半村良に再会する

昨日から読み出した、半村良『戸隠伝説』(河出文庫)を読了。都立中央図書館の閲覧室から始まる出だしが最高で、半村良を思わせる作家・水戸宗衛の仕事場や、そこにやってくる編集者たちなどの日常の中に、非日常が入り込んでいく前半をワクワクしながら読む。しかし、後半に入ると古代の神たちの闘いが延々と続く。『黄金伝説』や『平家伝説』だと、日常と非日常が混じり合いつつ、ラストに向かうのだが、本書は非日常のままで日常に戻ってこない。一時期半村のアシスタントだった清水義範の解説を読むと、主人公の井上にはモデルがいるという。清水より前に半村のアシスタントだった野村芳夫で、彼は『KAWADE夢ムック 半村良』に「半村良小伝」を書いている。知らなかったことがいろいろ判る。この順序で読んで、トクした気分。


そのあと止まらなくなり、ムックをだいたい読んでしまう。河出はこのムックにあわせて、河出文庫で半村作品を再刊するようだ。『戸隠伝説』のあと、『英雄伝説』(出雲が出てくる)、『邪神世界』『半村良短篇コレクション1(仮)』が予定されている。そういえば、中学の頃に半村良の全集が出るという情報があり、出たら定期購読するつもりでいた。講談社から「半村良独演会」というタイトルで予告もされていたが、中止された。いま出たら、がんばって買うのだけど。なお、ファンクラブ「続・半村良のお客になる会」(http://www.hpmix.com/home/hankyaku/)のサイトがあることも知った。


出かけようとしてポストを見たら、イースト・プレスから郵便。グレゴリ青山『ブンブン堂のグレちゃん 大阪古本屋バイト日記』だ。書下ろしや、カラーページ、写真が多い。フリーター時代につくった旅の記録の折本にはビックリ。いい本になってヨカッタが、『彷書月刊』の皆川さんは自社で出せなくて悔しいだろうなあ。ちょっと複雑。


すごく久しぶりに神保町へ行き、〈書泉グランデ〉で戸板康二グリーン車の子供 中村雅楽探偵全集2』(創元推理文庫)を買う。右文書院に行き、先日の海野弘さん供出の古本の残りを分配する。3ヶ所で20万円以上売れたようでヨカッタ。青柳さんと〈穂高〉に行き、いろいろ。進めるべきこと、多し。そのあと秋葉原に出て、京浜東北線で東十条へ。駅で堀切直人さんと久しぶりに会う。この辺に仕事に来ることがあるという。十条方面に歩き、古い商店街の途中にある〈和田屋〉へ。家族でやっている飲み屋で、食べ物のメニューが多く、一皿のボリュームがすごい。一品ごとに取り皿を人数分出してくれるのも珍しい。飲み食いしながら4時間ぐらい、いろいろ話す。右文書院からの堀切コレクションの2冊目のゲラを戻すところで、ノリノリ状態。このパワーを見習わねば。11時ごろに帰ってくる。