名コンビ、誕生す

朝8時半起き。午前中に『ぐるり』の原稿、午後に『進学レーダー』の原稿を書く。やればできる、とはいえ、まだ残っているもの多し。木村衣有子さんから『わたしの文房具』(KKベストセラーズ)をいただく。文房具についてのコラムや、料理研究家や漫画家の文房具の使い方のインタビュー、東郷青児山名文夫などの絵葉書の紹介、といった構成。この人が、文筆家としてだけでなく、企画者・編集者として優れていることを、新しい本を見るたびに確認している。なお、青山に〈机〉という名の居酒屋があるそうだが、『机』というタイトルの雑誌もありますね。紀伊國屋書店のPR誌です。


5時半に出て、神保町へ。ほとんど一週間ぶりだ。この間、電車にはまったく乗らず、自転車での移動しかしていない。〈ディスクユニオン〉に寄り、ムーンライダーズの新作[MOON OVER the ROSEBUD]と、『ミュージックマガジン』増刊の「ムーンライダーズの30年」を買う。ムーンライダーズに関してはもはや惰性となっているか。〈書肆アクセス〉で、鈴木義昭『夢を吐く絵師 竹中英太郎』(弦書房)、岩垣顕『東京35区地名事典 小石川区本郷区編』を買う。『東京35区地名事典』は古い地名を調べている者にはありがたい資料だが、いちばん欲しい神田区編は未刊だった。というか、3冊出て刊行が止まっているらしい。〈ぶらじる〉で右文書院の青柳さんと打ち合わせ。『路上派遊書日記』の増刷分は、明日の東京堂書店でのトークで初売りとなるらしい。海野弘さんの新刊『歩いて、見て、書いて』をいただく。待ちに待った一冊だ。


7時、〈八羽〉にて、濱田研吾くんと藤田加奈子さんの結婚を祝う会。濱田くんは『徳川夢声と出会った』(晶文社)や『脇役本』(右文書院)の著者。藤田さんは戸板康二愛好サイトの主宰者にして、ブログ「日用帳」(http://d.hatena.ne.jp/foujita/)の主。二人が付き合っていたことは昨年から知っていたが、結婚を知らされたのはつい最近だ。今日は二人とも付き合いのある人だけ、ということで、2人と西秋学さん、畠中理恵子さん、藤田晋也さん、青柳さん、そしてぼくの計7人という少人数の会になった。


夢声愛好家と戸板愛好家がドコで出会ったの? と訊いたら、「ナニいってるんですか、南陀楼さんが紹介してくれたんじゃないですか」という。『彷書月刊』の連載で、藤田さんのサイトと一緒に濱田くんのミニコミ『職業“雑”の男 徳川夢声百話』を取り上げ、それでお互い連絡を取り合うようになったのだとか。いやあ、ゼンゼン覚えてなかったよ。あとでパソコンから該当の原稿を引っ張り出してみると、たしかに、二人を並べて紹介している。「戸板康二といい、徳川夢声といい、名前の大きさにひるまずに、しかも部分でなくいきなり全体像に取り組むとは、恐るべき二十代だ」なんて書いているじゃないか。二人の出会いには、また、藤田晋也さんも一役買っている。こうしてみると、直接ではないといえ、「BOOKMANの会」から生まれたカップル、という見方もできる。


会は、本人そっちのけの古本屋話からはじまり、畠中さんの毎度のご乱行(あっ、お金がない! など)で盛り上がる。最後に、全員から二人にプレゼント。ハマびんには、杉浦幸雄が描いた徳川夢声のイラスト、藤田さんには、戸板康二の生原稿。ふたりとも狂喜し、しばらく見入っていた。ぼくからは、『錯覚』という雑誌。映画や演劇関係者が書いている雑誌で、夢声も寄稿している。以前、ハマびんにコピーをとらせてあげたことはあるが、ぼくが持っていてもしかたないので、彼に渡すコトにした。けっこう古書価は高いよ(ぼくは2900円で買ったけど)。この雑誌をパラパラめくっていた藤田晋也さんが、「あっ、この発行所の住所は!」という。なんと、二人の新居と、この雑誌の発行所の住所が同じだったのだ。すげえ偶然。献呈者のぼくが見落としていたのは、とても残念。


ほかにもいろいろ書きたいが、長くなるので略。ともあれ、濱田くん、藤田さん、おめでとう! 最強の趣味を持った名コンビの誕生だ。


11時すぎに散会して、青柳さんと千代田線で帰る。ウチに帰り、洗濯をしてから寝る。明日は3時から〈東京堂書店〉でのトークショーだ。どうなることやら。