『日々の死』を手にして

朝8時半起き。そうめんをゆでて食べる。パソコンに向かっていろいろやっていると、外が騒がしい。今年のアタマから工事していた、近くのマンションが完成し、1階にパン屋が今日オープンしたのだ。下を見おろすと、主婦の集団が長い列をつくっている。この通りにこんなにヒトがたくさんいたの、はじめて見たよ。


12時前に自転車で出かける。郵便局に寄り、〈往来堂書店〉で山岸凉子舞姫(テレプシコーラ)』第9巻(メディアファクトリー)と、二ノ宮知子のだめカンタービレ』第16巻(講談社)を買う。湯島に行き、本郷に向かう坂の途中にある大きなマンション(湯島ハイタウン)へ。ココの1階にある〈羽黒洞〉というギャラリーで、「長谷川利行の愛した下町展」をやっているのだ。長谷川利行は上野や日暮里に住み、下町の風景を描いた画家。1940年に三河島の路上で倒れ、収容先の病院で亡くなっている。タウン誌『うえの』の表紙に使われていたことなどは知っているが、きちんと見るのははじめて。絵の具を厚く塗って重ねていくことで、風景を描いている。亡くなる2年前に描いた「田端風景」という作品が気に入った。〈羽黒洞〉の創業者・木村東介(『不忍界隈』『上野界隈』などの著書がある)は早くから長谷川利行の絵をコレクションし、遺作展を開催している。


並びにある〈飛鳥〉という喫茶店のランチがなんとなくイケそうなので、入ってみる。ビーフカレーを頼むと、スープ、サラダが付いて、カレーソースが別盛りで出てきた。味もウマイ。これで750円はリーズナブル。不忍池に出て、弁天島にある「利行碑」(1969年建立)を眺める。この境内には、「魚塚」「鳥塚」「包丁塚」「めがね塚」「三味線塚」「ふぐ塚」などの供養塔がたくさん立っていて、オモシロイ。いずれゆっくり来よう。


上野駅のヨコから下谷神社へ。適当に見当をつけて走っていたら、稲荷町に出る。この道沿いに〈ブックオフ〉浅草稲荷町店があるのを発見。知らなかった。一回りするも、ナニも買わず。かっぱ橋道具街を通り、台東区中央図書館へ。いま調べているテーマの本を十数冊借り出す。鶯谷経由で帰る。西日暮里から上野台地をぐるりと回りこんできたワケだ。
 

ウチに帰ると、〈さっぽろ萌黄書店〉さんから冊子小包。「日本の古本屋」で検索して、山川方夫『日々の死』(平凡出版)を買ったのだ。函つき・まあまあの美本で2500円は明らかに安い。いつもだったら状態は気にしないが、この本は箱から表紙、見返しにいたるまで真鍋博の幻想的なイラストが入っており、なるべくいい状態で入手したかった。本体は継表紙で「チリ」がなく、見返しと同じ紙が別丁扉として挟まれている。旬公に云わせると、商業出版物としてはきわめて珍しい造本らしい。以前から欲しかった本だけに、入手できてウレシイ。


〈さっぽろ萌黄書店〉からの荷物のナカに、もうひとつ本があった。和田義雄『喫茶半代』上下(ぷやら新書刊行会、1977)という豆本である。これはいわば未完成品で、豆本本体、カバー、帯、背表紙シール、そして外函として使うマッチ箱でセットになっているようだが、組み立てられておらずバラバラのままだ。マッチ箱の内箱は経木がたわんでしまっており、ココに豆本を収納するのはムリそうだ。ということは、コレはバラのままで保管するしかないというコトか? もっとも、買ったのではなく、萌黄書店の坂口さんからのプレゼント。今年1月に札幌に行った際、坂口さんに連れて行ってもらった〈弘南堂書店〉で、ぼくは和田義雄の豆本『コーヒー物語』(ぷやら新書刊行会、1984)を買っている。そのことを覚えていてくれたのだろう。この2点に『札幌喫茶界昭和史』(財界さっぽろ)そ加えて、和田義雄の「コーヒー3部作」が揃った。


集めた本を見ながら、リストをつくっていると、6時15分になる。慌てて着替えて、旬公と〈千尋〉へ。店の前で右文書院の青柳さんと会う。nakabanさんと中林麻衣子さんの「きりん果」コンビが後から来る。『路上派遊書日記』の打ち上げなり。刺身や煮魚を食べ、海外旅行のハナシなどで盛り上がる。気がついたら10時回っていた。〈古書ほうろう〉に寄り、また10冊、文庫を買い込んで帰る。