海野さんの独唱が響く元町の夜

朝7時半起き。扉野さんと出町柳へ。喫茶店でモーニング。そこで仕事に向かう扉野さんと別れて、京大へと歩く。正門に回り、正面にある「時計台記念館」へ。建物は開いていたが、展示室はまだ開いていないので、椅子に座って、今日のトークの段取りを考えてメモする。9時半に「歴史展示室」が開く。京大の歴史の展示の奥で、「ビジュアルジャーナリズムをきり拓く 元祖オタク OH 大伴昌司の世界」という特別展をやっている。大伴関係の資料が京大に寄託されたことを受けてのもの。スペース的には小さいが、『少年マガジン』図解や怪獣図解の原画などを、印刷物と一緒に並べているのがイイ。大伴がとんでもない発想をビジュアルなカタチにしていく過程が、感じられるだろう。『本とコンピュータ』の大伴特集で、ご母堂の四至本アイさんからこれらの資料を1ヶ月お預かりし、毎日のように眺めていたコトを思い出した。2月23日(金)までなので、近くのヒトは、ぜひ観にいくべし!


バスで河原町四条へ。阪急に乗って梅田へ。今日から天満宮で古本市が開催されるが、大荷物をしょっていくと体力を消耗するに違いないと諦めて、そのまま神戸に向かう。三宮からセンター街を歩いて、元町の〈海文堂書店〉へ。早めに着いたので、トークの下調べを少しやる。そのあと、福岡店長に教えてもらった〈寿々〉という居酒屋で、ビールと定食。ちょっと飲むのにも食べるのにも、ちょうどイイ感じの店で、気に入った。元町高架下の古本屋を2軒覗く。もっとあったようだが、閉店したのか。


大通りを海側に渡ったビルの2階に〈レトロ倶楽部〉という古本屋があるので、入ってみる。音楽、映画、特撮などサブカル系の本や雑誌が多い。『バラエティ』の角川映画特集を見つける。その裏にCDの棚があり、そこにミニコミが何冊も立てかけてあった。野中モモさん(こないだ「古本女子サミット」にも来てくれた)の『bewitched!」』が80円などの激安価格。そして、なんと、伝説のミニコミ『Toqqudensha 特急電車で家出』の第2号が100円で出ていた。浅生ハルミンさんと西村博子さん(当時はヒロコ)が発行していたもので、いちど見たいと思ってハルミンさんにお願いしていたが、見せてもらう機会がなかったものだ。わずか24ページの小冊子だが、じつにぶっ飛んだ内容で、ココで会えた幸福に胸を震わせる。店長に訊くと、近くにあったミニコミを置く店が移転して在庫を大量に引き取ったのだとか。ほかにも『BD』などのミニコミをタダでもらってしまった。


海文堂に戻ると、右文書院の青柳さんが来ていた。2階の控え室で待つうち、海野弘さんと橋爪節也さんがいらっしゃる。雑談していると客入れの時間。東京から来てくれた岡崎武志さんをはじめ、山本善行林哲夫の『sumus』メンバー、にとべさん、中嶋さんなど顔見知りが多い。25人ほど集まっただろうか。3時に開始。最初は、100冊の回想記とその展示について30分ほど海野さんとぼくで話し、そのあと橋爪さんに入っていただいてモダン大阪、モダン関西について話してもらう。さまざまな街を歩きながら「同じものを見る」という海野さんと、紙モノを主体とした資料によってモダン大阪の姿を照らし出そうとする橋爪さんのアプローチの違いがわかって、オモシロかった。橋爪さんは近く創元社から「大大阪」に関する著書を出されるとのこと。トークが1時間半、そのあと30分で質問とまとめを終える。ぴったり2時間で終ったので、とても安心する。

サイン会のあと、いつもの〈松屋〉で打ち上げ。20人以上が参加。そのあと10人近くが残って、阪神元町の地下街にある、昭和20年代からあるという飲み屋街へ。3坪からの小さな店が10数軒並んでいる。最初に行った店は狭くて入れず、もう少し大きな店に移るが、最初の店のおばあさんがついて来て、一緒にサービスしてくれる。ぼくのヨコに座ったおばあさんにビールを注いでもらい、昔の神戸のハナシを聞く。やたらとカラオケを勧められたので、海野さんが「じゃあ、私が歌います」と云い、一同驚く。海野さんは早大合唱部出身なのである。アカペラで、ロシア民謡佐渡おけさを歌う。声は小さいが美声であった。例のおばあさんが、歌に合わせて手をひらひらさせるのがイイ。そのあと、みんなで古い曲ばかり歌い、12時前にお開きに。福岡さん(今夜もすっかり酔っ払い)に予約してもらったビジネスホテルにチェックインし、風呂に入って眠る。