原稿は遅れ、母親は心配する

『T』誌の原稿、朝10時ごろ、どうやら糸口がつかめる。その細い糸が切れないように、大事にして、少しずつ書き始める。1時間ほど経って、どうやらこの方向性で間違ってなさそうだぞ、と思えてから、書くスピードが上がる。3時には完成させるつもりだったが、予定より字数がオーバーしそうになり、その調整に手間取るも、なんとか5時に送る。いつもながら薄氷を踏む思い。あと3日、せめてあと1日早く、書き始めるコトができたなら、こんな思いはせずに済むものを。


途中で、セドローくんの日記を読んだら、こんな一文が。

ウェブで産経新聞の書評を見たら、八木福次郎さんの『書痴斎藤昌三書物展望社』が紹介されており、読んでみると本を読んだ知識ではないような感じで、妙に斎藤昌三に自分からすりよっていくマニアックな書評だなぁと思ってスクロールしていったら、「南陀楼綾繁」とあった。納得。


そうか、昨日の産経に載ったのか。セドローくんが指摘するように、この本の書評は斎藤昌三に自分を近づける書き方になってしまった。それはイイとしても、肝心の福次郎さんの本についてあまり評価せずに終わってしまったので、忸怩たる出来になってしまった(図版や著作目録が充実していることに触れるべきだった)。短い字数の書評だからこそ、落としてはいけない要素があるのだと、反省している。


実家から手紙が来たので、ナニかと思ったら、郵便貯金の利用記録が同封されていた。ぼくは上京するときに、仕送りの振込み用につくった郵便貯金の口座をそのまま使っていたのだが、ずっと記帳をしなかったら実家に連絡が行ったのだった。母親に電話すると、「なんかね、アレは。ヘンな名前ばっかり」と問い詰められる。明細を見ると、「荻文庫」「書肆砂の書」「名鉄パレ百貨店」「稲野書店」「有限会社ケルン」、ほかに個人名が並んでいる。いや、どれも古本屋さんですよ、おかあさん。ネットで注文する場合、前払いが多いので、「ぱるる」の端末から振り込んでいるのだ。それにしても、1万円以上の支払いがなくてホッとした。そんなの見つかった日にはもう……。


7時すぎに自転車で谷中コミュニケーションセンターの図書室へ。数冊借りて帰ってくる。晩飯は、豚肉としめじのショウガ炒め。「書評のメルマガ」を編集して発行。「大阪豆ごほん」で、〈貸本喫茶ちょうちょぼっこ〉の福島杏子さんが、大阪を離れて東京に戻ることが報告されている。仲良し4人組が3人になるワケだが、福島さんは今後もちょうちょぼっことしての活動を続けるようで、まずは一安心。手始めに、今度の一箱古本市に参加するコトになっている。なお、ちょうちょぼっこの今後だが、一部のマニア(って誰だ?)の間で、「福島さんが抜けたあとに、前田“大阪のチン”和彦くんを入れてはどうか」という案が浮上していることを報告しておく。ま、冗談ですが。


岡崎武志さんからメールあり。ブログでも、先週送った店主資料について、「よくここまで、緻密にあれこれやってのけたなあ、とスタッフの優秀さに感服する。おたくら、こっちでも商売できまっせ、という感じだ」と書いてくださったが、メールでもねぎらっていただく。そのあとのメールを勝手に引用させていただく。

ブログで、原稿を書き倦ねて苦しんでいる姿を読むとホッとします。書きはじめるのに、時間がかかるんだよなあ。重い鉄の固まりが空を飛ぶように。すらすら原稿を涼しげに書いたりしないで、ね。置いていかないで、ね。


安心してください、「涼しげに書く」なんてことは、ゼッタイにあり得ませんから(笑)。それにしても、山本善行さんといい、ぼくの「原稿が書けないネタ」の愛読者は多い。ここだけは、まるで文豪みたいだ