ペタンクに興じる島の老人たち

8時起き。チェックアウトし、駅前の立ち食いで、またも「きざみうどん」。岡山まで鈍行で行けないかと時刻表を見るが、ムリそうなので、新幹線にする。新神戸から岡山まで。瀬戸内海線に乗り換え、11時すぎに高松駅に着く。3年ぶりだ。駅に隣接した〈連絡線うどん〉で、ぶっかけうどんを食べる。店内は半分に仕切られ、反対側はホームから直結している。こんどの仕事に関する作品が展示されているので、〈高松市歴史資料館〉まで歩いていく。以前、同じ建物に入っている図書館に行ったことがあるのだが、駅からの距離をちょっとナメていて、20分以上歩く。戻りは市内を循環しているバスに乗る。


高松から丸亀へ。降りるのは初めて。今回の旅のあいだ、海野さんの『光の街影の街 モダン建築の旅』(平凡社)を持ち歩いているが、このナカで丸亀の建築を紹介している。海野さんが来た1980年代半ばには、1943年に完成したという駅舎が残っていたが、いまは新しい建物になっている。南口を出て左方向は、浜町という商店街だ。その入り口に、〈重元青果物店〉という古い建物があった。右側には、〈猪熊弦一郎美術館〉があり、その先の道を渡ってすぐのところに、〈ギャラリーアルテ〉があった。今回の仕事は、このギャラリーのUさんが中心となって行なれた、「アーティスト・イン・笠島」(http://www.setouchi-a-wave.com/index.html)というアートプロジェクトの本をまとめるというモノだ。

Uさんに車で、〈さぬきや〉といううどん屋に連れて行ってもらう。かなり広い店だが、満員でしばらく待つ。ココのおすすめは「釜揚げうどん」だというので、それを食べる。「小」にしたが、2玉分はじゅうぶんある。一本の麺が恐ろしく長いので、ツユに浸けるのに苦労する(あとで地元のヒトに、「うどんの持ち上げ方にコツがある」と教えてもらう)。串おでんも3本食べる。近所の巨大スーパーで買い物して、ギャラリーに戻り、歩いて丸亀港に向かう。そこから「本島」行きの定期船に乗る。

本島は丸亀から30分ほどのところにある島で、「塩飽諸島」のひとつだ。船室から海を眺めていると、そのうち島が見えてくる。泊という港に到着。車で10分ほど走り、「笠島」へ。この地区は、江戸時代に海運で栄えたという。当時の建物がいまでも残っており、「伝統的建造物群保存地区」に指定されている。「アーティスト・イン・笠島」は、この古い町並みを舞台に、期間限定で行なわれたものだ。宿泊する家(江戸時代の建物で、いまはNPOが管理している)に荷物を置き、Uさんの案内でその辺を散歩する。「マッチョ通り」には、伝統的な工法で建てられた建物が真空パックみたいに残っているコトに驚く。海辺では、70代以上の老人が集まってナニやらやっている。ゲートボールかと思えば、「ペタンク」だという。鉄の玉を各自が投げ、目標に近いヒトが勝ちというゲーム。男女チームに分かれて、「ああ、あれは1点」とか「3点だわー」などと興じている。


宿泊所に戻り、このプロジェクトを本にまとめるやり方をUさんと話し合う。細かいところまで詰めていくと、たちまち7時になった。岡山からやってきた女性が豚肉と白菜の鍋をつくってくれる。Tさんという島の男性がやってきて、ビールや日本酒を飲みながらいろいろと話す。「金陵」という香川の地酒で、すっきりと飲みやすく、いささか過ごしてしまった。12時前にお開きとなり、みんなでTさんのウチまで送る。途中までくると、Tさんは後ろを振り返り、「この辺から見る夜空がいちばん好きだ」と云った。たしかに、建物の向こうに見える星が、とてもキレイだった。宿泊所に帰り、布団に入ってすぐに寝てしまった。