堀内誠一からつながっていくもの

朝から原稿にかかるが、うーん、なかなか進まない。困ったなあ。しょうがないので、4時ごろに出かけて、有楽町へ。〈教文館〉で、教が最終日の堀内誠一展覧会を見る。まず6階の〈ナルニア国〉で、『パリからの旅』の原画と、堀内が愛した110人の絵本画家のパネルを見る。堀内が訳したアンドレ・エレの絵本『ノアのはこぶね』(福音館書店)が会場に置いてあったが、これがとてもイイ。大胆なデザインだ。しかし、いまは品切れとのことであった。堀内編の『絵本の世界 110人のイラストレーター』全2巻(福音館書店)が欲しかったが、2冊で15000円なので手が出ず、『ぼくの絵本美術館』と増補版『父の時代私の時代 わがエディトリアル・デザイン史』(いずれもマガジンハウス)を買う。後者の原本は持っているが、未読だった。


9階に上り、堀内の絵本原画の展示会場へ。受付のところに上品な老婦人がお座りだったが、路子夫人だと思う。ぼくは子どものときに絵本を飛ばしていきなり児童文学に行ったので、堀内作の絵本にそんなに思い入れはない。でも、見ていて飽きない。若い女性を引き連れて説明している男性がいる。その豪快な笑い声が聞き覚えがあった。新谷雅弘さんだ。『本とコンピュータ』の大伴昌司特集でお世話になった。久しぶりにご挨拶したが、師匠の展覧会が銀座で開かれたことを喜んでいらした。新谷さんは追悼文集『堀内さん』(堀内事務所)の装丁者でもある。出かけるまでにこの本を引っ張り出してパラパラ見ていたら、先日お会いした吉上恭太さんの追悼文を見つけた。吉上さんのお母さんは翻訳家の内田莉莎子。内田は堀内路子の姉で、つまり、吉上さんにとって堀内誠一は叔父にあたるのだった。内田はこの追悼文集の編集中に亡くなったので、代わりに吉上さんが「誠ちゃん」(吉上さんの家ではこう呼ばれていたという)の思い出を書いている。


いま、内田莉莎子と書いて、アレ? どこかで見た名前だと思ったら、先日、〈ポポタム〉を取材したときに買った、『ロシアのわらべうた』の作者だった(絵は丸木俊)。この本は架空社とポポタムの共同出版で、展覧会もやっている(見られなかったが)。なんだか、いろいろつながってくるなあ。


7時に鶯谷の〈笹乃雪〉へ。近所なので豆腐料理の名店ということは知っているが、行く機会がなかった。今日はココで、旬公と一緒に、サントリーの雑誌『ウイスキーヴォイス』のKさんとお会いするのだった。Kさんは寡黙なカンジのシブイ男性……だと思ったら、ぼくや旬公と同じ1967年生まれだと聞いてビックリ。いろいろ話がはずむ。料理はホントに豆腐づくしだった。


もう一軒ということになり、タクシーで千駄木へ。〈ブーザンゴ〉に行くが、月〜木は8時ラストだった。で、三崎坂を上がったトコロにあるバー〈EAU DE VIE〉へ。ぼくは初めて入った。さっきからどうも腹具合がおかしくなり、トイレに駆け込む。『ウイスキーヴォイス』というより『酒とつまみ』的展開になってきたぞ。でも、『ウイスキーヴォイス』には以前、『酒とつまみ』の大竹さんが編集者として関わっていたのだから、べつにイイのだ。小学校のときに図書館で、吉行淳之介編『酔っ払い読本』全7巻(講談社)を愛読していたハナシをすると、二人に呆れられる。調子に乗って、「アレの表紙を描いた佐々木侃司(かんじ)はもっと評価されるべきだ」などと述べると、Kさんに「佐々木さんはサントリー宣伝部だったんですよ」と教えられる。あとで調べると、ちゃんとサイトがあった(「カンさんのアート館」http://www.kan-art.net/)。2005年に亡くなっているが、まとまった作品集が出てもいいヒトだと思う。


千駄木の駅でKさんと別れて、帰宅。その後も腹具合は不調で、とっとと寝てしまう。