不忍池の茶屋で夕涼み

午前中、例によって遅れに遅れた原稿を書く。なんとか書き上げて一息。このところ、自宅で仕事しているので、昼飯を食べ終わると、1時半からテレビ東京でやってる映画を観てしまう。吹き替えだし、大幅カットだし、15分につき5分近くコマーシャルは入るのだが、ときどき意外な拾い物がある。それに最近は、ニート&ヒマなオタクにターゲットを合わせているのか、かなりマニアックな映画もやってくれる。


一昨日は、スティーブン・セガールが環境破壊に反対するために、地球に優しくない連中を皆殺しにし、操業中の油田を爆破してしまう素晴らしき俺様映画《沈黙の要塞》(1994・米)、昨日はステルス戦闘機がどう見ても紙飛行機みたいだったハイジャックもの《インターセプター》(1992・米)を観た。それにしても、北朝鮮がミサイルを発射したその日に、軍事機密が襲われる映画を堂々と放映するトコロに、テレ東の男気を感じる。そして、今日は《地獄の女囚コマンド》(1990・米)。女囚をファッションモデルに仕立てて、某国に潜入させるというスットコドッコイな映画だった。それにしても、毎日観るなよ。


取材だという旬公に付き合って、バスで不忍池へ。蓮池のほとりに、期間限定で「蓮見茶屋」(http://www.ueno.or.jp/summer-fest_05/hasumi.htm)というのが出ているのだ。海の家のようなものを想像していたが、プレハブとはいえちゃんと基礎から建てている。着物の女性がお出迎え、1文=100円の木札を買って入るしくみ。弁当はちょっと……だったけど、まだ咲いてない蓮を眺めながら、微風を感じつつビールを飲むのはいい気分だった。ほぼ毎日演芸をやっているようで、浪曲玉川福太郎が出る日もあるので、もう一度来たい。


上野の〈ヨドバシカメラ〉を覗いたあと、「上野古書のまち」へ。前に書いたとおり、上下の階の映画館は撤退したのだが、ココは健在。しかも、1階にまでワゴンが進出している。けっこう異様な光景だった。一回りして、『太陽』1976年1月号(特集「日本温泉旅行」)、1976年8月号(特集「日本の庭」)各200円、海野弘『流行の神話 ファッション・映画・デザイン』(フィルムアート社)420円、佐々木譲『白い殺戮者』(徳間文庫)、『平林たい子毒婦小説集』(講談社文芸文庫)700円、を買う。


『太陽』1976年1月号は、特集が古山高麗雄田中小実昌らの温泉ルポ、つげ義春の絵、そして植草甚一池波正太郎の新連載と盛りだくさん。このとき副編集長だった中村新珠氏=海野弘さんは、1976年8月号に編集長になった。このとき海野さん、37歳。編集後記を引用する。

☆今号から編集長を交代いたしました。のんびりやの私もいささかあわてています。編集部も大幅に代わって、若くなりました。先輩の築いてきた本誌の伝統を生かしながら、若い芽を育てていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。(中村)


平林たい子毒婦小説集』は今月出たばかり。年譜と著書目録を中尾務さんが担当。旬公がまだ見ているので、パンフレットの入っている箱をかきまわしたら、『小説倶楽部』(洋洋社)昭和22年8月号が。何気なく開いてびっくり。中扉(目次扉)のレイアウトが花森安治だった。さらに三木申「探偵奇談 バアサルトル物語」のイラストが山名文夫だった。コレで300円は安い。〈ぶっくす丈〉さん、ありがとう。


旬公と別れ、高田馬場へ。〈ブックオフ〉と〈BIG BOX〉の古本市を覗き、〈芳林堂書店〉で吾妻ひでお『うつうつ日記』(角川書店)を。駅前をぶらぶらして時間つぶし、〈マイルストーン〉に入る。あとからセドローくん来る。『出版業界最底辺日記』を渡し、1時間ほど話す。夕方から酒が入った状態で歩き回っていたので、かなり酔っ払い、帰ってすぐに寝てしまった。いや違った。寝ようと思ったら、読みかけのジム・トンプソン『失われた男』(扶桑社ミステリー)が気になって最後まで読んだんだった。オモシロイ。解説の中森明夫はなにも深沢七郎まで持ち出すことはないだろうに。