秋の一日は「一箱古本市」に暮れて

kawasusu2006-10-22

8時起き。荷物を準備して、旬公と出かける。しのばずくんの看板をぶらさげて自転車に乗る。千駄木交流館に着くと、ナカムラ&イシイ、写真展に出品してくれる高野ひろしさんといつものペンギン、hitomiさん、カフクさんほかの皆さんが。展示のやり方を打ち合わせ、ぼくは持ち場の〈IMAGO〉に向かう。店の都合で10時ではなく10時半開店になったというので、前で待っている店主の皆さんを急遽、〈古書ほうろう〉に誘導し、そこでミーティング。助っ人はナカムラさんの友人の女性3人。店が開くと同時に、セッティングに移る。ココには9箱が置かれる。「めもあある美術館」のみさきたまゑ書皮友好協会)さんは、岡崎から参加。このヒトは仙台の一箱古本市にも来ていたぞ。アンタも好きね。店の中と外(道に面したところと、ビルの入り口)に箱が別れてしまったので、配置に時間が掛かる。それでも、店主の皆さんが協力的だったので、なんとかうまくいく。


11時前になると、ちらほらヒトが集まりはじめる。店の前の歩道は狭くて、よく自転車が通るので、助っ人さんにはお客さんに注意を呼びかけるよう頼む。いよいよ開店。「afternoon cafe」さんは自作のファンタジー小説本を、「黒犬堂」さんは雑誌とCDを「くま文庫」さん(なんと、ゆまに書房でバイトしているとか)は谷川俊太郎和田誠の本を、と各自が工夫を凝らしている。入り口すぐの「古本すなめり」さんは、かなりレアな古本を並べている。あっ、小林信彦の『東京のロビンソン・クルーソー』だ! と手を伸ばそうとすると、隣の男性が一瞬早く手に取った。箱に戻せ〜と念力を送ると、戻してくれたので、手に取る。う、5800円か。しばらく悩んだ末、静かに箱に戻す。あとで聞いたら、すぐ売れたそうだし、オヨちゃんからは「南陀楼さん、5800円なら買いですよ」と云われるが、一箱古本市だからいいんだよ!!(意味不明の負け惜しみ、しかも逆ギレぎみ)。この箱からは、あとで田中小実昌『乙女島のおとめ』(番町書房)を600円で買う。「かまだ屋」さんでも、終了間際に海野弘『都市の庭、森の庭』(新潮選書)を。300円だったかな。


次に、谷中銀座呉服店〈まるふじ〉前へ。ココは8箱。塩山芳明さんの「嫌記箱」は田村の均一やブックオフでかき集めた本にアコギに上乗せしている。買わないとあとでナニを書かれるかワカランので、島村利正『青い沼』(新潮社)900円を。「ふうらいまつ」さんは、切手や絵葉書などの「紙モノ」オンリー(数少ない本は切手収集のパンフレット)で攻めている。紙モノなら「一箱」でもバラエティに富んだ世界が展開できる。じつにいい発想だ。チェコや日本のマッチラベル100枚の入った袋を、800円で買う。ほかにも、「四谷書房」さん、「川越むかし工房」さん(ミニコミ小江戸ものがたり』発行)、「のろの本棚」さんらが出ていた。




交流館に戻ると、旬公やカフクさん、高野さんが、写真展のチラシを手書き中。これを配って回る。〈ブーザンゴ〉では、ナカムラさんのお兄さんの人形を展示中。とてもリアルでかつユーモラスな人形だった。次に〈オヨヨ書林〉に回ると、見たようなお姉さんが。あ、〈火星の庭〉の前野久美子さんだ。これから食事だというので、ご一緒することに。どの店も満員っぽいので、ロシア料理〈海燕〉へ。ビーフストロガノフを食べる。仙台での一箱古本市の次回の可能性など、いろいろ話す。外に出て別れたあと、前野さんに打ち上げイベントでプレゼンテーターになってもらい、「火星の庭賞」を出してもらったら、と思いつく。すぐに後を追いかけるが見つからず、残念。


