40歳の初日は酒を飲みながら過ぎていった

朝8時起き。今日でついに40歳だ。さまざまに感慨深し。日暮里図書館に行って、リクエストのCDを受け取る。城達也ナレーション入りの[ジェットストリーム]だ。「古本ジェットストリーム」で毎回使うので、コピーしておこうと思いながら、その日が過ぎると返却していた。この[ジェットストリーム]はいろんな種類があるのだが、けっこう人気らしく、どこの図書館でも貸し出し中で焦るコトがある。駅前の立ち食いそばを食べたあと、ウチに帰る。今日の話のネタを仕込み、『進学レーダー』の図書館原稿を書く。


2時半に出て、新宿へ。新宿ゴールデン街で開かれているフリーマーケットを覗く。ゴールデン街ではまだ一度も飲んだコトがなく、小さな店が立ち並ぶ通りを歩くのもほぼ初めて。1番街とか3番街とか小路があるが、ぜんぶの店の前でフリマをやっているわけでもなく、ヒトが集まっているところといないところの差が激しい。場所柄かけっこう本が出ていた。5番街の〈レカン〉という店の前で、塩山芳明さんを発見。エロ漫画の単行本と『奇譚クラブ』、その他の本をシートの上に置いている。「ゼンゼン売れねえよお」と云うので、ご祝儀代わりに、平岡正明『一番電車まで』(ブロンズ社、1977)を買う。800円のところを600円にしてもらう。時間がないので他はほとんど見ずに、新宿駅に向かう。


電車の中で、『一番電車まで』を開くと、「序に代えて 言文行みな一致」という文章に引き込まれる。この本は平岡が目黒のジャズ喫茶で、夜11時から夜中まで、レコードをかけながら話した、その記録だ。なぜそういうコトをやったか、という理由が序文にあるのだが、これがカッコいいんだなあ(引用したいが時間がないので略)。物書きとしての姿勢を教えられたような気がする。あとで調べたら、このとき平岡氏は36歳。いまのぼくより歳下だったのだ。かなわんね。


西荻窪へ。南口の飲み屋街でやっている「昼市」を覗く。〈松屋〉の脇にある細い小路に、エスニック料理屋やバーが集まっていて、月一回、店と路上で昼間から営業しているのだ。今回は古本も売られるというので、行ってみた。〈松屋〉の脇から入ろうとしたら、飲んでいる連中が一杯で通りにくい。ぐるっと回って反対側から入る。企画者の吉祥寺〈バサラブックス〉をはじめ、〈にわとり文庫〉〈すうさい堂〉、アクセスの畠中さん、退屈男君らが出品している。畠中さんのトコロに行くと、開始からビール呑み続けですっかりご機嫌といういつものパターン。退屈君もお客で来た〈ふぉっくす舎〉のNEGIさんも、ほろ酔いだ。「一箱」の名前を借りたからと、バサラの福井さんにビールとカレーをおごっていただく。このまま腰を落ち着けたかったが、古本販売は4時で終了。〈ハンサム食堂〉の2階でのく打ち上げに混ぜてもらう。「一箱古本市」のスタイルが、いろんな場所でいろんなカタチで使われていくのを見るのは、ホントに嬉しい。


音羽館〉に寄ってから、高円寺へ。駅前で爆音がとどろいていると思ったら、杉並区の議員に立候補した松本哉(はじめ)の演説だった(http://www.senkyo.janjan.jp/bin/candidate/profile/profile.php?id=117505)。「法政の貧乏くささを守る会」とそのミニコミはよく知っている。退屈君に「荷風のことを書いていた松本哉さん(故人)って、この松本さんのお父さんですよ」と云われ、びっくり。同じ名前だよなあとは思っていたら、父が息子の名前をペンネームとして使ったのだという。杉並区民だったら文句なく1票入れたのに。


途中で岡崎武志さんとばったり会って、一緒に〈コクテイル〉へ。今日は「オヨちゃんとモクローくんの古本ジェットストリーム vol.4」だ。CD係は『ぐるり』の五十嵐さん。セッティングしていると、お客さんが増えてくる。20人ちょっと入ったか。いつもの調子でスタートするが、すでに酒が回っているせいか、あまり物怖じせずに話せた気がする。オヨちゃんの受け答えも調子いい。休憩を挟み、後半は岡崎さんに出てもらって、「箱」をテーマに話す。本の函で、オモシロイものを三つずつ持ってきたので、それを見せる。ぼくは、京都のミニコミ『MOMO』(プラモデルの箱になっている)、『東京名物食べある記』(函のイラストがイイ)、和田義雄『喫茶半代』(喫茶店のマッチ箱に豆本を収める)、『僕らの科学文庫 力』(ロシア・アヴァンギャルドっぽいイラスト)、そしてドイツ人のペテルンというヒトの手づくり本(函に韓国の紙が使われている)を。岡崎さん、オヨちゃんもさすがにオモシロイ函を出してきた。ちょうどいいカンジで終了。コウノさんから誕生祝だと、京都の〈イノダコーヒ〉の台拭き(?)をいただく。ありがとうございます。


終わって、駅近くの焼き鳥屋の2階で打ち上げ。どんどん増えて15人ぐらいになる。塩山さんや魚雷さん(晶文社からの本が刊行間近)もいる。狩野さんからコクテイル文庫の第2弾をいただく。北村範史写真集『屋上』。第1弾には文句をつけたが、コレはすごくいいなあ。写真も文章も、いいカンジでレイアウトされている。小冊子という形式が生きていると思った。気がつけば12時前になっており、お開きに。〈ぶらじる〉の竹内さんと帰る。ウチに着いたら1時前で、すっかり酔っ払っており、どうやって布団に入ったかの記憶がない。40歳の最初の一日は、こうして過ぎていった。