二日続けて〈蘭蘭〉にランランと

あまりに寒くて、いつもより早く目覚める。今日の冷え込みは、今年一番ではないか。雨がしとしと降っている。「書評のメルマガ」を編集して発行。そのあと、資料読み。コピーを取るのと昼飯を買いに、近所のコンビニまで行ったが、テスト前なのか開成学園の生徒がいつも以上に入り口付近に溜まっていて、邪魔でしょうがない。出口をふさがれたので、つい一人を押しのけてしまった。口で文句云うべきだったと、あとで反省。


立石書店〉オープニングイベント「古本市/夜・昼」用に、コピーしてきた値札をペーパーカッターを使って切る。それをやりつつ、DVDでステファノ・ヴァンツィーナ監督《黒い警察》(1971・伊)を観る。「黒い警察」とは、法にしばられて犯罪者を野放しにしている警察に代わって、犯罪者を始末する組織。クリント・イーストウッドの《ダーティー・ハリー》シリーズの何作目かに、似た設定があったな。孤独な戦いの末に死んだ警部の遺志を、それまで敵対していた検事が引き継ぐというラストがイイ。3時すぎに、旬公の友人のHくん(アメリカ人)がウチに来て、食肉や差別関係の文献を見ていく。来年帰国するので、それまでに日本で手に入る本をまとめて買っておきたいのだという。Hくんは来年の正月、ウチの実家に泊まるコトになっている。


4時半に旬公と出て、池袋へ。昨日たどった道を反対に歩き、〈ポポタム〉へ。最終日の終了間際なのに、まだけっこうお客さんがいる。〈トムズ・ボックス〉のアルバイトの女性(お名前失念)も来てくれた。片山健の新作絵本『7日だけのローリー』(学研)を買う。並装版で350円という安さ。6時すぎに、右文書院の二人と旬公とぼくとで撤収。本を箱詰めし、壁に留めた棚を外せば終わり。お先に失礼して、また池袋方面に戻る。


旬公が腹減ったというので、昨日も打ち上げで来た〈蘭蘭〉へ。すでに客が一杯で、かろうじて二人座れた(あとから来た客はぜんぶ断られていた)。ビールと、前菜の4種盛り、海老シューマイ。前菜には辛くてウマイのが入っていた。そのあと、スーラータンタンメン、高菜の土鍋ご飯、トマトスープを食べる。どれもきわめて美味く、量も多いので、お腹一杯。店長に「初めてですか?」と訊かれたので、「昨日もココに座っていた」と云うと、「ああ、本屋さんね。ジュンク堂ですか?」とマニアックな質問をされる。サンシャイン通りにも店があり、そっちにジュンクの店員がよく来るらしい。辛いもの好き・油っこいもの嫌いの旬公も、この店には大満足だった。池袋西口での食事は、当分ココにしようと決める。


ウチに帰り、安田理央雨宮まみエロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること』(翔泳社)を読む。1980年代以降の雑誌とAV、インターネットというエロメディアの歴史と状況が、判りやすくまとめられている。注の入れ方がいい(特に第二章の注が読ませる)し、巻末の年表も役に立つ。第一章(エロ雑誌)と第三章(インターネット)を安田、第二章(アダルトビデオ)を雨宮が担当している。オナニーのメディアが、エロ本からビデオ、DVD、パソコンの画面、携帯電話と電子化・小型化し、それとともに、エロネタ(コンテンツ)が無料化していく状況は、我々が『季刊・本とコンピュータ』で論議した読書と出版の変化に見事に重なっていて、気味が悪いほど。同時代に起こったことなので、重なっていてアタリマエの話ではあるが。産業としては衰退しており、あとはどうやって生き延びるかという悲観的な見方を持つ安田に対して、雨宮はまだまだオモシロイ可能性はあるというポジティヴな態度。筆者の男女差だけでなく、世代の違い(安田は1967年生まれ。ぼくと同じ歳だ。雨宮は1976年生まれ)もあるかも。安田は、「エロの敵」はエロが無料化することだと、繰り返し述べているが、雨宮の第二章にはそのことは触れられていない。にもかかわらず、第二章は流通や制度の問題をふまえつつ、アダルトビデオの歴史的変遷を書いた、すぐれたレポートだ。むしろ、安田、雨宮がそれぞれ単著として出した方がヨカッタのでは? と思う。


最後に告知。ちょっと先の話ですが、来年の1月21日、〈古本酒場コクテイル〉にて、塩山芳明トークがあります。南陀楼が相手役で、なぜか退屈男くんが事務方をやるそうです(こないだ風邪で欠席した打ち合わせで決まったらしい)。漫画屋のサイト(http://www.linkclub.or.jp/~mangaya/)では「満員必定要予約」と吹いてますが、ヒトが少なかったときには本気で傷つくヒトなので、みんな予約してやってください。

嫌われ者大新年会
アホ文化人・新刊本・古本ブーム総斬り!!!


2007.1.21(日)
高円寺古本居酒屋「コクテイル」(電話03-3310-8130)
PM:6:30より(満員必定要予約)。チャージ料800円。


弁士・塩山芳明
乗せ役・南陀楼綾繁
庶務・退屈男


*『出版業界最底辺日記』『路上派遊書日記』のサイン本が買えます。


もうひとつ、塩山氏の友達でもある山崎邦紀さんが脚本を書いた映画、浜野佐知監督《こほろぎ嬢》が完成しました。尾崎翠の短篇3つを素材にしたもので、翠の出身地である鳥取でオールロケしたそうです。詳細は旦々舎のサイト(http://www.h3.dion.ne.jp/~tantan-s/)を。1月4日〜19日まで、シネマアートン下北沢にてロードショーです。で、山崎さんにチケットを申し込んだ直後、「律儀な嫌われ者」こと塩山氏よりチケットが送られてきたので、2枚余ってしまいました。そこで、唐突ながら、先日のクイズ(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20061207)に答えてくれた方から抽選で2名様にこのチケットをプレゼントします。回答とこのブログへの感想などをお書きになり、kawasusu@nifty.com までメールください。送り先も忘れずに。締め切りは12月15日です。


では、最後に、今夜も「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」を。

1981年3月7日(土)
★別に今日はなにもしなかった。


3月8日(日)
★ルービック・キューブに夢中になり、やっと六面を完成する。
あれを考えた人は絶対にえらいと思う。
かなりの金をもうけただろう。
うらやましいことだ。


なお、訂正です。1981年2月18日の日記(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20061124)で、『Sage』について、「森雅裕推理小説常習犯』はこの雑誌に連載されたもの。単行本には同誌への悪口(原稿料の未払いも含めて)が書き連ねてあり、笑った」と注を書きましたが、よく考えたら、『オーパス』(創現社)に連載されたものでした。記憶で書いたので間違えました。すいません。『オーパス』という雑誌はいちども見たコトがありません。