三浦坂を上がって、宗善寺へ。折りしも「のこぎり演奏」が終わるところ。入って右手に箱が並んでいる。お寺にテーブルを貸してもらったり、饅頭の差し入れまであったりと、じつにいい環境で販売している。ココは14箱。「旅猫書房」、退屈男さんの「ちくわ文庫」、晩鮭亭さんの「サノシゲ食堂」、「岡崎武志堂」と知り合いが多い。順調に売れているようで、すでに箱に隙間ができている店主も多い。「BOOKRIUM」のHさんは、金沢での旬公のワークショップの参加者。夜行バスで金沢からやってきたそうだ。「南陀楼さんに買ってほしいと思って」と、向井啓雄『とつくにびと 風変りな旅行者』(文藝春秋新社)を差し出される。たしかに、街を歩く女性の写真の表紙がいいし、内容も「酒場と落書」などオモシロそう。こんな本を選んでくれたHさんのセンスに敬意を表して、買う。旅猫さんから「石ころ書房」さんを紹介される。いまだに入店できてない阿佐ヶ谷の〈元我堂〉の金曜の店主さん。この箱もぼくの好み。『BUTTON BOOK』という英文の写真絵本が目にとまる。簡単な英文の文章が付いているが、所有者が「看護婦」「雨降りの日」などと日本語タイトルを書き込んでいる。「飢ゑた仔猫」「賣買」「學生時代」……正字で書いているから、そうとう昔のものなのかも。「お母さんが子どものために書いたんですよ、きっと」と石ころさん。800円だったかで買う。「古書無人島」にはミニコミ『モツ煮狂い』が出ている。おお、この店だったか。あとで発行者のクドウさんにも会った。


そして、ライオンズガーデンへ。マンション1階の集会室とその前のスペースを使わせてもらっている。ココは17箱ともっとも多い。広いので荷物なども置けて、ラクそうだ。〈IMAGO〉や〈まるふじ〉の出店者には悪いなあ。偶然だろうが、子連れの店主が数組いて、その友達が子連れでやってきたりして、集会所が子どもの遊び場状態に。ところどころで、小さい子が絵本を読んでいるのがいいカンジ。「ぐるり」の五十嵐さん、「ムト屋」さん、昨日ウチのアパートに泊まった「古本おーでぃっと とれいる」さんと奥さんの「おでこ」さん(絵本が多い)など。盛厚三さんの「古書北方人」で、金子光晴『詩人』(旺文社文庫)を400円で。文庫や『サンパン』バックナンバーが順調に売れているようで、スリップの束を見せられる。「東京セドリーヌ」には柳ヶ瀬さんとHさんが。あとで、枝川公一『街は不思議である。』(PHP研究所)を200円で買う。イラスト・安西水丸、装幀・平野甲賀の素敵な本。阿部麗奈さんは食事中だというが、さっきの思い付きを逃したくないので、携帯に電話して、急遽「リコシェ賞」を出してもらうよう頼む。臨機応変一箱古本市の身上です。


一回りしたので、交流館に戻り、スタッフ部屋で一休み。畳敷きなので、ちょっとでも横になれるのがイイ。隣の部屋での写真展は、ダンボール板に写真を貼り付けたもので、けっこう点数が集まった。高野さん前の一箱古本市で撮った、いろんな人のペンギンとの2ショット写真は床に並べてある。自分が写っていたら持ってってもいいよ、という趣向だ。


そういえば、「不忍ブックストリートMAP」を置き忘れていた、ということになり、ほうろうへ。今日までココで行われているグループ展のメンバーが、店の前で即興ライブをやっている。石神井書林内堀弘さんの姿も。地図を配って回っていると、弟から電話が入る。ライオンズガーデンで落ち合うことにして、そっちに向かう。ちょうど琵琶の演奏がはじまるところ。弟夫婦と甥のシンタロウ、姪のユウキが到着。畠中さんや五十嵐さんに紹介する(甥っ子を見せたかっただけのような気もするが)。弟一家を連れて、宗善寺へ。このあたりで、ちょっと雲行きが怪しくなる。ユウキが「秋を探す」という宿題があるというので、谷中墓地に連れて行き、松ぼっくりや葉っぱを拾う。そのあと、ライオンズガーデンに戻る。シンタロウが本好きだとは知っていたが、いつの間にか小2のユウキも本を読むようになっており、何冊も親に買ってもらっている。シンタロウは『のらくろ』の復刻版。布張り表紙のヤツで、弟が小学生のときに読んでたのと同じものだ。親子だなあ。ユウキは「猫が表紙になっている」という理由で、仁木悦子『一匹や二匹』(角川文庫)を買っていた。小2でジャケ買いとは末恐ろしいやつ。


