「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」連載開始します

kawasusu2006-11-19

朝8時頃、妙に寒くて目が覚める。もう冬の気配だなあ。静かに雨が降っている。東京新聞を開いたら、読書欄で『路上派遊書日記』が取り上げられていた。無記名の9行ほどの紹介だが、ありがたい。ぼくが雑誌連載を担当した、山崎浩一さんの『雑誌のカタチ』(工作舎)が隣に並んでいたのも、嬉しい偶然だ。


タコシェ〉のブログ(http://blog.taco.shop-pro.jp/)で、岩井澤健治『石井輝男闘病日誌』(600円)という冊子が出たのを知る。「「2005年8月12日に他界した、石井輝男監督の最期の日々を、学生時代に『地獄』にスタッフとして参加したことを切っ掛けに監督のもとに出入りするようになった若者が記録したもの。監督が肺癌で緊急入院してから、亡くなるまでの一ヶ月ほど、ほぼ毎日、見舞いや看病に通い、やりとりした会話や監督の様子を綴ったもの」。コレはぜひ読んでみたい。旬公が出かけているので、昼はトマトソースのペンネをつくって食べる。


書評で取り上げる、津原泰水ブラバン』(バジリコ)を読む。1980年に吹奏楽部に属した広島の高校生の青春と、その25年後を交錯させて、ハナシが進む。作者はぼくよりも3つ上(1964年生まれ)だが、自分も同じ時期に中、高とブラバンにいたので、ひとつひとつの記述に「あったあった」と同意しつつ、一気に読む。ブラバンが出てくる作品には、小説で有明夏夫『俺たちの行進曲』(文春文庫)、マンガで柏木ハルコブラブラバンバン』(小学館)があって、どちらも傑作だが、この『ブラバン』もブラバン小説として素晴らしい。


夕方、〈古書ほうろう〉へ。入れ替えがあるたびに注視している「古本すなめり」コーナーで、『牛次郎の劇画原作入門』(日音)400円を買う。〈立石書店〉の牛イチロー先生に、新店舗開店祝いにあげようと思う。カバーの著者名が帯で隠れて、「牛」の一文字だけ見えているのには、激しく笑える。ほかに、山田宏一宇田川幸洋訳『汚れた顔の天使 ジェームズ・キャグニー自伝』(出帆社)900円、ドナルド・オグデン・ステュアート、浅倉久志訳『ハドック夫妻のパリ見物』(ハヤカワ文庫)500円を。先日も書いたが、最近のほうろうはじつにイイ本をいいタイミングで出してくれるなあ(とくに木曜日以降)。〈サミット〉で買い物して、立ち飲み屋〈ワン・ツー〉でチューハイ(150円)飲んで、ウチに帰る。


晩飯は、福岡で買った明太子を使い切ろうと、ウェブで見つけた、「ささみのクリームチーズ和え」というのをつくってみるが、ささみがなくて胸肉を使ったり、クリームチーズを和えるのが難しかったりで、ちょっと失敗。ローランド・エメリッヒ監督《デイ・アフター・トゥモロー》(2004・米)を、旬公とさんざんツッコミを入れつつ観る。そのあと、原稿を一本書く。


さて、ココで「ナンダロウアヤシゲな日々」からお知らせです。昨日のトークの打ち上げの席で、ハナシのネタ用に持ってきた、ぼくの中学時代の日記帳をみんなに見せたところ、異様にウケ、「中学生から行動がまったく変ってない」「こんなにもあだち充を愛してたんですか!」「このまま本にしてほしい」などの賞賛(?)の声をいただいてしまいました。で、今日になって、津原泰水ブラバン』を読み終えた余韻もあって、その日記を読み直してみると、恥ずかしい文章ではあるものの、1980年代の田舎の少年の生活記録としてはそれなりに面白いものではないかと思えてきました。そこで、今日からしばらくの間、この日記を転載していきます。タイトルは、〈往来座〉のセトさんの提案をちょっといじって、「路上派少年遊書日記――1981年・出雲」とします。


