丸尾末広の『パノラマ島綺譚』はスゲエ

午前中、打ち合わせのあとで、神保町の書店を回る。『コミックビーム』7月号が出ていたので、買って帰る。今号から新連載で、丸尾末広江戸川乱歩の『パノラマ島綺譚』をマンガ化するのだった。丸尾作品のいい読者とはいえないのだが、今回は、表紙と扉のカラーから引き込まれて読んでしまった。墓場のシーンなんて最高。ところで、表紙などで作品名に「ぱのらまとうきだん」とルビが振られていて、あれ? と思う。「綺譚」は「きたん」と読むのがフツーだろう。手元の乱歩書誌には、作品名に振り仮名は振られていなかった。そこで検索してみると、担当者の日記を見つけた。こうある。

乱歩の「パノラマ島」には、「綺譚」「綺談」「奇談」などの表記が、時期や版元の違いで混在しています(ちなみに、読みはすべて「きだん」)。
丸尾さんも当初は、「奇談」という、もっとも流通していて、理解しやすい表記をなさっていたのですが、自分が初出の「新青年」からの推移を追ってみると、なかなかに複雑。結局、丸尾さんと話し合って、現在最新版と思われる光文社文庫版全集に準じることといたしました。
推移の詳細も、上記文庫の解題に詳しいですが、我々が決定した一番大きな理由は、乱歩自身が「貼雑年譜」に自筆で「綺譚」と表記している、という事実でした。


なるほど。光文社文庫版全集は解題が充実していると聞いているが、まだ手にしていなかった。見てみるか。


小説すばる』7月号の特集「本屋さん大好き!!」という特集で、「本屋さんになりたい」という記事を書きました。いかにもベタな特集のベタなテーマだけど、なるべく新しい切り口でいこうと頑張ったつもりです。森岡書店、バサラブックス海月書林、高円寺書林、ブックギャラリーポポタムの5店と、書店コンサルタントの青田恵一さんに取材しています。特集カラー扉には、海月さんたちの写真が。


夕方、神田駅で塩山芳明さん、右文書院の青柳さんと待ち合わせ、〈三州屋〉へ。以前から三人で会うことになっていたのだが、今日たまたま時間が空いたので電話してみたのだ。急な呼び出しに「自分の都合のイイときだけ声かけやがって」とブツブツ云いつつ、けっこうイソイソとやってくる塩山さん。右文書院から塩山さんの本を出す相談。わずか10分で「塩山氏の映画的思考(花田清輝)がにじみでる非映画本」にするコトが決まる。それ以外はひたすらゴシップと悪口。旬公の写真が『週刊現代』に載っているのを見て、「高崎の観音様かと思った」と。塩の字の旬公に対する恋慕はキモチ悪い。そのあと、ガード下の飲み屋に行く。


新幹線で帰る塩山さんらと別れて、〈ブックファースト〉へ。さきほどの「パノラマ島」問題が気にかかり、光文社文庫版の江戸川乱歩全集を見ると、たしかに「ぱのらまとうきだん」になっていた。後学のため、その巻を買っておく。