ライオンズにいるときに、ついに雨が降り出す。弟たちを千駄木交流館に送り、ぼくは〈IMAGO〉に向かう。かなりの降りになってきた。それでも、すぐに5時になったから、春のような悪夢は味わわずに済んだ。撤収の様子を見てから、一足先に交流館に戻り、打ち上げイベントの準備。撤収を終えた店主たちが、続々と集まってくる。間違って、前回の打ち上げ会場だった「文京ふれあい館」が多くいた模様。告知不足でした。


6時半、打ち上げイベント開始。スタッフも入れると50人以上が集まっている。ぼくとオヨちゃんが司会。狭い部屋なのでマイクなしで充分。まず個人賞。


★ほうろう賞 「古本すなめり」(IMAGO前) 賞品:ほうろうに箱を置く権利
往来堂賞 「東京セドリーヌ」(ライオンズ前) 賞品:〈マミーズ〉のパイ
★オヨヨ賞 「AZTECA books」(ライオンズ前) 賞品:オヨヨ選曲CDほか
リコシェ賞 「古本遊歩」(ライオンズ前) 賞品:ブックカバーほか
南陀楼賞 「BOOKRIUM」(宗善寺前) 賞品:戦前マッチラベル貼込シート
      「石ころ書房」(宗善寺前) 賞品:『路上派遊書日記』サイン本


南陀楼賞は1箱に絞れず、2つ出してしまった。そして岡崎さんや塩山さんのコメントを挟み、売り上げ金額、点数のベスト3を発表する。


★金額1位 「ふうらいまつ」(まるふじ前) 36,300円
   2位 「岡崎武志堂」(宗善寺) 32,800円
   3位 「石ころ書房」(宗善寺) 31,600円
★点数1位 「古書北方人」(ライオンズ前) 105冊
   2位 「ムト屋」(ライオンズ前) 88冊
   3位 「東京セドリーヌ」(ライオンズ前) 79冊


賞品は1位のみ、〈ブーザンゴ〉のドリンク券とポストカードだった。今回の企画者であり、中心であったナカムラ&イシイから手渡す。二人ともちゃんとした挨拶をしてくれた。全体の売り上げ金額は、755,630円。冊数の合計は1860冊。一箱ドタキャンが出たらしいので、49で割ると、一箱につき1万5420円、約40冊売れたコトになる。平均金額で春を上回ったが、平均冊数もスゴイ。


打ち上げイベントはちょうど1時間で終了。さくさく終わってヨカッタ。片づけをして、二次会に行く連中が残る。ぼくと旬公は荷物をウチに置きに一度帰る。自転車で日暮里に向かうと、途中から大雨が降り出す。〈馬賊〉の裏にある〈ばんだい〉という居酒屋で二次会。30人もいるので、テーブルが4つになる。ライオンズの場所提供に尽力してくださった〈乃池〉のオヤジさんも、来てくださる。奥のテーブルでは、塩山オヤジが舌好調。10時ごろにいったん締めるが、半分ぐらいはそのまま残って三次会。12時前に店を出る。退屈男さんに、「じゃあ、今回もリンク集よろしく!」とさわやかにお願いする(ちゃんとつくってくれました。http://taikutujin.exblog.jp/4558382/)。


自転車を担いで階段を登り、谷中銀座を抜けて、いつもの〈小奈や〉へ。谷根千工房のヤマサキさんとサトちゃんもいた。ココまできたら、すっかり安心して、だらだらとくだらないハナシで盛り上がる。オヨちゃんとカフクくんのシアワセなエピソードをしつこく聞き出す、39歳のやさぐれ夫婦。旬公が一足先に帰り、ぼくも2時には疲れてリタイヤ。元気なヒトたちはそのあとも残っていた。


ともあれ、「秋も一箱古本市」無事終わりました。場所を提供してくださった、IMAGOさん、まるふじさん、ライオンズガーデンさん、宗善寺さん、ありがとうございました。店主の皆様、お疲れ様。来てくださったお客さん、ありがとう。助っ人の皆さん、立ちっぱなしで大変でしたね。そして、何から何まで二人で頑張った、ナカムラさんとイシイくんのコンビに感謝の拍手を贈ります。若い二人の行動力には、我々も学ぶところが大きく、来年春の一箱古本市に向けて気合が入りました。さあ、そろそろオジサンたちも動き出そうか。