本を送って母親に怒られる

朝8時半起き。いろいろやってるウチに出かける時間だ。千代田線から小田急線への直通で、成城学園前駅へ。北口は成城大学があるので何度も来ているが、南口ははじめて降りる。食べ物屋がほとんど見当たらず、ちょっと高級そうなおでん屋でざるそばを食べる。680円で、薬味がたっぷりに、生卵、おにぎりなどが付く。そばもかなりウマかった。近くの主婦3人が中学受験のハナシをするのがBGM。子どもを持っている女性を見ると、自分より年上のように反射的に思ってしまいがちだが、きっとぼくよりも年下だ。


〈伽羅〉という喫茶店で、Hさんと打ち合わせ。終わって、隣の〈江崎書店〉を覗く。小さいけどナカナカ品揃えがイイ。北口の古本屋〈キヌタ文庫〉まで歩くが、今日は休みだった。下北沢で井の頭線に乗り換えて、渋谷へ。〈ブックファースト〉で、今度の仕事の資料を大量買い。そのほか、小林信彦『決壊』(講談社文芸文庫)、小山清『小さな町』(みすず書房大人の本棚)を。


ウチに帰り、図書館に調べものに出かける前に、実家に電話をかけると、母親がなんか怒っている。『路上派遊書日記』を送ったのだが、それを読んで、好き勝手な生活をしていると腹を立て、さっき怒りの手紙を郵便局で投函してきたところだと。縷々弁解する。電話を切ってから、本を出したので喜んでくれるだろうと思った自分の能天気さに呆れる。そりゃそうだよなあ、「3年越しで確定申告を」なんて見出しのある本を見たら、親もイヤになるよな。


なんだか気分を変えたくなって、図書館をヤメて、本駒込の〈ときわ食堂〉でチューハイを飲む。飲みながら、椎名誠『新宿熱風どかどか団』(新潮文庫)を再読していたら、35歳で会社を辞めてフリーになった椎名のもとに、文藝春秋やマガジンハウスや朝日新聞小学館などの大手ばかりから次々に仕事が舞い込んでくるので、彼我の差に笑ってしまう。才能の違いといってしまえばそれまでのハナシだが。


夜、旬公が知人から借りてきた、山岸凉子舞姫(テレプシコーラ)』(メディアファクトリー)を読み始めると、あまりの面白さに止まらなくなり、8巻まで一気読み。クラシックバレエが題材だが、日常がすべてホラーに思えてくる、この作家特有の磁場が全体を覆っている。ダーク版『ガラスの仮面』だ、こりゃ。とはいえ、ぼくの場合、子どものときにこんな苦しい思いをした経験をナニ一つしなかったから、こんな能天気な人間になってしまったのかも。


弟からメールがあり、『路上派〜』の最後に甥のことを書いたのを、本人が喜んでいたとある。今度は姪のことも書くように、とリクエストがあった。ちなみに、出版社の営業の弟とぼくは仲が悪いというデマが一部で飛んでいるようで、「悔しいので日記に『●月●日 弟と食事』とか『●月●日 弟と飲む、最近よく会うなあ』とか書いておいて」とも。「よく会う」はウソだけど、そんなに仲は悪くないぜ、助教授。22日の「秋も一箱古本市」では、午後から一家で見に来るそうなので、そのとき南陀楼の子ども時代に激似の甥を目撃することができるかもしれません。