鼻水夫が《BSブックレビュー》に出ます

朝6時半起き。ここ数日、朝が涼しい。塩尻市の〈古田晃記念館〉より、晒名昇編『古田晃記念館資料集』(2003)と館のパンフレットが届く。前者は先日精興社に行ったときに、原本が並んでいる棚で見つけて驚いたもの。筑摩書房の創業者である古田晃に宛てた書簡(井伏鱒二臼井吉見上林暁中野重治ほか)と古田からの書簡を収録している。口絵には渋川驍「柴笛」の血染めの原稿も掲載されている。昭和20年8月、古田はこの原稿を伊那の印刷所に入れるために乗った松本行きの列車の中で、米軍機の機銃掃射を受けた。この血は隣にいた男が撃たれて即死したときに飛び散ったものである。和田芳恵の『筑摩書房の三十年』で書かれた、筑摩書房創業時の印象的なエピソードだ。


資料集が2500円でパンフが500円。さっそく送金しようと、現金書留の宛名を書こうとしたら、先方の郵便番号がドコにも書いてない。ネットで検索したが、塩尻市の郵便番号はけっこう複雑だった。郵送させるのに、郵便番号を書かないのはどういうつもりなのか。今回に限らず、住所を尋ねているのに郵便番号を書かないヒトや、会社のサイトで郵便番号が記載されてないケースがきわめて多い。宅急便でもメール便でも郵便番号の記載が義務付けられているのだから、かならず書いてほしい。7ケタになってから何年経つと思ってるのか。


12時半に出て、渋谷へ。NHKの西口玄関で、《BSブックレビュー》のヒトと待ち合わせ。7月22日(日)放映予定のこの番組に、書評ゲストとして出るコトになったのだ。テレビ出演といえば、「映ってしまった」という状態に近い《情熱大陸》以外では、『本とコンピュータ』時代に大日本印刷が制作していたスカパーかなにかの番組に、コメンテーターとして出たことがあるだけだ。韓国のネット事情を紹介するということで、ヘンなカッコをさせられてソウルの風景をバックに喋らされたのだった。


他のゲストは詩人の蜂飼耳さんと、国立情報研究所の高野明彦さん。蜂飼さんははじめてだが、高野さんは「じんぼう」などの取材でなんどかお会いしているので少しは気がラクだ。司会は作家の藤沢周さんと中江有里さん。ぼくが紹介するのは、いち押しが『梶山季之と月刊「噂」』(松籟社)で、あとの2冊が、カラスヤサトシカラスヤサトシ』(講談社)と宮田昇『新編 戦後翻訳風雲録』(みすず書房)だ。最初のコメントで思いっきりいい間違い、カメラを止めさせてしまったほかは、どうにかこうにか、最後まで終えることができた。しかし、コメントを求められたときに、「たとえば◎◎が」とか「◎年頃」の「◎」が一瞬出てこなくて、かといって、急にメモを見るわけにもいかず、しどろもどろになった箇所、多数。テレビは本でいう「校正」の過程がなく、喋ったことがそのまま流れてしまうからコワイなあ。あと、喋っているうちに鼻水が垂れてきそうで困った。二番組続けて、鼻水たらしたら、みんなになんと云われるか……。終わって控え室に戻ると、特集ゲストの平山夢明さんがいらした。顔を見るとスグ、「トート売れましたか?」とおっしゃる。しまった、みんなに売りつける用にトートを持ってくればよかった。


タクシーを出してくれるというので、それに乗って早稲田へ。混んでいてけっこう時間がかかる。第二回「戸塚市場古本市」を覗く。買わなかったけど、会場としてはステキすぎる。「早稲田古本村通信」の次回で取り上げよう。〈古書現世〉に行き、セドローくんと立ち話。彼のブログで書かれていたことで、いくつか教えてもらう。そのあと、早稲田駅のほうに歩いていったら、〈ふぉっくす舎〉のNEGIさんとバッタリ会う。〈シャノアール〉に入っていろいろ話す。NEGIさんの職場のハナシ、おもしろい。


昼飯食べてなかったことに気づき、〈メルシー〉でラーメンを食べる。東西線で阿佐ヶ谷へ。南に歩き、〈書原〉へ。久米田康治さよなら絶望先生』第9巻(講談社)と『spectator』の新しい号(特集「日本放浪術」)を買う。久米田康治講談社漫画賞を取り、アニメもスタートしたのに、あいかわらずネガティヴだ。アニメの放送がU局(チバテレビとか)なことを、さっそくネタにしてた。


ココで、ライターの木村衣有子さんとぼくの友だちの松井貴子さんと待ち合わせ。阿佐ヶ谷に引っ越してきて間がない木村さんに、阿佐ヶ谷歴の長い松井さんを紹介しようという趣向。新高円寺駅近くの〈屯〉という焼き鳥屋へ。1階は満員だが、2階は静かだった。焼き鳥と焼きとんの両方を出す店。木村さんが盛岡で買ってきてくれた、立原道造『盛岡ノート』(東山堂)を受け取る。新しい『てくり』で紹介されていた、立原が盛岡に旅行したときのノートを一冊にまとめたもので、生前はもちろん未刊。1988年に盛岡で刊行された。本書はその再刊だ。A6判(?)で段ボールの函がついている。並装だけど、ハードカバー・背継ぎ表紙の雰囲気を出そうとしている。本文の組版も端正だ。これで933円(本体)は安い。「Yahooブックス」(http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31846831)などで買えるようだ。


ぼくが阿佐ヶ谷会本のカバーと一部抜きを出すと、木村さんもこんど祥伝社から出す新刊『もうひとつ別の東京 〜ひそかに愛し、静かに訪ねる55景』のカバーと一部抜きを取り出すという具合に、いろいろシンクロして話が盛り上がった。バッグから次々とネタを取り出すところは、ぼくと似てるかもしれない。ぼくがブログで紹介した『フリーという生き方』も読んでいて、同書のいいところ、惜しかったところを語り合う。BSブックレビューで思うように話せなかったことを、居酒屋で取り返してるみたいな按配だった。


11時に解散し、新高円寺から丸の内線に乗る。国会議事堂で千代田線に乗り換えて、西日暮里に帰ると12時すぎていた。一日動いていたから、眠いし、疲れた。千駄木に帰って、すぐ寝る。