汗だく関西日記(後篇)

酔っ払っていたせいか、蒸し暑いせいか、5時頃に目が覚めてしまう。ちょっと窓を開けて、『ゲド戦記』の続きを読み、しばらくしてまた眠る。9時に起きて、前田家を出発。今里から難波で乗り換え、梅田へ。このコース、だんだん慣れてきた。JRに乗って、神戸方面へ。


出たときには、六甲道で降りて〈口笛文庫〉を覗くべえと思っていたのだが、そんなにたっぷり時間があるようでもないので、六甲道はパスして三宮へ。大阪に来ると、朝飯にうどんを食べたくてしかたがないのだが、難波も梅田も大阪駅も通りがかる場所に立ち食いうどんがあったタメシがない。あるのは、いまどきのコーヒーショップばかり。三宮なら、と思ったら、駅の近くにやっぱりあった。いつもの「きざみうどん」を食べる。270円で美味なり。


〈サンパル〉に入り、上にある〈超書店MANYO〉へ。いつもながら、スゴイ物量だ。単行本の100円均一コーナーを丹念に見ると、電気グルーヴの本2冊、筒井康隆ミラーマンの時間』(いんなあとりっぷ社)、坂崎重盛『豚もおだてりゃ樹に登る河童もけなせば溺れ死ぬ』(PHP研究所)が見つかる。コミックや文庫は見るのをあきらめ、下の階へ。複数の古本屋が入っていたコーナーは、わずか1軒、〈ロードス書房〉だけになっていた。別の業種が入るでもなく、空きスペースになっているのが、かなしい。


そこから、高架沿いに元町まで歩くが、今日も日が照ってたいそうツライ。12時に改札口で海野弘さん、ポプラ社のYさんと待ち合わせ。二人を元町駅西口の〈丸玉食堂〉にお連れする。ココは店内にメニューがないので、外のガラスケースでナニにするかを検討しなければならない。オススメはと聞かれたので、「ローメン」と答える。とろみをつけた卵スープに麺がひたされている、フシギな食感の汁そばである。それと腸詰を一皿。そのあと、〈ちんき堂〉へ。いつも通りのコースである。幻堂出版の新刊、福満しげゆき『10年たって彼らはまた何故ここにいるのか…』と、1970年代の『ムービー・マガジン』を3冊買う。


サイン会の会場である〈海文堂書店〉に行き、店長の福岡さんに挨拶。上の控え室に荷物を置き、田中さんに〈カフェAZUMA〉に案内してもらう(一度ひとりで行こうとしたら迷ったので)。たまたま座った席の上に、海野さんの映画論が置いてあった。アヅマさんが置いている映画のビデオは、どれも観たいものばかりだ。海文堂に戻り、2時からサイン会スタート。ぼくたちが合同サイン会をやったときは、店の前のアーケード(つまり路上)だったが、さすがに奥のカウンターで行なわれた。サインを求める客が殺到、というわけではなく、ポツリポツリという感じだったが、誰も来なくて手持ち無沙汰ということもあまりなかったので、まあヨカッタ。海野さんは、なんとコレが初めてのサイン会だそうだ。ぼくのブログを見て、アトリエ箱庭の展示にも行ったというMさんに声を掛けられる。


3時から、神戸新聞のMさんが海野さんをインタビューするのを、ヨコで聞く。それから、みんなで打ち上げに。海文堂の打ち上げはいつもは〈松屋〉という居酒屋だが、今日はその近くの〈米米 BE BEE〉という台湾料理屋へ。つい最近できた店ということで、インテリアなども凝っている。次々に出てくる料理もウマかった。ポプラ社の関西支社の方や、福岡さん、神戸新聞の方々と、海野さんを囲んで楽しく食べて飲む。海野さんは終始ゴキゲンで、ずいぶんジョークも飛ばしていた。神戸で財布を落としたら、とりあえず神戸新聞にカネを借りに行くそうです(すかさずMさんが、「いいですよ、代わりに原稿を書いていただければ」と)。海文堂の上のギャラリースペースを自由に使わせてくれると聞いて、海野さん自ら「船旅や客船をテーマにトークショーをやりましょう」と提案する。そのときの海野さんは、編集者に戻ったようだった。


6時で終わる予定が、盛り上がりすぎて7時半に(福岡さん主宰だとつねにこうなる)。お開きにして、新神戸から新幹線に乗る海野さんとYさんをタクシーに乗せ、ぼくは小野原さん(海野ファンなので、わざわざ着物で参加)に案内してもらって、鯉川筋のほうにある古本屋〈トンカ書店〉へ。3月に川辺さんから聞いていたのだが、なかなか来られなかった。ビルの二階に上がったところにある。〈ちんき堂〉でバイトしていたと聞いたので、同じ規模の店を考えていたが、けっこう広い。本だけでなくグッズも置いてある。品揃えは、広い意味でのサブカルチャー。棚のレイアウトが女性店主っぽいかな。店の入口に、チェコマッチラベルを拡大したプリントアウトが貼ってあったので、そういうと、店主が「集めてるんです」と云う。このヒトは「頓花さん」という苗字で、店名はこの名前から取っているのだ。ゆっくり見たかったが、時間がないので、『写真時代』400円と、ミニコミ『SANPO 下町通信』36号、250円を買う。後者は西宮の永田収という写真家がつくっているコピー誌で、神戸の街歩き雑誌だ。立ち飲み屋の記事もある。


小野原さんと別れて、地下鉄・三宮駅へ歩く。一つ目が新神戸。JRの切符売り場に行くと、最終まであと2本しかない。しかも、先に出るほうは満席だ。自由席で立っていくのもキツイので、最終で帰ることに。車中で『ゲド戦記』第1部を読了。先は長いぞ。ウチに帰ったら12時半で、風呂に入ったり洗濯したりすると2時過ぎてしまった。ともかく、暑くてたまらない1泊2日であった。