古書展リハビリ中

この数ヶ月、数えるほどしか古書展に行っていない。ぼくはもともと、神保町にしろ高円寺、五反田にしろ皆勤組ではないのだが、こんなに行ってないのは数年ぶりではないか。収入が減ったのでなるべく本を買わないようにしているコトもあるが、新刊に関しては(以前ほどではないにしろ)それなりに買っている。どうも、古書展の会場に行ってたくさんの古本が並んでいる(アタリマエだ)のを見ると、ちょっと圧迫感を覚えてしまうようなのだ。前だったらワクワクしたのに。原因はよく判らない。「一箱古本市」など、主催者の立場から古本イベントに関わることが多くなってきたからだろうか。


とはいえ、「一箱古本市」の当日、自分自身が本を見るヒマもなく、わずかに3冊しか買えなかったことから、身中に巣食う古書展の虫がうごめきだした気配もあり、5月6日には神保町の「ぐろりや会」に行き、今日は高田馬場・BIGBOXに行ったのだが、前者ではじっくり眺めたにもかかわらずついに一冊も買えず、後者では2冊買っただけ、だった。まあ、これまで古書展ではさんざん買ってきたし、そのうちまた買いたくなってくるに決まってるから心配はしてないのだが。というより、むしろ、自分がそういう心境になったというコトを珍しいことのように感じている。


古書展ではないが、上野駅近くの「上野古書のまち」では、200円でとてもオモシロい本が買えた。早稲田がらみなので、次の「早稲田古本村通信」(先月は休載しました)で書くつもり。この「上野古書のまち」は〈上野セントラル〉という映画館が4館入ったビルの半地下にあるのだが、全館とも今週末で閉館するという張り紙を見て驚く。たしかに、客の入りは悪いし寂れた感じではあるが、昔ながらのロードショー館という雰囲気でよかったのだけど。ネットで見ると、1953年から営業していたらしい。で、「上野古書のまち」であるが「映画館閉館後も営業します」と書いてあった。しかし、次にナニが入るかで状況は変わるだろうし、そもそもこの並びの建物自体、次々に取り壊してはイマ風のつまらないビルに変わっていることを思えば、決して楽観はできない。


あと、古書店では、一箱古本市の数日後に、〈古書ほうろう〉に寄ったら、新入荷の棚にすげえ本が2冊。武野藤介『文壇餘白』(健文社、昭和10)と、川崎長太郎『伊豆の街道』(講談社、昭和29)が各1000円だったのだ。前者は、以前にココ(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/20051230)でも書いたように、図書館で借りて読んで非常にオモシロかった、戦前の文壇ゴシップ集。両者とも状態はあまり良くない(『文壇餘白』には線引きあり)とはいえ、付けている店ならこの10倍はする本だ。レジにいた宮地さんに「安いよ、これ」と云ったのだが、「ウチ向きじゃないしねえ」と笑っている。ほうろうのこういうトコロが好きなんだ。


昨日は〈ロバロバカフェ〉に、「“本”というこだわり、“紙”でできることvol.3」を見に行った。30組ぐらいが、ミニコミや手づくり本を出品している。A2g+(Books)さんらが共同でつくった『MaskingTape GuideBook』というのがオモシロイ。マスキングテープを使ってビジュアル的に遊ぶためのガイドブックなのだが、A2g+(Books)の『Booklet』シリーズと同じ体裁で、楽しく読める。マスキングテープの現物一巻きもセットになっている。あと、『謄写技法』の別冊で春本小説をいくつか謄写版で復刻し箱に入れたものが販売されていた。4000円だったので、手は出なかったが。こういうトコロに行くと、自分の役に立つかどうかは関係なく、ブツそのもののおもしろさだけでアレもコレもと買いたくなってしまう。自分はつくづくミニコミ好きなのだと思う。


せっかく経堂に行ったので、古本屋も回った。〈遠藤書店〉支店では、百円均一も含めて文庫を7、8冊買う。レジの前の棚に、お茶のポットが置いてあり、店員の女性が飲んでいたのだが、お客さんも飲んでいいみたいだった。あとで、別のコトを調べていたら、この店にブログがあることを発見(http://koshoendou.exblog.jp/)。『酒とつまみ』8号の「古本屋発、居酒屋行き」でこの店のことに触れたことを紹介してくれていた。「経堂−−古雑誌が似合う街」というタイトルをホメてくれたのが、嬉しいね。


あと、〈蟲文庫〉さんのブログで、「不忍ブックストリートMAP」について書いてくれている(http://mushi-bunko-diary.seesaa.net/article/17259089.html)。「しのばずくん」について、「脚と股の周辺が特に好きです」とコメントしてあったのには、笑った。作者の旬公と同じセンスをお持ちと見た。……久しぶりに文章を書いたら、とりとめなくなってしまったので、以上。


あとは告知。『週刊現代』5月20日号(いま出てる号)の書評欄に、海野弘さんのインタビューが掲載されています。今回も「顔出し」だ。植草甚一に買った本をほめられたというエピソードが秀逸。若い人たちの古本への関心を「素晴らしい」とし、「自ら動くことで新たな発見や更に新たな出会いがあるから」だとおっしゃってます。


入谷コピー文庫」からは、早くも新刊が届く。予告どおり、遠藤哲夫現代日本料理 「野菜炒め」考』。ちゃんと読んでから紹介します。表紙にはエンテツさんのつもりらしいイラストが載ってるが、似てないぞー。