「入谷コピー文庫」で南陀楼本が出た!

限定15部のみ発行される「入谷コピー文庫」の6月新刊は、南陀楼綾繁『ぼくが食らいついた本たち 1986年の読書ノートから』です。大学1年生の読書ノートから抜粋した記録で、まさにココでしか出せなかった本です。まえがきを以下に載せます。

 中学生から大学生にかけて、ぼくは記録魔だった。日記に読書ノート、購入本メモなどを、大学ノートや日めくりカレンダーなどに書いていた。中断した時期もあるし、時期によって熱の入れ方が違うのだが、読みにくい汚い字で長々と書き込んでいるところは共通している。


 入谷コピー文庫に何か書いてほしいと堀内恭さんから云われたとき、大学1年生のときの読書ノートを復刻しようと思ったのは、こんな個人的な記録が10数部とはいえ出版される機会は今後絶無だと確信を抱いたからであり、少なくともぼくと、ぼくの同世代の本好きにとってはそれなりに意味のある記録だろうと感じたからだ。


 この読書ノートには、一冊に70ページぐらいびっしりと本の感想が書かれている。全文を掲載する意味もないし、紙数に限りがあるので、本のデータはぜんぶ入れ、感想についてはいま読み返してオモシロイものを抜粋して入れた。入力にあたっては、データの形式を多少統一したが、あとは原文のママである。ところどころに注釈を入れた。


 記述は4月1日に開始されており、通し番号が38から始まっているので、1〜3月は別のノートに付けていたと思うが、それは見当たらない。


 読み返して呆れたのは、それぞれの本やあらすじや要旨が延々と書いてあることだ。しかも、誰に読ませるワケでもないのに、書評的な書き方になっている。誰でも思いつく陳腐な感想をエラソウに書いているあたりは、18歳ならではのいきがりだとお笑いいただきたい。


 本のデータのうち、「自」とあるのは自分で購入した本で、「新」は新刊、「古」は古本。どこの古本屋で買ったかが書かれてないのが、ちょっと惜しい。「図」は図書館で、「中」は杉並区中央図書館(荻窪)、「宮」は杉並区宮前図書館、「出」は出雲市立図書館を指す。図書館への依存率がものすごく高かったコトが判る。あと、同じ本を何度も読み返しているのも特徴で、337冊のうち100冊ぐらいは再読ではあるまいか。もっと他にいろいろ読めばよかったのに、と思う反面、食らいつくようにして本を読んでいた時期だったんだなあという気もする。


 入力して気づいたのだが、この時期の文庫本はぺージ数が定価と近い。つまり、1ページ=約1円なのだ。近頃の文庫本を見てみると、1ページ=1・5円から2円ぐらいしている。つまらないことだが、ココにも20年間の変化を感じ取れる。


 以下をご覧になって、ノスタルジーだと笑うのも、自分の18歳のときと比較してあまりにも幼い読書経験だと思われるのも、ご自由にどうぞ。こんな超個人的な記録を公刊してくれた入谷コピー文庫に幸あれ。


5月4日               南陀楼綾繁

というワケで、こんなに徹底的に私的な本ができたのはウレシイです。ぼくの手元に7部届いたので、このブログの読者で先着2名に差し上げます。ただし、いちおう読んで感想を教えてくださいね。メールでお申し込みください。【1時間後に2名から申し込みあったので、締め切ります。】あ、同世代で読書傾向も似ているらしい「ふぉっくす舎」のNEGIさんには、私から差し上げますからね。「コピー文庫」なのでもらったヒトが複製するのは自由ですが、ぼく自身はしばらく増刷しないでおきます。


この本で、入谷コピー文庫は20冊目。2005年5月からの2年間で20冊というのは、非常に立派な出版活動である。発行人の堀内恭さんは、「書評のメルマガ」(毎月2番目に出る号)で「入谷コピー文庫 しみじみ通信」を連載している。ご一読あれ。