ぱぼっくすのギタリストは丸かった

朝9時起き。午前中、原稿を一本書く。旬公のリクエストで、昼は道灌山下の〈tono〉でパスタ。ウチに戻って、いろいろ連絡などをやっているうちに出かける時間に。千代田線直通で、下北沢へ。平日の昼間ならともかく、土日の夜には足を運びたくない街。南口を降りたとたん、興奮した若者たちがあっちにもこっちにも歩いていて、そのまま帰りたくなる。古本屋とか映画館とか、いい店は多いんだけど、一人でぶらつくことがしにくい街はどうもね。


6時半、〈mona record〉へ。初めて来るのだが、古本屋〈幻游社〉が入っているビルの2階だとは知らなかった。ふだんはカフェで、レコードレーベルもやっている。入って右奥がステージで、そこから縦長に座席が配置されている。左奥はCD売り場。座席を確保して、焼酎のグラスを手にする。いつも困るのだが、テーブルがなく、前の席との間が狭い場合、どこに飲み物を置けばいいのか。下に置こうとすると、手にしていた文庫本が落ち、それを拾うためにかがんだら、腹の筋肉がつってしまった。つくづく狭い場所には不向きな男である。レジ横に加藤千晶のCDが置いてある。買い逃していたファーストアルバム[ドロップ横丁]が一枚だけあったので、先に買っておく。


7時過ぎ、ライブが始まる。最初に出たのは加藤千晶。加藤さんのキーボードと、ギター、ベース、ドラムの四人編成。しょっぱなに好きな曲をやってくれたので、引き込まれる。1時間足らずだったけど、よかったです。加藤千晶については、次号『ぐるり』で書くので、ココでは割愛。そのあと、東川亜希子という若い女性が出てくる。キーボード、ベース、ドラムのトリオ。歌も演奏もなかなかだったけど、歌詞が中学生のノートに書かれた詩のようで、どうも受け付けず。


トリは、大阪から来たぱぱぼっくす。ぼくはファーストの[ぱぱぼっくす]を中古で買って聴いている。ライブはもちろん初めて。出てくるなり衝撃が。女性と男性が並んでいるのだが、ボーカルの女性は小さくてほんわりしたカンジ(〈ちょうちょぼっこ〉の次田さんっぽい)でアコースティックギターを抱えるようにして持っている。そして、ギターの男性は……丸い。サンボマスターのヒトのようにちょっとふっくらしているというレベルではなく、明確に太っている。しかも、服装でごまかす気はないらしく、よれよれのTシャツに太いズボンという格好。親近感おぼえるなあ。女性(歌声はのびやかだったが、喋りは桂小枝調だった)が関西弁で、「センセ(男性はこう呼ばれている)の発汗活動が盛んになる時期になりましたなあ」とか「センセの厚みでドラムが見えないんや」などと、男性の丸さをいじるのだが、それがイヤミがなくていい。肝心の演奏も、とてもよく、またライブを見たいという気になった。10時前になったので急いで駅まで歩き、千代田線経由で帰ってくる。