B5サイズのノートに書かれたこの日記帳には、『メモ・ノート』というタイトルが付いています。これは当時、愛読していたかんべむさしが、大学時代につけていたノートと同じ名前です。なぜか1冊目は手元になく、「NO.2」「NO.3」の二冊が残っています。「NO.2」は1981年2月7日〜6月8日まで。4カ月で100ページのノートを使い切っています。もう25年も前のコトなので、固有名詞も含め原文そのままで引用しますが、一部匿名にする場合もあります。また、簡単な注記は【】で示し、長いものは注釈にします(「はてな」の注釈機能を使うのはコレがはじめてです)。句読点は適当に補い、書名は『』にします。明らかな書き間違いは訂正します。では、全文掲載までに何日掛かるか判りませんが、よろしくお付き合いのほどを。

1981年2月7日(土)
★今日は土曜日。学校は三校時でクラブでは本を読んだ。
今日なぜかたくさん注意された。学級委員に3回、日直に1回。まったくどうしたことだ。
夕方、エレクトーン*1。まだへただった。
7時15分、「セッション‘81」【NHK FMのライブ番組】録音。山下洋輔トリオ+国仲勝男。良かったので大満足。山下洋輔たちまち好きになる。


2月8日(日)
★午前中、部活動へ。
昼から二時間ほど寝て、弟と図書館と書店へ。
その前に武田書店*2に行って注文した本はまだかと聞いたら、調べて「現在発行されておりません」と言った。2カ月もほったらかしにして、このざまだ。もうあそこでは本買わないからな。だいたい、本当は発行されているはずだが。
図書館で本一冊借りる。阿刀田高の『食べられた男』だ。一回読んだことがあるが、もう一回読んでみる。


★今日買った本
『ショージ君のほっと一息』東海林さだお(NO.152)*3320円、文春文庫
火星人ゴーホームフレドリック・ブラウン稲葉明雄・訳(NO.153)360円、ハヤカワ文庫SF
プラトンは赤いガウンがお好き』小峰元(NO.154)300円、講談社文庫
『乱調文学大辞典』筒井康隆(NO.155)280円、講談社文庫
『水素製造法』かんべむさし(NO.156)340円、徳間文庫


★今日買った雑誌
『SFアドベンチャー 3月号』徳間書店、590円


★今日は久しぶりに町に出たせいか、いろいろと本を買った。*4
ショージ君シリーズは五冊、あと一冊で全部がそろう。早くそろえたい。
フレドリック・ブラウンは初めて。この本は、僕がSFファンになってから、初めて買った海外SF(もちろん『宇宙戦争』などの子供向け【「子供向け」になぜか傍点】は読んだが)。これからは、いろいろな海外作品も読みたい。
小峰元は二冊目。この本や、この作者のほかの作品はほとんど全部読んだが、また買って読み直している。
筒井康隆のこの本。これはおもしろいぞ! 雑誌に移って『SFアドベンチャー』。これは2冊目。SFAだけでなく、他のも読みたい。


当時は月に2000円ぐらいしか小遣いをもらってなかったハズなのに、一日で文庫5冊、雑誌1冊も買っている……。しかも、一度図書館で読んだ本を、わざわざ自分の本として買っている。気に入った本を何度も読み返すクセが、中1の頃からもうあったとは思わなかった。(続く)


写真は、カラオケのときの〈往来座〉のセトさん。「ベルトがないので、ビニールヒモでしばってます!」とさわやかに言い放つ好青年だ。

*1:小学生から中学2年ごろまで、ヤマハのエレクトーン教室に通っていた

*2:出雲市内でいちばん大きかった新刊書店

*3:買った本に通しナンバーを振っていたらしい

*4:自宅から市の中心部までは歩いて40分、自転車で15分ほどかかった