西荻に行かずに西池袋へ行った

8時半起き。今朝も涼しい。締め切りにもかかわらず、『COMIC Mate』の書評本が決まらない。いちおう、平岡正明『日本ジャズ者(もん)伝説』(平凡社)、小松左京『SF魂』(新潮社)、宮沢章夫『「80年代地下文化論」講義』(白夜書房)あたりを並行して読んでいるが、どれもうまく書けそうにない。


『「80年代地下文化論」講義』は、大塚英志『「おたく」の精神史』(講談社現代新書)とは違う場所にいた時代の当事者として、1980年代とはなんだったかを検証しなおすというもの。図版や脚注がマニアックだと思ったら、榎本統太氏が編集担当だった。榎本さんは1993頃、宮武外骨の復刻をやっていたぼくに連絡してきて、翔泳社の雑誌『GURU』で外骨特集をやりたいと云ってきて以来、ときどき遭遇している。いろんな版元を渡り歩いているが、会社のイメージに関係なくやりたい企画をやっている編集者という気がする。


けっきょく、ちょっと前に買った坂入尚文『間道 見世物とテキヤの領域』(新宿書房)がオモシロいので、この本を取り上げるコトに決定。後半には、谷中墓地近くにあった〈アートフォーラム谷中〉や、千駄木すずらん通りの居酒屋〈あかしや〉も登場して、興味深い。


雨が収まったので、旬公と根津のうどん屋〈根の津〉まで行くが定休日。この店、まだ一度も入れたことがない。ちょっと高いけど、〈三里〉で鴨せいろを食べる。お昼はかやくご飯が付くようになっていた。一人で〈結構人ミルクホール〉へ。8月にまた改装するらしい。こうなるともう趣味ですな。ケーキの持ち帰りも開始予定だとか。


ハマびんこと濱田研吾さんより『三國一朗の放送室』(ハマびん本舗)が届く。例によって自費出版・限定100部である。230ページもあり、本文のほか、三國の著作、年譜、三國が編集したアサヒビールのPR誌『ほろにが通信』総目次、人名索引と、資料も充実。冒頭を拾い読むと、塩山芳明氏の三國一朗観(わりとスタンダードな見方)に反論しているのがオモシロイ。前の二冊と同じく、この本も内容を変えて商業出版される可能性は高いのだが、ぼくとしては、文章や編集、装幀を含め、自費出版した本のほうに軍配を上げる。


往来堂書店〉に寄ったら、小学館文庫の『日本沈没』が平積みになっていた。数日前はなかったと思うが。奥付を見ると、8月1日第5刷になっている。


ウチに帰り、雑用をしながら、『間道』を最後まで読む。5時半頃、旬公が西荻アケタの店〉でのオフノート・レーベルのライブに珍しく付き合ってくれるというので、一緒に出かけたのだが、山手線に乗っているうちに、ぼくが「わざわざ中央線まで行くのはめんどくさいなあ」という気になり、池袋で下車。久しぶりに聴くオフノートだったのに、すいません。映画を観ることにし、〈新文芸坐〉の前まで行くと、豊田四郎特集で、ちょうど谷崎潤一郎原作《台所太平記》(1963)が始まるところなので、入る。事前に調べてから動くコトが多いぼくとしては、珍しく行き当たりバッタリな行動だが、結果は吉と出る。《台所太平記》はとてもオモシロかった。谷崎家に奉公した女中さんの群像を描くもので、男装の麗人っぽくてレズの小夜(淡路恵子)には現代的なブキミさがあった。旬公も満足してたのでホッとする。


西口に出て、〈赤い鼻〉という琉球料理の店へ。ココは以前、オフノートの神谷さんにつ入れてきてもらった店。西荻にライブを聴きに行かなかったので、その代わりというワケでもないが。5人ほどのグループが先客で気炎を上げていた。オリオンビール泡盛を飲み、ラフティー、ゴーヤの天ぷら、さといもの天ぷらなどを美味しく食べ、沖縄そばで締める。適当に動いたら、楽しかった。こんな日もある。


帰って、昨日ミカコさんから借りた『日本ふるさと沈没』(徳間書店)を読む。10数人のマンガ家が、自分の出身県が沈没するマンガを描くという、原作のパロディですらない便乗企画。こんなアホらしい企画を思いついた編集者はエライ。吾妻ひでお(北海道)といしいひさいち(岡山)がヨカッタ。島根県を沈めてくれたヒトはいなかった。生きてりゃ、当然、園山俊二だが……。この本に挟まっていたチラシで、コミック雑誌リュウ』が9月に新創刊することを知る(http://comicryu.com/top.html)。1980年代に大塚英志が編集した雑誌で、ここから出た作家も多い。たぶん、創刊号は買ってしまうだろう。