ギャラリーでのライブが似合う二人

昨夜はなんだか眠れずに、4時ごろまで起きている。「書評のメルマガ」を編集・発行する。 山崎邦紀さんの新作映画(尾崎翠原作)について、吉田勝栄さんの『中公文庫解説総目録』についての長い原稿が入る。ぼくが「書評のメルマガ」の編集を担当するようになったのは2001年4月から(当時は月1回)なので、もう5年半が経過したワケだ。最近は執筆者・テーマともに充実していて、「書評をベースとしながら、本の周辺情報やエッセイも載せる」というスタイルが定着してきた。本関係のメルマガとしては、一定のレベルに達したと自負している。正直云うと、これを紙の雑誌として出せたら……という気持ちも少しはあるのだが、メルマガという媒体だからこそ、月二回というペースで発行できたのだろう。ともあれ、年内のぼくの担当分は終わり。執筆者の皆様、今年もお世話になりました。なお、来年2月には恒例のアンケート企画「この版元がエライ!」を行ないます。回答してもイイという方は、南陀楼までご連絡を。


7時半、目覚ましに起こされる。ゴミを出し、鎌倉に向かう旬公を見送って、また一眠り。9時に起きる。日中は、手紙を書いたり、資料本を読んだり、洗濯したり、郵便局や銀行に行ったり。その合間に、岡本喜八監修のテレビドラマ《遊撃戦》(1968〜69年放映)のDVDの1枚目を観る。中国大陸を舞台にした戦争アクション。佐藤允堺左千夫ら喜八組の俳優が出演。小川安三も出ている。鈍重で演技もヘタだけどなぜか気になる脇役(《殺人狂時代》の殺し屋役が珍)。特典として岡本喜八インタビューが入っているが、亡くなる直前に収録したものなのか、かなり弱っている感じだった。もう一本、タナダユキ監督《月とチェリー》(2004)を観るも、超凡作。先の展開が読めすぎて、腹が立ってくる。途中に出てくるカマトトの女の子のエピソードはまるまる不要。エロスをテーマとした「ラブコレクション」というシリーズの1作。このうち、原正弘監督《OLDK》(2004)は映画館で観ている。すぎむらしんいちのマンガが原作で、けっこうオモシロかった。


日本古書通信』12月号届く。大屋幸世「水菴加藤美侖とはたれか?」を読む。「私にとって、水菴加藤美侖という人は、まさにじれったくなる人物だ」という出だしにはぼくも同感だが、その後、3ページもあるこの文章ではそのじれったさが一向に解消されない。『是丈は心得おくべし』シリーズなどについて、「多分これらの書は古書としては残らず、ほとんどツブされてしまったのだろう」とあるが、ぼくはこの4、5年で加藤美侖の著作を30冊は買っている。ありふれているというほどではナイにしても、残っていないとまでは云えないだろう。また、晩年の仕事である『日本名著全集』については詳しいが、それ以前に、誠文堂の小川菊松と組んでやった仕事についてほとんど触れられていないのは、ちょっとバランスを欠く。ぼくが『sumus』に書いた「大正の何でも博士・加藤美侖のこと」をご存じないのは当然としても、小川菊松の自伝(複数ある)を見れば、加藤美侖は随所に登場するのだから。この号では、三好淳雄「父へのレクイエム」も掲載。最近注目されている大阪の画廊・柳屋の三好米吉のご子息である。米吉は昭和18年に亡くなり、柳屋は閉店するが、「昭和47年には金子光晴氏から柳屋再建の種々提案を出され」たというのは初めて知った。


また、フリースタイルから『このマンガを読め! 2007』が到着。表紙は「グワシ!」をする楳図かずお。「私のベスト5」というアンケートにぼくも回答している。別に奇をてらったワケではないのだけど、他の人とはほとんど作品がダブらなかったなあ。入れ忘れていた、すぎむらしんいちの『ディアスポリス』を2人が激賞していた。


6時半に出て、小川町経由で新宿三丁目へ。ちょっと時間があるので、数年ぶりに〈模索舎〉を覗く。店の造りは変わってないが、並んでいる本に変化が見られた。道を渡り、〈PIT INN〉裏のビルにある〈ポルトリブレ〉へ。しばらく外で待ち、入場する。ココはギャラリーで、展覧会の最終日にふちがみとふなとがライブをするのだ。狭いスペースに椅子を並べ、その目の前に二人が立つ。客は17、18人ぐらいで完全に満員。当然、ノーマイクで、狭い空間に歌とベースが響く。いいカンジだ。2ステージあり、定番の曲から初めて聴く曲(「街」という新曲がヨカッタ)まで20曲以上やったのでは。ライブハウス以外のギャラリーやカフェなどで聴く方が、より「ふちがみとふなと」らしさが感じられるような気がする。終って打ち上げがあるが、渕上さんに挨拶して失礼する。三丁目の熊本ラーメンを食べて、ウチに帰る。


では、最後に今夜も「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を。

1981年3月18日
★「少年ビッグコミック」のけんしょう葉書と、ファンコーナーへの葉書を出す。それから講談社星新一ショート・ショートコンテストの選考結果を教えてもらうために葉書。合計3枚をポストに。
けんしょうは、「みゆき」Tシャツが当たるのでぜひ当てなければ。


★F・ブラウン『未来世界から来た男』読了。
「二十世紀発明奇譚」「タイムマシンのはかない幸福」などおもしろい作品ばかりだった。
「おしまい」という作品(第一部の終わりにのっている)は時間を逆にする話で、ラストがおもしろかった。題のつけ方は星新一の「あとがき」に似ている気がする(『冬きたりなば』に入っている)。