アンチヘブリンガンで飲みましょう

ウチにいるときは上下トレーナーなのだけど、「暑い暑い」と文句を云っていたら、昨日、旬公が〈ユニクロ〉で甚兵衛を買ってきてくれた。通気性がよくて涼しい。近所だったら、このまま出かけても悪くない。そのうち、これで〈古書ほうろう〉まで出かけようかな。


出勤日。『センセイの書斎』、ぜんぶ出庫してしまい、書店からの注文は「保留」でしか受けられなくなった。現在、増刷を検討中です。夕方、神保町へ。〈書肆アクセス〉で、『本の雑誌』7月号(向井透史「卒業式の日」が掲載)、『ビジュアル馬込文士村』(ハーツ&マインズ)、『タワー 内藤多仲と三塔物語』(INAX出版)を買う。『タワー』は東京タワー、名古屋テレビ塔、大阪通天閣を設計した内藤多仲の仕事をまとめたもの。このヒトについては、昨年の秋、谷根千工房の「D坂シネマ」でドキュメンタリーを観て知った(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20051006)。現在、名古屋のINAXギャラリーで同題の展覧会が開催中。そのあと、9月1日(金)〜11月18日(土)に銀座のINAXギャラリーに回ってくるようだ。コレは行かねば。〈岩波ブックセンター〉では、書評の候補として、高田文夫笑芸日記 一九九六〜二〇〇五』、大村彦次郎『文士のいる風景』(以上、ちくま文庫)などを買う。ほかに中島和夫『わが懐かしき文学者たち』(文芸社)も。


打ち合わせが終わってから、思いついて、水道橋の方に歩き、〈食堂 アンチヘブリンガン〉という店に行ってみる。以前、アクセスの畠中さんに教えてもらって行ったら休みだった。また神楽坂〈ムギマル・カフェ〉の早苗さんにも「水道橋にいいブックカフェがある」と教えてもらい、店名をうろ覚えで探したが見つからなかったことがある。先日の稲垣書店トークに、ここの店主夫妻がいらしていたコトをあとから谷根千工房のヤマサキさんから聞き、もう一度行ってみる気になった。


猿楽通りの水道橋寄り、オフィスビルしかない静かな通りのビルの二階にある。道に面したガラス窓には、大判の画集が立てかけられており、内部にも少し本がある。店主のOさん夫妻は「家から持ってきたので、大した本はないですよ」とおっしゃるが、映画好きらしく、サミュエル・フラーの小説『バトルロイヤル』(筑摩書房)などイイ感じの本がある。店内は空間がゆったりとってあって、かなり広く見える。窓から静かな通りが見渡せるのが、なかなか良い。ベルギービールのシメイを飲みながら、奥さんとしばらく話す。「アンチヘブリンガンって、漱石の小説に出てましたっけ?」と訊くと、「いえ、小津安二郎の《秋日和》です。薬の名前ですよ」と教えてくれる。ああ、そうだったか。どこかで聞いた覚えがあると思った。実家が薬屋さんだそうで、戦前からある薬の名前を付けたそうだ。開店して半年経つが、なかなか認知されないので、なにかやりたいとおっしゃるので、壁面がちょうどいい広さなので展覧会をやったら、とか、少人数のトークイベントをやったら、などと思い付きを云う。ぼくも神保町でナニかあるときは、ココを利用したいと思う。ランチもやっているし、その後も夜まで休憩ナシで営業している(11時閉店)ので、ぜひ行ってみてください。以下にレポートが載ってます(http://plaza.rakuten.co.jp/okkobouya/diary/200606080000/)。


夜、ビデオ屋で借りた原田眞人監督《金融腐蝕列島 呪縛》(1999)を再見。昨日の《突入せよ!「あさま山荘」事件》がヨカッタからだが、本作は、シナリオ、撮影、キャスト、演出、すべてが完璧な映画だ。《突入せよ!》と同じく、集団の中のパワーバランスを描いているが、銀行の不良債権処理のハナシがまるでホラー映画のように恐ろしく、観る者の心をじわじわとえぐってくる。この人のほかの作品も観たいけど、近くのレンタルビデオ屋がほぼDVDオンリーになってしまったので、なかなかビデオで観られない。いよいよDVDプレーヤーを買い換える時期か?


三鷹文鳥舎〉(http://www12.plala.or.jp/bunchousha/)より「文鳥舎 寺子屋」のパンフレットが届く。「文鳥舎寺小屋は、個性の粒立った人間的魅力溢れる講師を囲んでの私塾という、アクチュアリティのある探求と口伝の場。“智慧”は、人が人として出会い、対話するなかから生まれます。いわゆるお稽古的なカルチャーや一方的な知識の伝授をするのではなく互いに、特化した興味や深度のある愉しみを追求する場を目指します」というコトで、7月から15講座が予定されている。


たとえば、「岡崎武志・本の教室〜放課後の雑談1〜」、「海野弘のモダン・シティ塾〜女性都市東京〜」、「堀井憲一郎の“調査” というペテンと暴力〜ずんずん調査の裏側〜」、「枝川公一の街遊びがてら〜街と酒場と旅の楽しみ方〜」、もしくは手品、料理、落語、浮世絵など魅力的な講師・テーマが並ぶ。 隔週で4回というのもちょうどいい。しかし、ちょっと不安なのは、値段設定。各講座の受講料が18,900円で、ほかに入会金5,250円が必要なのだ。既存のカルチャースクールにないユニークな講座だとは思うが、これだけ身銭を切れる人がどれぐらいいるだろうか。だけど、フタを開けてみると、意外と埋まるような気もするし。ま、7月には西江雅之北尾トロほかの開講記念トークイベントもあるので、そこで入会してくれる人がたくさん出てくれるといい。