなとみらい線元町・中華街駅。港が見える丘公園への急勾配を汗流して登る。〈神奈川県立近代文学館〉へ。神奈川新聞の仕事で旬公が調査するのにくっついてきて、「尾崎一雄文庫」の資料を見る。事前に資料名を把握してなかったので、出てくるのに時間がかかる。その間に、読みかけの林哲夫『古本屋を怒らせる方法』(白水社)を読み終わる。いまいる「カナブン」のこともよく出てくるので、おもしろい。いろいろ興味深いが、ひとつだけ。


「正義と微笑」で、太宰治『正義と微笑』が大阪の弘文社から昭和22年2月に、東京の永晃社から同年11月に出た、とある。永晃社といえば、先日下鴨で入手した、高見順神聖受胎』(昭和23年3月)の版元ではないか。林さんの文章には、『正義と微笑』は「青春文庫3」として出たとあるが、ぼくの持っている久米正雄『嘆きの市』(昭和23年11月)には「青春叢書」とある(国会図書館のデータベースでは、同年刊の深田久弥『知と愛』も「青春叢書」だ)。ちなみに、林文で永晃社の住所が「中央区入船町二ノ三」とあるが、架蔵の二冊では、この住所は印刷所の永井印刷工業株式会社のもの。では、永晃社はといえば、『神聖受胎』では「世田谷区下代田町九二番地」、『嘆きの市』では「世田谷区羽根木町一八三七番地」とある。永晃社の社長は永井直保とあるので、永井印刷は同族会社なのかもしれない。まあ、ぼくの興味は『正義と微笑』の装幀者が、花森安治かどうか、という点のみ。カナブンにはこの版はないので、どこかで確認したい。


やっと資料が出てくる。尾崎一雄宛の書簡や、尾崎所蔵の雑誌など。そのなかで、ある古本屋に関する資料がスゴかった。この資料は、冊子版の目録には載っているが、OPACにはまだ反映されていないもの。わざわざ来てよかったと思えるものだった。『古書月報』連載(1回休んでしまった)の次号は、この古書店で行こうと決める。旬公が終わるのを待ち、展示室で「佐藤さとる コロボックル物語展」を見る。デビュー前の草稿を綴じた本に感動する。『誰も知らない小さな国』の私家版(1959年)の表紙イラストは、永島慎二の絵に似ているけど別人だろうなあ。この展覧会は9月30日までやっているので、コロボックル物語のファンは行くべし。


横浜市の街巡りバス(100円)で下まで降りる。中華街の台湾料理の〈秀味園〉で、つまみ(豚耳と豆腐の煮物)と魚団子スープ、魯肉飯。ココで食べると、いかにも「食った!」という気になる。繊細さとは無縁な豪快な味。中華街駅から東横線直通に乗り、終点の渋谷まで寝る。〈ブックファースト〉で『クイックジャパン』リニューアル号を買う。森山編集長のときとはかなり変わった。いまのところは濃い要素が全部落ちてしまったように見えるが、ホントのイミでのリニューアルは次号だろうから、そこで新しい編集長なりの濃さが出せるかどうかが、ポイントだろう。〈ビックカメラ〉でコピー用紙を買い、西日暮里に帰ってくる。原稿書かねばならないが進まず、〈古書ほうろう〉に寄って千駄木に帰る。


8月16日付けの東京スポーツ、「お宝スーパースター列伝」で、南陀楼が三野輪幸節さんの「幸節豆本」を紹介しています。「出版界でカルト的な人気を誇る」(どこで?)とか、「江戸時代に実在した俳人」(戯作者っていいましたよね?)とか、微妙な間違いが多いんですが。「1冊100円」というのも安く出ればの話で、そもそも部数が多くないはずだから入手はけっこう難しいかも(こないだ〈ガケ書房〉にダブリを2冊出したら、大井さんがすぐに買ってくれた)。あと、「まめ本」という表記も謎だなあ。「生活日報」さん(http://d.hatena.ne.jp/mashco/20070816)が書いてた通り、東スポで「紙媒体の未来」を訊かれるとは思わなかった。


ガケ書房〉の「下亀」は明日(17日)が最終日。古本ソムリエを悔しがらせるため、かつ、本が大量に戻ってくるのを防ぐため、みなさん「古本けものみち」から本を買ってくださいネ。