『汚れた土地』を手にして

朝8時半起き。「早稲田古本村通信」の原稿を書く。〈一誠堂〉から先日の「映画・演劇目録」で注文した本が届く。田中小実昌『小実昌のかぶりつき放浪記』(日本文芸社)2000円、永井健児『活動屋児井英生』(フィルムアート社)2000円、そして、中原弓彦『汚れた土地』(講談社)4500円。『汚れた土地』は、オヨちゃん曰く「小林信彦中原弓彦)でもっとも古書価が高い」というもので、函・帯つきを◎万円で売ったコトがあるという。「日本の古本屋」で検索しても、某店が献呈・署名入りの同書をナンと7万8000円で出している。だから、半信半疑で注文したが、在庫があったのだった。届いた本を見ると、帯はなかったが函付きであった。函の裏には山本健吉北杜夫の推薦文が印刷されている。古本の値段は需要と供給で決まるので、4500円で高いと思う人もいれば、7万円出してもほしいという人もいるだろう。中原弓彦名義の長篇は『虚栄の市』(これは読んでいる)とこの作品だけで、一度も文庫化されていない(次作『冬の神話』は中原時代に執筆されたが、刊行時には小林信彦名義だったはず)コトを思えば、ぼくにとっては少なくとも4500円分の価値はある。ほかに、名古屋の古本屋から、『海野弘の街あるき館さがし』(毎日ムック)1200円が到着。


そのあと、『COMIC Mate』の書評を書く。今回は嵐山光三郎昭和出版残侠伝』(筑摩書房)だが、参考に読んだ奇著、大原緑峯平凡社における失敗の研究』『平凡社における人間の研究』(いずれも、ぱる出版)にずいぶん寄り道してしまった。一段落したので、旬公と不忍通りのつけ麺屋に行く。外に券売機があり、食券を買って並ぶという、あまり好きではないタイプの店だが、つけ麺はウマかった。郵便局で振込みして、ウチに帰る。


4時半、神保町へ。〈書肆アクセス〉で右文書院の青柳さんと待ち合わせ、〈ぶらじる〉へ(最近このパターンが多いな)。いくつか相談する。〈高岡書店〉で、『映画秘宝』、久米田康治さよなら絶望先生』第5巻(講談社)、『リュウ』を買う。『リュウ』は1980年代のマンガ雑誌の復刊。吾妻ひでおの「不条理日記」が連載で。都営新宿線新宿三丁目へ。久しぶりに〈ジュンク堂書店〉に行くが、ナニも買わず。


紀伊國屋書店〉で『ぐるり』の五十嵐さんと会う。新宿三丁目のビルの地下にある〈鼎〉で、一時間ほど飲み、〈ピットイン〉へ。すでに開場していたが、客席はガラガラでステージ真正面に座れた。今日は渋谷毅オーケストラ。いつものメンバーに青木タイセイ(tb)が加わり、フロントは5管体制に。広いライブハウスなだけに、前回の〈アケタの店〉でのド迫力は、最初のうちは感じなかった。でも1セット目の最後の曲から2セット目にかけて盛り上がり、最後は満足。古澤良治郎のドラムが、このバンドの要だよなあ。飛び入り参加のイズミなんとかという若いギタリスト(メンバーの誰かの弟子か?)も、臆せずに頑張っていた。ラストに、渋谷さんのピアノソロに峰厚介のテナーが参加し、おしまい。五十嵐さんと別れて、ウチに着いたのは12時前。